2022サッカーワールドカップのドイツ対日本戦、オフサイドでゴール取り消しが2つありましたね。前半8分の日本・前田選手のシュートと、ドイツの「2点目」かと思われた、前半45分+4分のハバーツ選手のシュート。
ワールドカップを機にサッカーに関心をもった人も多いかと思いますが、特にサッカーを見始めた人にとって理解するのが難しいのが「オフサイド」のルール。
「ゴールに入ったのにどうして得点取り消しなの?オフサイドってなに?」
と思った人も多かったことと思います。実を言うと、ある程度サッカーの経験がある人でも「オフサイド」のルールをきちんと説明するのはなかなか難しいと言われます。
私も以前に一度解説記事を書いたんですが、
今回は、実際のプレーを使ってこのときよりも簡潔に説明してみようと思います。
オフサイドは「待ち伏せ禁止」ルール
「オフサイド」は、サッカーの反則の1つで、攻撃側の選手が守備側のチームのフィールド内にあらかじめ待ちぶせすることを禁止するためのルールです。
「オフサイド」のルールがないと、相手チームからボールを奪ったら、攻撃側はあらかじめ相手ゴール付近で「待ち伏せ」している選手に向かってロングボールのパスを出せば簡単にゴールチャンスができてしまいます。
どこにいたら「待ち伏せと見なす」のか。
その場所を「オフサイドポジション」といい、ルールでこのように決めています。味方の選手がボールに触れた瞬間に…
① 守備側チームのフィールド内にいる
② ボールよりも前(相手ゴール側)にいる
③ 後ろから2人目の守備側の選手よりも前(相手ゴール側)にいる
この3つの条件を全部満たしている選手は、「オフサイドポジション」にいると判断されます。
ただし、「オフサイドポジション」にいること自体は反則ではありません。オフサイドポジションにいる選手が、そこにいたことで利益があったら(攻撃に参加して味方のパスを受けた、相手選手の守備を邪魔できた…など)「オフサイド」の反則になります。
前半8分の前田選手のシュートは…
前田選手は、
① 守備側チームのフィールド内にいる
② ボールよりも前(相手ゴール側)にいる
③ 後ろから2人目の守備側の選手よりも前(相手ゴール側)にいる
全部満たしているのでオフサイドポジションにいることになります。そのため、オフサイドの反則が成立し、ゴールが取り消されました。
このときのオフサイドライン(条件①~③を全部満たすことになる限界のライン)は前田選手のすぐ後ろにいるドイツの選手の位置で、画像の赤い線になります。
前半終了間際のシュートは…
ハバーツ選手の位置は、
① 守備側チームのフィールド内にいる
は明らかですね。
② ボールよりも前(相手ゴール側)にいる
③ 後ろから2人目の守備側の選手よりも前(相手ゴール側)にいる
はどうでしょうか。横から見た映像でこのシーンを確認すると…
③後ろから2人目の守備側の選手よりも前(相手ゴール側)にいる
は、日本チームの後ろから2人目の選手がゴールエリアのライン付近にいる板倉選手(背番号4番)なので、明らかにハバーツ選手はそれより前です。
②ボールよりも前(相手ゴール側)にいる
は、かなり際どい位置でしたが、わずかにボールの位置よりもハバーツ選手の肩が前に出ています。
なお、この場合のオフサイドライン(画像の赤い線)はボールの位置になります。後ろから2人目の守備側の選手よりもボールの方が前にあるからです。選手の位置関係だけなら「明らかにオフサイド」と言えそうですが、ボールの方が前にあるため、難しい判断になります。
補足:オフサイドに関連して出てくる新しい用語
「半自動オフサイドテクノロジー」って?
今大会で使用するボールにはセンサーが内蔵されていて、このセンサーと、ピッチ上を撮影しているカメラを使って、選手とボールの位置を測定することで、選手がオフサイドポジションにいたかどうかをAIが判断する技術です。
オフサイドの反則の可能性があるとき、AIは選手がオフサイドポジションにいたことをビデオ判定をする審判員(VAR)に知らせ、最後はVARの目で確認して、オフサイドの反則が成立するかどうかを判断します。
ドイツ対日本戦では、前半終了間際のプレーで、半自動オフサイドテクノロジーが発動しましたね。また、今大会の初戦、カタール対エクアドル戦で、開始3分で早速発動して話題になりました。
「オフサイドディレイ」って?
VARが入っている試合において、ぎりぎりでオフサイドがあった場合、副審が「今のはオフサイドだ」と判定していても、あえて旗を上げずにプレーを続けさせることです。副審がオフサイドディレイをしていた時は、シュートが決まった直後などに、副審が旗を上げて(VARチェックとは関係なく)オフサイドがあったことを主審に合図します。
「オフサイドディレイ」の用語は、テレビ中継などで割とよく使われるようになってきましたが、オフサイドディレイの意味やその理由を誤解している方が(実況や解説者を含めて、)まだまだ多いようです。決して副審がVARに判定を任せて判定を放棄しているわけではないし、VARによって後からオフサイドに判定が変わることをオフサイドディレイというのでもありません。