numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【サッカー】できるだけ分かりやすく、オフサイドのルールを説明してみよう

東京オリンピックの開会式はこれからですが、サッカーが一足先に始まりました。U24日本代表、まずは1勝です。

さて、前半34分、林選手のシュートがゴールに入りましたが得点が取り消されました。オフサイドの反則と判定されたからなのですが、

「なんでゴール取り消し?!ふざけんな!オフサイド?分からん!」というようなコメントをよく見かけます。

「難しいルールはいらない。オフサイドなんて廃止すればいいのに」という意見もよく目にします。

ルールが設けられた理由が分からなければ、そう思うのは当然でしょう。

確かに、「オフサイド」はサッカーのルールの中でも難解なものとよく言われます。それもあってか、ネット上にはいろいろな方が書かれたオフサイドのルール解説があります。

そんなわけで、けっこうオフサイドルールの解説は今さら感があるんですが、少しでもルールの理解の役に立てればと思い、私も書いてみようと思いました。ルールが設けられた理由が分からないと納得できないのではないかと思うので、ちょっと長くなりますが、そもそもオフサイドは何のためのルールなのかというところから始めてみます。

オフサイドは「待ち伏せ禁止」のためのルール

体育の授業でバスケットボールをした経験がある方ならイメージできるかと思いますが、あまり上手ではないチーム同士が混沌とした中で試合をしていると、自然と背の高い選手、シュートの上手い選手にボールが集まりますよね。そういう選手をゴール前においておくと、ロングパス一本で得点できちゃう。こんな経験、ありませんか?

もし、サッカーにオフサイドルールがなければ、これと同じことが起こります。ストライカーをゴール前に置いておき、ゴールキーパーがボールをとったらロングパス一本で一気に相手ゴール前に蹴りこむだけという「待ち伏せ」が横行し、ただただカウンターの応酬が繰り返されるようになります。

もしオフサイドルールがなかったら

どうやって相手陣内にボールを運ぶかを考えることがなくなりますから、間違いなくつまらなくなってしまいます。多分、今日のような世界的に人気の高いスポーツにはならないでしょう。

どこにいると「待ち伏せ」とみなされるか

待ち伏せはずるいのでしてはいけない。

では、何をもって待ち伏せとするのか。そこで、「ここにいると待ち伏せとみなす」というルールが決められています。

それが、「オフサイドポジション」です。

ポイントは「3つの前」

ポイント1 ハーフウェーラインより前にいる

守備側チームのフィールドにいる
上の図では、相手選手がみんな攻め上がっていますが、センターサークル内にいる選手はハーフウェーラインより前にいるので、オフサイドポジションではありません。守備側チームのフィールドにいる選手はオフサイドポジションにいます。

ポイント2 ボールより前にいる

ボールより後ろにいる場合は、どこにいてもオフサイドポジションになりません。

ボールより前にいる

上の図で、ボールを持っている選手の左にいる選手は、ボールの後ろにいるのでオフサイドポジションではありません。しかし、右前方にいる選手は、ボールより前にいることになるので、オフサイドポジションになります。

ポイント3 後方から2人目の相手競技者より前にいる

通例、相手選手の一番後ろはゴールキーパーなので、「後方から2人目=相手の一番後ろのディフェンダー」と言い換えられることが多いです。一般的にはこの理解で問題ないです。

しかし、厳密には、これは正確ではありません。下の図のように、何らかの理由でゴールキーパーが前に出てきて、ディフェンダーと前後関係が入れ替わることもあります。

2人目のDFより前にいる

そのため、ルールでは、後方から2人目の相手選手がオフサイドラインとなるとしています。

副審は、このような場合でもオフサイドを確実に判定するために、後方から2人目の競技者がどこにいるかを確認しています。

オフサイドポジションにいることで利益を得たら反則

オフサイドポジションかどうかは、味方の選手がボールを蹴ったときに判断され、ここまで述べた「3つの前」すべてを満たしている選手が「オフサイドポジションにいる」、つまり、待ち伏せ状態だということになります。

ただし、オフサイドポジションにいること自体は、反則ではありません。

オフサイドポジションにいる競技者が、そこにいることで利益を得た場合にオフサイドの反則が成立し、副審が旗を上げます。

「利益を得た」とは、例えば、 

  • 味方競技者からのパスを受けてプレー(ドリブル、パス、シュートなど)した
  • 味方競技者が打ったシュートが跳ね返って(ゴールキーパーがはじいた、ゴールポストに当たったなど)、そのボールをプレーした
  • 味方競技者がシュートしたときに、ゴールキーパーなど相手競技者の視界をさえぎってプレーを妨害した

といった場合が当たります。(実は、この「利益を得た」がすごく難しい!また別の機会に説明してみようかな…)

まとめ

オフサイドは「待ち伏せ禁止」のためのルールで、サッカーを面白くするために決められたもの。

ハーフウェーラインより前、ボールより前、そして後方から2人目の相手競技者より前の「3つの前」にいたら、オフサイドポジション。 ただし、オフサイドポジションにいること自体は反則ではない。

オフサイドポジションにいる状態でプレーするなどして、待ち伏せによる「利益を得た」らオフサイドの反則成立!副審の旗が上がります。

どうでしょう。オフサイドルールの理解のお役に立てば幸いです。

今回のオリンピックでは、J1リーグでも導入されているVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)制度という、ビデオ判定のシステムが導入されています。それについても、別記事で解説しています。よろしければそちらもどうぞ。

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