野球規則の中で、走塁妨害(オブストラクション)は、処置の仕方についての理解が難しいルールの一つといえるかもしれません。
ときとして、「えっ!そんなことになっちゃうの?!」というような場合も起こりえます。
走塁妨害が発生した時のルールについて確認していきましょう。
- 走塁妨害のルール
- オブストラクション(1)項のルール
- ランダウンプレイが起こったとき
- 打者走者の前にボールを持たずに飛び出したとき
- 牽制球のために走者が帰塁しようとするとき
- 本塁での衝突プレイ(コリジョンルール)
- まとめ
走塁妨害のルール
走塁妨害のルールは、状況で大きく次の2つに分類されます。
- 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていた場合(審判業界の用語で、これをオブストラクション(1)項といいます)
- 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていない場合(審判業界の用語で、これをオブストラクション(2)項といいます)
今回は、特にオブストラクション(1)項について解説を行っていきます。
オブストラクション(1)項のルール
オブストラクション(1)項は、走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていた場合のルールです。
公認野球規則6.01(h) オブストラクション
(1) 走塁を妨げられた走者に対しプレイが行われている場合、または打者走者が一塁に触れる前にその走塁を妨げられた場合には、ボールデッドとし、塁上の各走者はオブストラクションがなければ達しただろうと審判員が推定する塁まで、アウトのおそれなく進塁することが許される。
走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許される。
走塁を妨げられた走者が進塁を許されたために、塁を明け渡さなければならなくなった前位の走者(走塁を妨げられた走者より)は、アウトにされるおそれなく次塁へ進むことが許される。【付記】 捕手はボールを持たないで、得点しようとしている走者の進路をふさぐ権利はない。塁線(ベースライン)は走者の走路であるから、捕手は、まさに送球を捕ろうとしているか、送球が直接捕手に向かってきており、しかも十分近くにきていて、捕手がこれを受け止めるにふさわしい位置を占めなければならなくなったときか、すでにボールを持っているときだけしか、塁線上に位置することができない。
(1)項の想定は、今まさにその走者をアウトにしようとしている場合で、【付記】には本塁での捕手の守備について記されていますが、本塁や捕手に限らず、他の塁で同じことが起こっても同じように走塁妨害です。
オブストラクション(1)項が適用されやすい状況として、次のような場合が考えられます。
ランダウンプレイが起こったとき
ボールを持たない野手が走路に残っていることで、走塁の妨げになって走塁妨害が宣告される場合があります。
一塁走者が一・二塁間で挟まれ、ランダウンプレイとなりますが、ボールを持っていない野手が走路に残っていたため、一塁方向に走ろうとした走者の妨げに。
「走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許される」ので、妨害を受けた瞬間が一塁方向に進んでいたとしても、1個先の進塁が許されることで、二塁に進むこととなりました。
打者走者の前にボールを持たずに飛び出したとき
バントの構えを見て一塁手が前進してきたものの、結局打球を処理しなかったとき、走路に位置していると、打者走者の走塁の妨げになり、走塁妨害が宣告されることがあります。
打球を処理したのは捕手です。一塁手がボールを持たずに走路に入って打者走者の走塁の妨げになりました。おそらく打者走者は、走塁妨害がなくても十分一塁でアウトになって送りバント成功のタイミングだったでしょうが、「走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許される」ので、打者走者に一塁が与えられました。
牽制球のために走者が帰塁しようとするとき
牽制球を受ける野手が、送球が来る前から走路に足を置いて捕球しようとしていると、帰塁を妨害しているとして走塁妨害が宣告されることがあります。
塁審が速やかに走塁妨害を宣告していますが、その理由は…
一塁手が走者の帰塁する側に足を置いて送球を受けようとしていたからです。
「走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許される」ので、牽制球で帰塁しようとしていた場合でも、一塁走者には二塁が与えられます。
本塁での衝突プレイ(コリジョンルール)
コリジョンルールは、走者のタックル禁止と捕手のブロック禁止について規定した、本塁での危険なプレイを防止するためのルールですが、それぞれ守備妨害と走塁妨害のルールです。
捕手がボールを持たずに得点しようとしている走者の走路をブロックすることはできません。
2016年6月14日、広島vs西武は、日本プロ野球史上初めて、コリジョンルールの適用によってサヨナラゲームとなった試合です。
このように、ボールを持つ前からあらかじめ走路に位置して走者の走路をブロックすることは走塁妨害に当たり、審判員はその走者にセーフを宣告します(妨害を受けた走者に1個先の進塁が許されることと同義になります)。
まとめ
オブストラクション(1)項(走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていた場合)では、審判員は直ちにタイムを宣告し、走者は妨害がなければ到達できたと推定される塁までの進塁が許されます。このとき、走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許されます。
このルールに基づいて処置するので、妨害を受けた瞬間の走者の進行方向は関係なく、最低でも1つ先の塁に進めることになります。
なお、今回はオブストラクション(1)項についてのみ解説しました。
オブストラクション(2)項(走塁を妨げられた走者に対してプレイが行われていない場合)は、過去にこちらの記事で解説をしています。よろしければ併せてお読みください。