numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【サッカー】DOGSO(ドグソ)とは?/SPA(スパ)とは?

2024年3月、DOGSOについての解説をアップデートしました。

  • DOGSO(ドグソ)とは何か
  • SPA(スパ)とは何か
  • なぜDOGSOは一発退場になるのか
  • DOGSOやSPAがペナルティーエリア内で「一段階下がる」とはどういうときか

についてまとめています。サッカーを楽しく観るのに、少しでもお役立ていただけたら幸いです。

DOGSOとは何か

DOGSO(ドグソ)とは、Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity の略で、日本語に訳すと、「決定的な得点機会の阻止」のこと。試合中、守備側競技者が反則を犯したとき、以下の4要件をすべて満たしている場合、その競技者は退場になります。

  1. 反則とゴールとの距離
  2. 全体的なプレーの方向
  3. ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
  4. 守備側競技者の位置と数

このとき主審は、反則が起こった時の状況を、頭の中で「写真を撮ったように」イメージして、4要件を満たしているかどうかを確認します。

1.反則とゴールとの距離 は、反則が起こった地点からゴールまでが「決定的な得点機会」と言えるほど近ければ該当します。ただし、競技規則に何mと示されているわけではありません。

2.全体的なプレーの方向 は、攻撃側の競技者がゴールに向かっていたかどうか。ゴール方向にプレーが向いていれば該当します。

3.ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性 は、仮にこの反則がなかった場合に、反則を受けた攻撃側競技者がボールをキープできるか、またはコントロールできるかどうか。反則を受けた瞬間はキープまたはコントロールできていなくても、反則がなければ次の瞬間にはできるだろう(キープまたはコントロールできる"可能性"がある)とみれば該当します。

4.守備側競技者の位置と数 は、他の守備側競技者がカバーに入ることができる位置関係にいるかどうか。カバーできるディフェンダーがおらず、ゴールキーパーと1対1になってしまう、もうあとはシュートを撃つだけ、のような状況であれば該当します。

以上の4要件が揃っている場合、DOGSOと判定されます。反則を犯した守備側競技者は、自動的にレッドカードを提示され、退場になります。

こちらのシーンで、4要件を確認してみましょう。2019 J1リーグ第30節 清水vs磐田 5分のシーンです。

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磐田39番(ルキアン選手)がファウルを受けた瞬間、

  1. その位置から清水(オレンジ)のゴールまでの距離が十分近い
  2. プレーの方向は明らかにゴール方向
  3. 清水3番(ファン・ソッコ選手)のファウルがなければ、確実にボールをコントロールできる状況
  4. 守備側競技者はもうゴールキーパーしかいない

4要件が揃っているので、開始5分であっても自動的に退場となるのです。

SPAとは何か

SPA(スパ)とは、Stopping a Promising Attackの略で、「大きなチャンスとなる攻撃の妨害」のこと。大きなチャンスだったかどうかは、DOGSOの4要件を参考に、主審が判断します(判断基準には主審の裁量があります)。

SPAであると主審が判断した場合、反則を犯した守備側競技者は、イエローカードが提示されます。

2019 J2リーグ第29節 徳島vs琉球 51分のシーンで確認してみましょう。

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徳島9番(河田選手)がファウルを受けた瞬間、

  1. その位置から琉球(白)のゴールまでの距離が十分近い
  2. プレーの方向は明らかにゴール方向
  3. 抜け出していれば守備側競技者はゴールキーパーだけ
  4. しかし、 ゴール前に上がっているボールが徳島9番の頭上にあり、コントロールできているとは言いがたい

といったところから、このシーンは4要件をすべて満たしているとはいえず、SPAと判断されてイエローカードが出されました。

なぜDOGSOは一発退場になるのか

怪我をさせるようなファウルじゃないのに、なぜDOGSOの4要件が揃うと、自動的に一発退場になるのか?それは、DOGSOが相手の得点につながる可能性をファウルでつぶすという、戦術的な悪質さ(タクティカルファウル)に対する懲戒だからです。

サッカーはなかなか得点が入らない競技です。そんな中、決定的な得点の機会をファウルで阻止し、フリーキックに逃れようとすることは極めて悪質です。そのため、DOGSOはファウルの強度に関係なく、一発退場となるのです。

ペナルティーエリア内だと「一段階下がる」とは

ペナルティーエリア内でDOGSOが起こると、

  • PK
  • レッドカードで一発退場
  • 次節出場停止

という重い懲戒が課せられます。これを、通称、三重罰といいます。次の事例を見てみましょう。

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このシーンでは、川崎F 5番(谷口選手)がペナルティエリア内で、大分10番(野村選手)を手を使って倒したため、PKが与えられました。加えて状況がDOGSOのため、レッドカードで一発退場が命じられ、次節は出場停止となります。

しかし、ボールにプレーしようと試みた、またはボールに向かうことで相手競技者にチャレンジした結果、反則が起き、DOGSOの状況になった場合は、懲戒を一段階下げて、退場ではなく、警告でイエローカードが提示されます。同様に、SPAの状況の場合は、懲戒を一段階下げて、ノーカードになります。

これはいずれも、ペナルティーエリア内でボールにプレーしようと試みた、またはボールに向かうことで相手競技者にチャレンジした結果、反則となった場合に限られます。ペナルティーエリア外では一段階下げは起こりません。また、攻撃側選手を手で引っ張る、押すなど、ボールにチャレンジしていると主審が判断できない場合も、一段階下げの対象となりません。

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このシーン(45秒から)で、山口16番(瀬川選手)は、ペナルティーエリア内で柏13番を倒したため、PKが与えられました。このときの状況はDOGSOでしたが、ボールにチャレンジしようとして倒したものなので、懲戒が一段下がり、イエローカードが提示されました。

また、懲戒の一段階下げが起こる別の状況として、主審がアドバンテージを採用した場合があります。

DOGSOやSPAが発生したものの、主審がアドバンテージを採用し、期待される利益が攻撃側にあった場合には懲戒を一段下げ、DOGSOはイエローカード、SPAはノーカードとすることになっています。このときの反則の発生地点は、ペナルティーエリアの内外を問いません。

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このシーンでは、今治ゴールキーパー(修行選手)はペナルティーエリアの外で手を使ってシュートを阻止に行っており、DOGSOに当たる状況です。しかし、ファウルを受けた福島9番(イスマイラ選手)がこのボールを取ってゴールキーパーを振り切り、再度シュートにつなげ、ゴールとなりました。

主審はこのプレーでアドバンテージを採ってファウルを流しており、ゴールが決まった後、修行選手の懲戒をレッドカードから一段下げて、イエローカードの提示としました。

まとめ

DOGSOについて初めて知ったという方は、まずはDOGSOの4要件を覚えられれば十分です。

  1. 反則とゴールとの距離
  2. 全体的なプレーの方向
  3. ボールをキープまたはコントロールできる可能性
  4. 守備側競技者の位置と数

4要件を全て満たしたらDOGSOで自動的にレッドカード、条件不足ならSPAでイエローカードです。

DOGSO/SPAの懲戒一段階下げは、ペナルティーエリア内でボールにチャレンジした場合、または主審がアドバンテージを採った場合に起こります。

DOGSOが何かが分かってくると、プレーを見た瞬間に「DOGSO!」と叫べるようになりますよ 笑

楽しいサッカー観戦のお役に立てば幸いです。