numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

守備妨害か走塁妨害か、それとも…

 

2023年7月17日、高校野球

 

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この記事では、関係するルールを確認しながら、このプレイについて考察します。

捕手と打者走者が出合い頭で衝突したら…

もしかしたら、野球のルールに詳しい方は「出合い頭でナッシング」という用語が頭をよぎったかもしれません。

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以前にも記事にしたことがあるのですが、捕手と打者走者が本塁付近で接触したときは、公認野球規則6.01(a)(10)の【原注】が適用されて、どちらでもない:That's Nothing! とするルールも存在します。

公認野球規則6.01(a)(10)

【原注】捕手が打球を処理しようとしているときに、捕手と一塁へ向かう打者走者とが接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったとみなされて、何も宣告されない。打球を処理しようとしている野手による走塁妨害は、非常に悪質で乱暴な場合にだけ宣告するべきである。たとえば打球を処理しようとしているからといって、走者を故意につまずかせるようなことをすれば、オブストラクションが宣告される。

しかし、これは打球を処理しようと飛び出した捕手と、一塁に走塁しようと飛び出した打者走者のどちらにも非がないような場合の話。特に今回、打球を処理しているのは投手で、捕手は本塁で、三塁側を開けて送球を待っています。本件は「出合い頭の衝突」には該当しないと考えます。

走塁妨害ではないか?

走塁妨害を主張する人は、「捕手が走路に入って、打者走者の進路をふさいでいる」と考えたのでしょう。しかし、捕手は次のプレイに備えて本塁で送球を待つ姿勢に入っていますから、走塁妨害には当たらないと考えます。

参考までに、走塁妨害について定めた公認野球規則6.01(h)を見てみましょう。

公認野球規則6.01(h)(1)

【付記】 …塁線(ベースライン)は走者の走路であるから、捕手は、まさに送球を捕ろうとしているか、送球が直接捕手に向かってきており、しかも十分近くにきていて、捕手がこれを受け止めるにふさわしい位置を占めなければならなくなったときか、すでにボールを持っているときだけしか、塁線上に位置することができない。

実はこの記述は、三塁から来た走者に対して、得点を防ごうとする捕手の動きについて記述したものですが、野手が走路に位置してよいときの考え方として理解することもできます。

打球を処理している投手の位置を考えても、次に想定するプレイのことを考えても、捕手がこの位置に立つのは、投手からの送球を受け止めるにふさわしい位置を占めなければならなくなったときとして、十分妥当です。よって走塁妨害にもあたりません。

numの結論:守備妨害です

出合い頭の衝突でもないし、走塁妨害でもありません。ということは、消去法でも結論は守備妨害となります。しかし、消去法というのも何なので、以下に理由を述べます。

打者はバントをした後、難しい体勢でバントをしたのもあって、一塁とは逆方向に後ずさりしています。したがって、捕手が一塁線上に立ったのも視界に入っています。

打者走者なので、打ったらすぐに一塁に走ろうとする気持ちがあるのは理解できますが、このような場合は、打者走者が捕手を避けなければいけません。しかし、この打者走者は、捕手のいる位置に向かって走り出しました。

よって、守備妨害と判定し、打者走者をアウトにして、他の走者は投球当時の占有塁に戻り、1アウト 走者一・三塁でプレイ再開とする処置で適切であると考えます。

もし、満塁でこのプレイが起こったら…?

ここからは勝手な想像です。

もし、状況が満塁でこのプレイが起こったらどうでしょう?本塁はフォースプレイ、捕手は投手からのトスを受けて本塁を踏んで一塁に送球、ホームゲッツーができる状況となります。そのときにこれが起こったら。

もしかすると、併殺崩しのためにピボットマンに体当たりしたと解釈されるかもしれません。

そうなると、三塁走者と打者走者の両方をアウトにするかもしれませんね。

 

もちろん、今回は0アウト 走者一・三塁の場面であり、本塁への送球で併殺はできません。また、この状況で、守備の対象である三塁走者もアウトにするルールもありません。

繰り返しプレイを見ているうちに、ふと思い至った妄想ですが……

後ろから故意にぶつかるのは非常に危険です。実際に起こってほしくないですね。