numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【野球】ランダウンプレイと走塁妨害

2021年7月11日 ソフトバンクvsオリックスの3回ウラ、走塁妨害が発生しました。

Twitterの反応を見ていると、私が思っている以上に走塁妨害について理解できていない方が多いようなので、勢いに任せて書いてみました。野球規則についての理解を深めるのにお役に立てていただけたら幸いです。

このプレイ、どうして走塁妨害なの?

ボールを持たない野手が走路に残っていたことで、走者の妨げになっているからです。文字通り、走塁の妨害になっているなら、走塁妨害が宣告されます。走者と野手の接触の有無がポイントではないのです。

また、このプレイでは走者が一塁方向へ進んでいるときの妨害発生ですが、走塁妨害が発生した時のルールで、妨害を受けた走者には1個の安全進塁権が与えられるので、妨害発生時の進行方向には関係なく、二塁に進塁できることになっています。

走塁妨害ってどういうルールなの?

まず、走路とは何かから確認しましょう。実は「走路」は、定義の項目には記載がなく、公認野球規則5.09(b)(1)の中で示されています。

公認野球規則5.09(b)(1)

【注1】通常走者の走路とみなされる場所は、塁間を結ぶ直線を中心として左右へ描く3フィート、すなわち6フィートの幅の地帯を指すが、走者が大きく膨らんで走っているときなど最初からこの走路外にいたときに触球プレイが生じた場合は、その走者と塁を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィートが、その走者の走路となる。

ここでの走路のイメージ

実際には線が引かれていないので、イメージとして写真に走路を示してみました。(3フィート=91.44cmですが、私が写真から目測で「このくらいかな」と思って引いたものなので、当然、正確ではありません。あしからず!)

そして、今回適用される規則が6.01(h)「オブストラクション」です。

公認野球規則6.01(h) オブストラクション

 オブストラクションが生じたときには、審判員は〝オブストラクション〟を宣告するか、またはそのシグナルをしなければならない。
(1)  走塁を妨げられた走者に対しプレイが行われている場合、または打者走者が一塁に触れる前にその走塁を妨げられた場合には、ボールデッドとし、塁上の各走者はオブストラクションがなければ達しただろうと審判員が推定する塁まで、アウトのおそれなく進塁することが許される。
 走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許される。
 走塁を妨げられた走者が進塁を許されたために、塁を明け渡さなければならなくなった前位の走者(走塁を妨げられた走者より)は、アウトにされるおそれなく次塁へ進むことが許される。
【付記】 捕手はボールを持たないで、得点しようとしている走者の進路をふさぐ権利はない。塁線(ベースライン)は走者の走路であるから、捕手は、まさに送球を捕ろうとしているか、送球が直接捕手に向かってきており、しかも十分近くにきていて、捕手がこれを受け止めるにふさわしい位置を占めなければならなくなったときか、すでにボールを持っているときだけしか、塁線上に位置することができない。

【付記】には「捕手」となっていますが、一般に野手のことを言いますし、得点しようとしていなくても走者の進路をふさぐ権利はないということです。

つまり、今回の場合は、二塁へ送球したあとの野手が、そのあとも引き続き走路に残っていて、「まさに送球を捕ろうとしているか、送球が直接向かってきており、しかも十分近くにきていて、これを受け止めるにふさわしい位置を占めなければならなくなったとき」でもないため、走路に残っていることが走塁の妨げになったと判断されました。

だから今回の場合は… 投げ終わった後は、すぐに走路から抜ける必要がありました。二塁方向内野側に走り抜けて、二塁側のバックアップに回るのがよかったのではないでしょうか。

走者を追ってボールを投げて終わり・・・というか、そのまま走路に立っていたので、走者が切り返して戻ったところで走塁妨害になってしまったということですね。

おまけ:オブストラクション(1)と(2)の違い

ちなみにせっかくなのでオブストラクション(走塁妨害)のルールについてもう少しだけ解説させてください。

オブストラクションには(1)と(2)があります。先ほど紹介したルールが(1)で、「走塁を妨げられた走者に対しプレイが行われている場合」です。

次に紹介するのは(2)で、「走塁を妨げられた走者に対してプレイが行なわれていなかった場合」についてです。

公認野球規則6.01(h)

(2) 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行なわれていなかった場合には、すべてのプレイが終了するまで試合は続けられる。審判員はプレイが終了したのを見届けた後に、初めて〝タイム〟を宣告し、必要とあれば、その判断で走塁妨害によってうけた走者の不利益を取り除くように適宜な処置をとる。
【原注】 本項規定のようにオブストラクションによってボールデッドとならない場合、走塁を妨げられた走者が、オブストラクションによって与えようと審判員が判断した塁よりも余分に進んだ場合は、オブストラクションによる安全進塁権はなくなり、アウトを賭して進塁したこととなり、触球されればアウトになる。このアウトは、審判員の判断に基づく裁定である。

(2)は、例えば、一塁線を深々と破る長打があって、打者走者が一塁を蹴って二塁へ向かおうとしたときに、一・二塁間に立っていた二塁手が打者走者の走塁の妨げになったような場合をイメージしてください。ボールは外野を転がっているので、打者走者に対してプレイが行われていませんね。

(1)と(2)の違いは何かと言うと、(1)は速やかにタイムがかかってプレイが止まります。(2)は、すべてのプレイが終了するまでタイムをかけません。

この例の場合、審判員は二塁手を指差して「走塁妨害」を宣告し、プレイの成り行きを見守ります。

妨害された打者走者が三塁を狙い、ライトからの返球により三塁でアウトになったとします。この場合、審判員はこのヒットで、妨害がなければ打者走者がどこまで進塁できたかを判断します。三塁まで到達できていたと見れば、アウトは無効になり、三塁占有が認められます。しかし、二塁までしか進塁できなかったと見れば、走塁妨害によって認められる塁は二塁までとなり、三塁のアウトは有効です。これは、審判員の裁定なので、基本的に異議は認められません。

まとめ

走塁妨害は文字通り、走塁の妨害となったかどうかが判断基準。

走者と野手の接触の有無がポイントではない。

走塁妨害(1)では、妨害を受けた走者に少なくとも1個の安全進塁権が与えられるので、妨害を受けたときの進行方向に関係なく、先の塁に進む。

以上を理解できれば、今回のプレイについてはOKだと思います。野球規則についての理解を深めるのにお役立てください。