numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【サッカー】VAR(ビデオアシスタントレフェリー)制度を正しく理解しよう!

2020シーズンから明治安田生命J1リーグに導入(2020シーズンは第1節のみで、第2節以降は見合わせ。2021シーズンから再導入)されたVAR制度について、理解を深めるためにまとめを作りました。これを読んでもらってVAR制度について理解が深まり、楽しいサッカー観戦にお役立ていただけたら幸いです。

VARの役割

VAR🖥とは、Video Assistant Referee(ビデオアシスタントレフェリー)の略。主審⚽️や副審🏁、第4の審判員⏱をサポートする立場の審判員です。

ときどき、「主審がフィールド上にあるモニターを見る行為」や、その「モニターそのもの」のことをVARと呼んだり、「主審が判定を変更すること」をVARと言ったりする方がいますが、いずれもちょっと違います。

VARは審判員。つまり「人」です。

ただし、いる場所はフィールド上ではなく、ビデオオペレーションルーム(Video Operation Room : VOR)という別の場所で、モニターの映像で試合の状況を確認しています。

VARは、主審が下した判定に「はっきりとした、明白な間違い」があるとき、または主審に「見逃された重大な事象」があるときに限り、リプレー映像を用いて主審の判定を援助することが出来ます。VARが主体となって判定をすることはなく、最終的な判定は常に主審が行います。

ちなみにVORには、VARの他に、VARの判定を支援するアシスタントVAR(AVAR)という審判員と、VAR・AVARの機器操作を援助するリプレーオペレーター(RO、審判員ではない)がいます。

ビデオオペレーションルーム

J1リーグではVAR、AVAR、ROがそれぞれ1人ずつ、3人でVORに入っていますが、競技規則ではAVARとROを2名以上おくことも認められています。

VARが介入する4つの事象

「最小限の干渉で最大の利益を得る」がVARの哲学です。VARが入れば入るほど、プレーが止まり、サッカーの面白さが損なわれてしまう可能性が高まります。VARの介入回数が少なく、介入のためにプレーが停止している時間が短いほうが望ましいということに異論はないだろうと思いますが、そのためにも、どういうときにVARが介入するか、基準を決める必要がありますね。

VARが介入する事象は、次の4つに関する場合と決められており、その中でも「はっきりとした、明白な間違い」または「見逃された重大な事象」があった場合に限られています。

(1) 得点かどうか
(2) PKかどうか
(3) 一発退場かどうか(2枚目の警告は該当しない)
(4) 警告・退場の人間違い

よくある意見として、「今のプレーはイエローカードを出すべきだ!VARがいるのに何で確認しないんだ!」といったものがありますが、判定に疑問を感じたそのプレーが、得点かどうか、PKかどうかに関するものでなく、また、一発退場となりうる事象でもないならば、VARは介入できません。全てのプレーで正確な判定を追求するのではなく(おそらく、それは神様にしかできない)、はっきりとした明白な間違いをなくすことがVARを導入する目的だということ、判定の主体はあくまでも主審だということを、ぜひご理解ください。

VARが介入するまでの流れ

VARが介入するかどうかについては、こんな流れで決まっていきます。

①事象が発生したら

まずは主審が判定します。そもそも主審が判定しないと、その判定が「はっきりとした明白な間違い」かどうかも決められません。先ずは、主審の判定です。

②VARが映像をチェック

VARは事象をチェックしていることを主審に伝え、主審はその間、片方の耳に手を当て、もう一方の腕を伸ばすシグナルで「VARがチェックしていること」を示します。

このときVARは必要に応じて、主審からプレーがどのように見えたのか、なぜそのように判定したのかを聞き取り、リプレー映像と突き合わせます。

③「はっきりとした明白な間違い」があるかどうか確認

  • VAR(またはその他の審判員)が「レビュー」を勧める。
  • 重大な出来事が「見過ごされてしまった」と主審が不安に思う。

このような状況の場合、④以降(レビュー)に進みます。一方、「はっきりとした明白な間違い」とは言えない、「間違い」と言える決定的な映像がない場合は、それ以上VARは介入せず、主審が最初に下した判定でゲームが先に進みます。

※次のプレーが始まったら、判定を修正することはできません。

レビューをして、最終的な判定を下すまで

④「はっきりとした明白な間違い」がある場合

レビューを行います。主審は空中に両手で長方形を描く「TV シグナル」を示します。

主審の主観に基づく判定の場合

主審がレフェリーレビューエリア (RRA) へ行ってリプレー映像を見ます。これを、オンフィールドレビュー (OFR) と言います。例えば、選手同士の接触をファウルとするかどうか、手にボールが触れたのをハンドの反則とするかどうかといったものが、主審の主観に基づく判定に該当します。

誰が映像を見ても変わることのない、事実に基づく判定の場合

主審がVARからリプレー映像から得られた情報を聞きます。これをVARオンリーレビューといいます。例えば、パスを受けた選手がオフサイドポジションにいたかどうか、反則が起こった場所がペナルティーエリアの内側か外側かといったものは、通常、VARオンリーレビューとなります。

⑤主審の最終的な判定

レビューが行われたら、主審は「TV シグナル」を示したあと、最終の判定を行います。

※必ずしも、当初の判定が変わるわけではありません。