numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【サッカー】ルールで確認、どうだったら「ハンド」?

サッカーのハンドの反則は、単純に言うと「手や腕でプレーをしてはいけない」なのですが、シンプルなようでルールが非常に難しく、何がハンドで何がハンドではないのか、ファン/サポーターだけでなく、選手でも混乱がみられます。

今回は、サッカー競技規則と関連文書に基づいて、JFA審判委員会の説明動画も参照しながら、ハンドの反則のルールについて確認していきます。

(記事作成時点での現行の競技規則は2023/24です)

サッカー競技規則2021/22での改正のポイント

2021年3月に国際サッカー評議会(IFAB)が発表した競技規則改正のポイントで、ハンドに関することについてはボールを手や腕を使って意図的にプレーしたかどうかから一歩進んで、基準が明文化されることになりました。

これを受けて、日本サッカー協会からは2021年5月13日に、次のような通達が示されています。

「2021/22年の競技規則改正について」日サ協発第210076号 2021年5月13日

競技者が次の状況に至った場合、ハンドの反則になる。

  • 例えば手や腕をボールの方向に動かし、手や腕で意図的にボールに触れる。
  • 手や腕で体を不自然に大きくして、その手や腕でボールに触れる。その時の状況で競技者が体を動かした結果ではなく、または、動かし方が妥当ではないと判断されるならば、競技者が手や腕で体を不自然に大きくしたと考える。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある。
  • 相手チームのゴールに:
    ○ 偶発的であっても、ゴールキーパーを含め、自分の手や腕から直接
    ○ 偶発的であっても、ボールが自分の手や腕に触れた直後に
    得点する。 

手や腕に偶然ボールが当たった後、味方競技者が得点したり、得点の機会を得ることは、今後反則と考えない。 

これ以降、競技規則上は、若干の文言の修正はあるものの、基本的に記載されているルールに大きな変更はありません。

では、それぞれの基準について確認していきましょう。

腕の上限…どこまでがハンドか

サッカー競技規則第12条 ファウルと不正行為
ボールを手や腕で扱う

ハンドの反則を判定するにあたり、腕の上限は、脇の下の最も奥の位置までのところとする。競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則になるわけではない。

 

上記の図の通り、肩でボールにプレーした場合はハンドの反則ではありません。

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しかし、選手が「肩でプレーした」と主張しても、図の赤い部分にちょっとでもボールが触れていたと審判員が見れば、ハンドの反則となる可能性が生じます。

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守備側競技者がシュートブロックを行った際、主審は「肩だけではなく、腕にも当たった」としてハンドの反則でPKの判定、さらに得点の阻止にあたるためレッドカードが提示されました。

これはハンドの反則

手や腕をボールの方向に動かし、手や腕で意図的にボールに触れる

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ボールに向かって手や腕を動かした」と見られれば、ハンドの反則になります。

手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れる

サッカー競技規則第12条 ファウルと不正行為
ボールを手や腕で扱う

手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は、不自然に体を大きくしたとみなされる。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある。

例えば、腕を広げていたり、肩よりも高く上げていたりしていて、その腕にボールが当たった場合です。

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偶発的であっても、自分の手や腕から直接ゴールする

手や腕からゴールすることは認められません。

例えば、味方の選手のシュートが偶然自分の左手に当たり、軌道が変わってゴールに入ったとして、公式記録に「9↑10S(左手)」などとは書けませんよね。手や腕からゴールを認めることはできません。

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偶発的であっても、自分の手や腕に触れた直後にゴールする

自分の手や腕に偶然触れたとき、触れたこと自体ではハンドとみなされなかったとしても、その直後に自らシュートを打って得点を決めた場合は、結果としてハンドの反則となります。

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手や腕にボールが触れても、全てが反則になるわけではない

2020/21シーズンでは、以下の記述がありました。

  • 競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる。
  • 近くにいた別の競技者の頭または体(足を含む)から直接触れる。
  • 手や腕は体の近くにあるが、手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくしていない。
  • 競技者が倒れ、体を支えるための手や腕が体と地面の間にある。ただし、体から横または縦方向に伸ばされていない。競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる。

しかし、2021/22シーズンの改正で、これらの記述は競技規則からなくなっています。考え方としてはおおむね生きていますが、全てがそのままというわけではありません(当然ですが、最終的には主審の判断となります)。

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競技者自身の頭または体(足を含む)から直接触れる

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シュートブロックに入った守備側競技者の右足にボールが当たった後、右腕にボールが当たりました。この試合では、不自然に体を大きくしている腕に当たったのではないかとしてVARの介入がありましたが、オンフィールドレビューの結果、主審の判断で、競技者自身の足から直接手に当たったものとして、ノーハンドとなりました。

"支え手"ならハンドにならないわけでもない

「体を支えるための手や腕」=支え手であればハンドにならないという解釈をすると誤りです。

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このように、スライディングで体を支えるたためについた手であったとしても、結果的に「手や腕で体を不自然に大きくして、手や腕でボールに触れ」たことになっていれば、それはハンドの反則になります。

この試合ではVARの介入もなく、このままハンドの反則でPKが与えられました。

まとめ

2021/22シーズン以降は、次の状況に至った場合、ハンドの反則になると競技規則に記載されています。

  • 手や腕をボールの方向に動かし、手や腕で意図的にボールに触れる。
  • 手や腕で体を不自然に大きくして、その手や腕でボールに触れる。
  • 相手チームのゴールに、偶発的であっても、ゴールキーパーを含め、自分の手や腕から直接得点する。
  • 相手チームのゴールに、偶発的であっても、ボールが自分の手や腕に触れた直後に得点する。

"支え手"はハンドにならないと理解されていた時もありましたが、その表現は現在では削除されています。「支え手はハンドにならない」という解釈をすると誤りです。