2022年10月22日、日本シリーズ第1戦の1回、塁審泣かせの打球が飛びました。三塁塁審の土山さんの判定は…
これはフェア?ファール?#日本シリーズ
— VC MATSUZO (@otenamihaineken) 2022年10月22日
ヤクルトが2点先制!オスナのレフト線タイムリーツーベース! pic.twitter.com/ADYf81lCW7
一瞬、両手を上げかけますが、すぐさま
「フェア!」
オスナ選手のこの打球は2点タイムリー二塁打となったため、試合に大きく影響する一打となりました。それもあって、この判定には様々な意見があるようです。
この記事では、一・三塁線を越えていく打球について、フェア/ファウルの判定のルールを確認することから、この判定について考察します。
「フェアボール」の定義
実は日本の公認野球規則は、2013年のルール改正のときにフェア/ファウルの「定義」が変わっています。年配の方は、もしかすると古い定義のままで理解されている可能性もあるので、まず、定義を確認しておきましょう。
2013年以降現在に至るまで、公認野球規則では次のように定義されています。
公認野球規則 定義25 FAIR BALL「フェアボール」
打者が正規に打ったボールで、次に該当するものをいう。
(a) 本塁一塁間、または本塁三塁間のフェア地域内に止まったもの。
(b) 一塁または三塁を、バウンドしながら外野の方へ越えて行く場合に、フェア地域に触れながら通過するか、またはその上方空間を通過したもの。
(c) 一塁、二塁または三塁に触れたもの。
(d) 最初に落ちた地点が一塁二塁および二塁三塁を結ぶ線上であったか、あるいはその線を越えた外野の方のフェア地域内であったもの。
(e) フェア地域内またはその上方空間で、審判員またはプレーヤーの身体に触れたもの。
(f) インフライトの状態でプレイングフィールドを越えて行く場合に、フェア地域の上方空間を通過したもの。公認野球規則 定義26 FAIR TERRITORY「フェアテリトリ」(フェア地域)
本塁から一塁、本塁から三塁を通って、それぞれ競技場のフェンスの下端まで引いた直線と、その各線に垂直な上方空間との内側の部分を指す。各ファウルラインは、フェア地域に含まれる。
今回の打球は、バットに当たった直後に本塁付近で一度地面に触れていますから、関係してくるのは定義25の(b), (c)です。
具体例で確認!
では、定義を確認したところで問題です。
(1),(2),(3) はそれぞれフェアですか?ファウルですか?
●印は、ボールがバウンドしたところだとお考えください。
答えは…
…
…
(1),(2),(3)とも、全部フェアです。
(1)は、かつての定義で理解されている方はファウルだと思われる可能性がありますが、定義25(b)では、「 一塁または三塁を、バウンドしながら外野の方へ越えて行く場合」となっています。バウンドしながら内野から外野に越えていくとき、三塁ベース上を通過していたらフェアです。これが2013年当時の改正のポイントで、解釈をMLBに合わせたとのことです。
(2)は、ファウルグラウンドから巻いて入ってくる打球です。内野側のファウルグラウンドを転がっていた打球でも、打球にスピンがかかっていて巻いてフェアグラウンド側に入ってきた場合、三塁ベース上を通過していればフェアと判定できます。
(3)は、三塁ベースに当たって、ファウルグラウンドに飛んで行った打球ですが、定義25(c)のとおり、三塁ベースに触れたので、その後はどこに飛んで行っても、フェアです。
まとめ:私が判定するなら…
というわけで、改めて今回の打球ですが、別角度からのスロー映像で見てみると、
まず本塁の前のフェアグラウンド上ではね、2バウンド目が(当たったかどうかはきわどいですが)三塁ベースに当たってファウルグラウンド方向にはねたように見えます。
恐らくこういう軌道だったと考えます。
Twitterやニュースのコメント欄などを見ると、多くの人が三塁ベースに「当たった」か「当たっていない」かでフェアかファウルかの議論になっているようです。
当たっていれば当然ながらフェアで、私は当たったと考えています。
しかし、仮にベースに当たっていなかったとしても、打球の1バウンド目が本塁すぐ前のフェアグラウンド内、2バウンド目が三塁ベースのすぐ脇の位置で、ボールの軌道を考えると、2バウンド目直前に三塁ベース上を通過していることは明らかです。
よって、ベースに当たっていなくても、この打球はフェア。土山さん、ナイスジャッジです。
どうしてリクエストの対象にならない?
小石澤さんが解説してくださっているので、こちらでどうぞ。実際、MLBでも検証の対象となっていません。
審判員より前方の打球が、リクエスト対象外の理由はですね!
— 小石澤 健 (@MCKenKoishizawa) 2022年10月22日
ファウルに判定した後、検証の結果フェアにした時のランナーの処理が非常に難しいからです😦
ですからどちらの判定にせよリクエストはできません。
これはMLBでも一緒なんですよ🇺🇸
土山さんナイスジャッジです〜#日本シリーズ pic.twitter.com/8FLc1iSje0
おまけ
次の(4)~(8)は、図の位置でボールが静止した状態です。それぞれフェアですか?ファウルですか?
答えは…
…
…
(4),(5),(6)はフェアです。特に(6)のように、わずかでもファウルラインにかかっていれば、フェアと判定します。
したがって、やや乱暴な説明の仕方ですが、「ファウルラインからボール1個分外まではフェアだと認識するように」と指導する方もいらっしゃいます。認識としては間違っていません。
(7)のように、完全にファウルラインの外に出たら、ファウルボールです。
(8)のような状態は?このボールが三塁ベースに接していたら、フェアです。接していなければファウルボールになります。
さて、(4)~(8)を地面で静止した場合として考えてもらいましたが、空中にボールがあるときも考え方は同じで、ファウルライン上方にわずかでもかかっていればフェアテリトリに入っていると考えます。
また、実際の試合中に真上から見た状態でボールを確認できるのは非常にレアです。審判員は、石のように固いボールが飛んでくる中、何とかしてラインキープして判定しようとしています。
実際、土山さんはしっかりラインキープして、確かに一瞬両手を上げかけましたが、確信をもってフェアのシグナルを出していますよね。
改めてですが、土山さん、ナイスジャッジです。