公認野球規則を読んでみると、守備妨害に関する規則は攻撃側プレーヤーはもちろん、それ以外のことも想定されていて、内容は多岐にわたります。
ここでは、打者走者による守備妨害に特化してまとめます。
打者走者による守備妨害が起きるときとは
特に打者走者による守備妨害としては以下の2つが挙げられます。
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捕球されていない第3ストライクの投球を処理する捕手を明らかに妨害した場合
第3ストライクを捕手が捕球できず、いわゆる「振り逃げ」できる状態になったときのことです。この投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げた場合に適用されます。
ペナルティ
打者走者がアウトとなってボールデッドになり、全ての走者は投球当時の占有塁に戻されます。
規則6.01(a)(1)の変遷
この規則6.01(a)(1)〔旧・規則7.09(a)〕は、次のような変遷をたどって現行の規則になっています。
2013年まで 旧・規則7.09(a) (次の場合は、打者または走者によるインターフェアとなる。) 第3ストライクの後、打者が投球を処理しようとしている捕手を妨げた場合。 |
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2014年度改正 旧・規則7.09(a) 第3ストライクの後、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げた場合。 【原注】投球が、捕手または審判員に触れて進路が変わり、その後に打者走者に触れた場合は、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げたと審判員が判断しない限り、妨害とはみなされない。 |
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2017年度改正 (現行) 規則6.01(a)(1) 捕手に捕球されていない第3ストライクの後、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げた場合。 【原注】投球が、捕手または審判員に触れて進路が変わり、その後に打者走者に触れた場合は、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げたと審判員が判断しない限り、妨害とはみなされない。 |
この規則の変遷を頭に入れて、次の事例を考えてみましょう。
- ボールカウント0B-2Sから打者が空振りした。
- この投球が本塁手前でワンバウンドし、捕手が投球を手前にはじいた。
- はじいた投球が一塁線上に転がり、捕手が投球を拾うために一塁線に飛び出したところ、一塁に向かおうとしていた打者走者と接触し、捕手は転倒した。
実は、2013年までの規則7.09(a)〔当時〕では、(当時は打者と表現されていましたが)「明らかに」という表現がありませんでした。
そのため、打者走者が投球を処理しようとしている捕手の妨げになった場合は、原則として守備妨害が宣告されることとなっていました。
なぜならば、いわゆる「出合い頭」ルールは打球にしか適用されないからです。
規則6.01(a)(10)〔旧・規則7.09(j)〕
【原注】 捕手が打球を処理しようとしているときに、捕手と一塁へ向かう打者走者とが接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったとみなされて、何も宣告されない。
▼《例外》走者と野手の接触があっても守備妨害にも走塁妨害にもならない場合
2014年度の改正で、「投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げた場合」となったことで、誰が見ても打者走者が捕手の守備の妨げになったと判断される場合に限って、打者走者は守備妨害でアウトになるということに変わりました。よって、「出合い頭」ルールは「捕球されていない第3ストライクの投球」にも適用できるという解釈が成立するようになりました。
あくまでも審判員の判断ですが、打者走者に故意性が認められる場合や、打者走者が投球または投球を処理しようとしている捕手を邪魔しないように避けることができる状況にあったと判断される場合、「明らかに」妨げたといえると考えます。
スリーフットレーンの外側を走って一塁への守備を妨害した場合
一塁に対する守備が行なわれているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判員が認めた場合に適用されます。
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スリーフットレーン内を走らなかったことで守備妨害が宣告された事例と言えば、2014年日本シリーズ ソフトバンクvs阪神 第5戦の西岡選手の走塁が有名です。
1対0で迎えた9回表、1死満塁で打者は西岡。打球は一塁ゴロ。併殺するため、一塁手は本塁に送球。三塁走者をフォースアウトにした捕手が一塁に付いた一塁手に再び送球、すると送球が打者走者の西岡の背中に当たりました。
ボールが一塁側ファウルグラウンドを転々とし、二塁走者が本塁に突入とプレイが混乱する中、球審は守備妨害で西岡にアウトを宣告、試合終了としました。
その他
ここまで紹介した他に、打者走者は「走者」なので、走者としての守備妨害が起こることもあります。