numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

その1ミリの判定のために。真横から見ることの大切さ

サッカーワールドカップ 日本対スペイン戦では、三苫選手から出たこのパスから逆転ゴールが生まれたのですが、三苫選手がパスを出した瞬間のボールが残っているのか、出ているのか。

逆転ゴールを認めるかどうかの判定でもあり、世界中が熱くなりました。

https://twitter.com/foxsoccer/status/1598432145332391936?s=46&t=k8lsDlJrFI2PUcIYJ2HkYw

「ボールは出ている」と主張する人は、このような斜め後方からの写真を示すことが多く見られました。

サッカーでは、ボールがアウトオブプレーになるのは、ゴールラインタッチラインを完全に超えたときとされています。

サッカー競技規則第9条

ボールは、次のときにアウトオブプレーとなる。 ・ グラウンド上または空中で、ボールがゴールラインまたはタッチラインを完全に越えた。 (以下略)

したがって、空中も含めてボールがラインにわずかでもかかっている限りは、フィールド内にあるとみなされます。

また、ゴールかどうかの判定についても、競技規則第10条で、「ボールの全体がゴールラインを越えたとき」に得点とされています。

Goal ( = Out of play) / No Goal ( = Ball in play)

ボールが完全にラインを超えているかどうかは、ゴールライン上で確認しなければ分かりません。そのため、このようなとき審判員はラインキープ(そのライン上に位置する)が求められます。

しかしサッカーでは、一方でオフサイドの反則も見極めなければならないので、副審は通常、オフサイドラインをキープするように努めています。今回の事象でも、副審はゴールラインに走りこんでいますが、パスが出た瞬間でのゴールラインキープはできていません。

副審はこの瞬間にゴールラインにはつけていない

ワールドカップクラスであっても、どんな国際副審も、このタイミングでラインキープは無理です。

このプレーは、最終的にVARのチェックによって、ボールはこのときゴールラインを超えていなかったと判定され、ゴールが認められました。

このツイートの写真はAP通信カメラマンのペテル・ヨセクさんが撮ったもののようです。すごい写真です。この写真だと確かにラインにかかっているように見えますね。

しかし、厳密にいうと、実はこれもラインキープしているとは言えません。ゴールの枠とゴールラインが一直線に見えてないので、ポジションとしては、わずかに斜めから見ていることになります。

FIFAが示した映像がこれです。

ゴールラインカメラの映像は、しっかりラインキープされているので、残っていたかどうかがはっきりします。VARが、この映像で「ボールはまだ一部がラインにかかっている」ことを確認してゴールを認めたということです。

同じ位置にあるボールでも、斜め後方からと、真横や真上からでは見え方が変わり、誤解を招く恐れがあります。ラインキープって、本当に大切なんです。