2024年6月、DOGSOについての解説をアップデートし、サッカー競技規則2024/25の改正に対応しました。
- DOGSO(ドグソ)とは何か
- SPA(スパ)とは何か
- なぜDOGSOは一発退場になるのか
- DOGSOやSPAがペナルティーエリア内で「一段階下がる」とはどういうときか
についてまとめています。サッカーを楽しく観るのに、少しでもお役立ていただけたら幸いです。
DOGSOとは何か
DOGSO(ドグソ)とは、Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity の略で、日本語に訳すと、「決定的な得点機会の阻止」のこと。試合中、守備側競技者が反則を犯したとき、以下の4要件をすべて満たしている場合、その競技者は退場になります。
- 反則とゴールとの距離
- 全体的なプレーの方向
- ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
- 守備側競技者の位置と数
このとき主審は、反則が起こった時の状況を、頭の中で「写真を撮ったように」イメージして、4要件を満たしているかどうかを確認します。
1.反則とゴールとの距離 は、反則が起こった地点からゴールまでが「決定的な得点機会」と言えるほど近ければ該当します。ただし、競技規則に何mと示されているわけではありません。
2.全体的なプレーの方向 は、攻撃側の競技者がゴールに向かっていたかどうか。ゴール方向にプレーが向いていれば該当します。
3.ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性 は、仮にこの反則がなかった場合に、反則を受けた攻撃側競技者がボールをキープできるか、またはコントロールできるかどうか。反則を受けた瞬間はキープまたはコントロールできていなくても、反則がなければ次の瞬間にはできるだろう(キープまたはコントロールできる"可能性"がある)とみれば該当します。
4.守備側競技者の位置と数 は、他の守備側競技者がカバーに入ることができる位置関係にいるかどうか。カバーできるディフェンダーがおらず、ゴールキーパーと1対1になってしまう、もうあとはシュートを撃つだけ、のような状況であれば該当します。
以上の4要件が揃っている場合、DOGSOと判定されます。反則を犯した守備側競技者は、自動的にレッドカードを提示され、退場になります。
こちらのシーンで、4要件を確認してみましょう。2019 J1リーグ第30節 清水vs磐田 5分のシーンです。
磐田39番(ルキアン選手)がファウルを受けた瞬間、
- その位置から清水(オレンジ)のゴールまでの距離が十分近い
- プレーの方向は明らかにゴール方向
- 清水3番(ファン・ソッコ選手)のファウルがなければ、確実にボールをコントロールできる状況
- 守備側競技者はもうゴールキーパーしかいない
4要件が揃っているので、開始5分であっても自動的に退場となるのです。
SPAとは何か
SPA(スパ)とは、Stopping a Promising Attackの略で、「大きなチャンスとなる攻撃の妨害」のこと。大きなチャンスだったかどうかは、DOGSOの4要件を参考に、主審が判断します(判断基準には主審の裁量があります)。
SPAであると主審が判断した場合、反則を犯した守備側競技者は、イエローカードが提示されます。
2019 J2リーグ第29節 徳島vs琉球 51分のシーンで確認してみましょう。
徳島9番(河田選手)がファウルを受けた瞬間、
- その位置から琉球(白)のゴールまでの距離が十分近い
- プレーの方向は明らかにゴール方向
- 抜け出していれば守備側競技者はゴールキーパーだけ
- しかし、 ゴール前に上がっているボールが徳島9番の頭上にあり、コントロールできているとは言いがたい
といったところから、このシーンは4要件をすべて満たしているとはいえず、SPAと判断されてイエローカードが出されました。
なぜDOGSOは一発退場になるのか
怪我をさせるようなファウルじゃないのに、なぜDOGSOの4要件が揃うと、自動的に一発退場になるのか?それは、DOGSOが相手の得点につながる可能性をファウルでつぶすという、戦術的な悪質さ(タクティカルファウル)に対する懲戒だからです。
サッカーはなかなか得点が入らない競技です。そんな中、決定的な得点の機会をファウルで阻止し、フリーキックに逃れようとすることは極めて悪質です。そのため、DOGSOはファウルの強度に関係なく、一発退場となるのです。
ペナルティーエリア内だと「一段階下がる」とは
三重罰案件って?
ペナルティーエリア内でDOGSOが起こると、
- PK
- レッドカードで一発退場
- 次節出場停止
という重い懲戒が科せられます。これを、通称、三重罰といいます。次の事例を見てみましょう。
このシーンでは、川崎F 5番(谷口選手)がペナルティーエリア内で、大分10番(野村選手)を手を使って倒すファウルをしました。PKが与えられ、状況がDOGSOのため、レッドカードで一発退場となり、次節は出場停止となります。
このシーン(36:43)では、YS横浜 48番(冨士田選手)が意図的なハンドで相手チームの得点を阻止しました。PKが与えられ、得点阻止によりレッドカードで一発退場となり、次節は出場停止となります。
ペナルティーエリア内でPKとなって懲戒が一段下がる場合
しかし、ペナルティーエリア内で次の状況でPKが与えられた場合は、懲戒を一段階下げて、退場ではなく、警告でイエローカードが提示されます。
- ボールにプレーしようと試みた、またはボールに向かうことで相手競技者にチャレンジした結果、反則が起きてDOGSOの状況になった場合
- 意図的ではないハンドの反則で相手チームの得点または決定的な得点の機会を阻止した場合(サッカー競技規則2024/25から適用)
このシーン(動画の45秒から)で、山口16番(瀬川選手)は、ペナルティーエリア内で柏13番を倒したため、PKが与えられました。このときの状況はDOGSOでしたが、ボールにチャレンジしようとして倒したものなので、懲戒が一段下がり、イエローカードが提示されました。
このシーン(89:55)では、柏3番(ジエゴ選手)は、ハンドの反則で相手チームの得点を阻止しました。この試合は2023年12月のため、サッカー競技規則2023/24の規定でレッドカードでの一発退場となりましたが、サッカー競技規則2024/25の規定では、意図的ではないハンドの反則として懲戒が一段下がり、イエローカードが提示されることとなります。
同様に、SPAの状況の場合は、懲戒を一段階下げて、ノーカードになります。
このシーン(93:04)で、浦和28番(ショルツ選手)は、ペナルティーエリア内で町田10番を倒したため、PKが与えられました。このときの状況はSPA(ボールキープが▲)であり、ボールに向かうことで相手にチャレンジしたときの反則なので、懲戒が一段下がり、カードが提示されませんでした。
アドバンテージ適用で懲戒が一段下がる場合
また、懲戒の一段階下げが起こる別の状況として、主審がアドバンテージを採用した場合があります。
DOGSOやSPAが発生したものの、主審がアドバンテージを採用し、期待される利益が攻撃側にあった場合には懲戒を一段下げ、DOGSOはイエローカード、SPAはノーカードとすることになっています。このときの反則の発生地点は、ペナルティーエリアの内外を問いません。
このシーンでは、今治のゴールキーパー(修行選手)はペナルティーエリアの外で手を使ってシュートを阻止に行っており、DOGSOに当たる状況です。しかし、ファウルを受けた福島9番(イスマイラ選手)がこのボールを取ってゴールキーパーを振り切り、再度シュートにつなげ、ゴールとなりました。
主審はこのプレーでアドバンテージを採ってファウルを流しており、ゴールが決まった後、修行選手の懲戒をレッドカードから一段下げて、イエローカードの提示としました。
まとめ
DOGSOについて初めて知ったという方は、まずはDOGSOの4要件を覚えられれば十分です。
- 反則とゴールとの距離
- 全体的なプレーの方向
- ボールをキープまたはコントロールできる可能性
- 守備側競技者の位置と数
4要件を全て満たしたらDOGSOで自動的にレッドカード、条件不足ならSPAでイエローカードです。
DOGSO/SPAの懲戒一段階下げは、ペナルティーエリア内でボールにチャレンジした場合、または主審がアドバンテージを採った場合に起こります。
DOGSOが何かが分かってくると、プレーを見た瞬間に「DOGSO!」と叫べるようになりますよ 笑
楽しいサッカー観戦のお役に立てば幸いです。