
打者がスイングしたバットが捕手のミットに触れたように見えるにもかかわらず、球審は打撃妨害を取らず空振り三振。DeNA・相川監督はこれに対して5分以上抗議を続け、遅延行為で退場となりました。
この記事では、今回の場面をルールの観点から整理します。
何が起きたか
2026年6月7日、横浜スタジアムで行われたDeNA対ソフトバンクの交流戦、延長11回裏 2死一塁、宮崎敏郎選手はボールカウント1ボール-2ストライクから、スイングしたバットが捕手のミットに触れたように見えました。しかし、球審は打撃妨害を取らず、空振り三振を宣告しました。
宮崎選手はすぐに打撃妨害ではないかと主張し、相川監督もベンチを出て抗議しましたが判定は変わらず、5分以上が経過したため遅延行為で退場が告げられました。
試合後、川口球審は「ジャッジだから変えられない」と説明。また、打撃妨害はNPBのリクエスト制度では映像検証の対象外であることも明らかにしました。
打撃妨害の判断基準
まず、今回のX(旧Twitter)上で広まっていた誤解を整理します。
「ミットにボールが入った後にバットが当たったのだから打撃妨害ではない」「故意にミットを狙ってスイングしたのだから守備妨害だ」といった意見が多く見られました。いずれも規則の誤解です。
打撃妨害は公認野球規則5.05(b)(3)に規定されています。
公認野球規則5.05(b)(3)
捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合。
規則のどこにも「捕球前」「捕球後」という区別はありません。今回のプレイにおける最大の争点は、バットとミットの接触があったかどうかです。捕球のタイミングは関係ありません。
また、打者がバットを振るのは正当な行為です。そこにミットを出した捕手の側に責任があるとみなされます。
打撃妨害のルール詳細は以下の記事で解説しています。
今回の判定は誤審だったのか
スロー映像を見る限り、私はバットがミットに触れていると判断しています。打撃妨害が成立するプレイであり、三振と宣告した判定は誤審だったと考えます。
ただし、これはスロー映像による判断です。球審がリアルタイムで同じように見えていたかどうかは別の話です。
なお、打撃妨害が宣告されていた場合、打者には一塁が与えられます。この場面では一塁走者も二塁へ進み、DeNAは一・二塁で攻撃を継続できていたことになります。
なぜ球審は打撃妨害を取れなかったのか
以下は私の推測です。断言できる材料はありませんが、審判経験をもとに考えられる理由を挙げます。
雨による視界不良
この試合は雨天でした。雨の中での球審は、マスク越しの視界に加えてさらに条件が悪くなります。接触の瞬間を目視で捉えることがより困難だったと考えられます。
接触が軽微だった
スロー映像で見ても、接触はわずかなものです。リアルタイムの視野では見逃しやすい接触だったと思われます。
捕球音と接触音が重なった
打撃妨害の判定では、目視が基本ですが、バットがミットに触れる音も補助的な判断材料になります。今回は捕球のタイミングとほぼ同時の接触だったように見えます。捕球音と接触音が重なり、音でも判断しにくい状況だったと考えられます。
いずれも推測の域を出ませんが、審判員が判定を下せなかった背景として考えられる理由です。誤審であっても、判定できなかった事情は存在します。
リクエストで検証できないのか
NPBのリクエスト制度では、打撃妨害は映像検証の対象外と定められています。相川監督には抗議する以外の方法がありませんでした。
では、審判団内で協議することはできなかったのでしょうか。塁審から見て明らかに打撃妨害だと確信できる状況があれば、球審を呼んで協議し、判定を変更することもあり得ます。
しかし、川口球審は、試合後の取材でこのように述べています。
「できなくはないですけど、しても分からないですよね、誰も。球審の僕の判断しかできない」
つまり、川口球審は他の審判員に確認しても有効な情報は得られないと判断していたということです。
なお、リクエスト制度がなぜ打撃妨害を対象外としているのか、制度設計上の理由は公表されていません。ただ、今回のような場面では、映像検証の範囲についての議論が改めて問われることになりそうです。
遅延行為退場とは
相川監督の退場理由は「打撃妨害への抗議」そのものではなく、「遅延行為」です。
NPBでは、抗議が5分を超えた場合、試合進行を妨げる行為として遅延行為による退場となります。これは公認野球規則に直接書かれたルールではなく、セ・パ両リーグのアグリーメント(申し合わせ)によるNPB独自のルールです。
実際の運用では、3分が経過した時点で「このまま続けると5分で退場になる」と審判員から伝えられます。映像を見る限り、激しい口論というより判定についてのやり取りが続いていたように見えます。
川口球審は「監督は興奮しているわけでもなく、ただ引けないということで」と説明しています。相川監督としても、判定が変わらないことは理解した上で、チームを代表して引けない場面だったということでしょう。
まとめ
- スロー映像を見る限り、バットがミットに触れており打撃妨害が成立するプレイだったと判断する
- 今回の最大の争点はバットとミットの接触の有無であり、捕球前後の区別は規則にない
- 打撃妨害が宣告されていれば、打者には一塁が与えられ、一塁走者も二塁へ進む
- 球審が取れなかった背景には、雨天・軽微な接触・音の重なりが考えられる(推測)
- 打撃妨害はリクエスト非対象のため、映像検証による確認手段がなかった
- 相川監督の退場は遅延行為によるもので、暴言・暴力による退場とは性質が異なる



