よく野球をやっている人でも「難解だ」と言う、野球のルール。
ルールをちゃんと知っていると、野球がもっと楽しくなりますよ。
ここでは、混乱が起こりやすい「インフィールドフライ」を説明します。
まだ捕球していないのに、なぜ「インフィールドフライ」は打者アウトなの?とよく聞かれます。理由を知って、
「だから打者をアウトに『する』のか!」
と納得できたら、ルールの理解が進んだ証しです。
- 「インフィールドフライ」ルールの適用条件
- なぜ「インフィールドフライ」のルールがあるのか
- インフィールドフライのルールを適用しないとき
- インフィールドフライはボールインプレイ
- インフィールドフライを野手が落球したら
- 【応用編】インフィールドフライルールの例外的な規定
- まとめ
「インフィールドフライ」ルールの適用条件
インフィールドフライは、公認野球規則「本規則における用語の定義」40で規定されています。条件は次のとおり。
- アウトカウントが0アウトまたは1アウト
- 走者が1・2塁または満塁の場面
- 打者が飛球を打ち上げ(ライナーとバント飛球は該当しない)、
- 審判員が「内野手が普通の守備行為を行えば、捕球できる」と判断した。
このとき審判員は、捕球されるより前に、上空を指さして「インフィールドフライ!バッター イズ アウト!」と宣告します。すると、打者は、最終的に捕球されなくても、その時点をもって自動的にアウトになります。
インフィールドフライ宣告の権限は、全ての審判員に同等に与えられていて、審判員が1人でもインフィールドフライと宣告すればルール発動。全ての審判員が同様にインフィールドフライを宣告して、「このプレイはインフィールドフライだよ」とグラウンド上の全ての選手に伝わるようにする申し合わせになっていることが多いです。
特定の条件のときだけ適用するルールなので、審判員は、プレイ開始前にインフィールドフライが発生する条件が整っているとき、右手を胸にあてるシグナルをして、(インフィールドフライあるよー!)と確認しています。野球観戦のときは、審判員のこの動作を要チェックですよ!
なぜ「インフィールドフライ」のルールがあるのか
もしインフィールドフライのルールがなかったら
想像してみてください。
1アウト満塁。飛球が投手の頭上に高々と打ちあがりました。
投手は落下点に入り、飛球を捕る体制になりました。3人の走者はベースに戻ります。
ところが、捕球するふりをして投手はボールに触れずに落球!
そしてバウンドしたボールを拾ってすかさず本塁へ。
捕手は本塁を踏んですぐ3塁へ。ダブルプレイでチェンジです。
ずるいと思いませんか?本来なら2アウト満塁です。
インフィールドフライのルールは、守備側が、「飛球が捕られたときの帰塁義務」と「フォースの状態にあるときの進塁義務」という走者の2つのルールを悪用して、アウトを2つとろうという企てを阻止するために設けられたのです。
そこで、打者が飛球を打ち上げた場合、内野手が普通の守備行為を行えば捕球できるという判断のもと、審判員がプレイが起こるより先にアウトを宣告して「打者走者」でなくしてしまうルールが設けられました。これによって、インフィールドフライが宣告されると、塁上の走者に進塁の義務はなくなるので、落球があっても元いた塁を離れる必要はなく、ずるいダブルプレイが起こらなくなります。
今のプレイ、インフィールドフライのルールがあるとこうなります
1アウト満塁。飛球が投手の頭上に高々と打ちあがりました。
投手は落下点に入り、飛球を捕る体制になりました。3人の走者はベースに戻ります。
球審が、条件がそろったと判断し、上空を指さして「インフィールドフライ!バッター イズ アウト!」と宣告しました。
捕球するふりをして投手はボールに触れずに落球!
そしてバウンドしたボールを拾ってすかさず本塁へ。
しかし、すでに打者がアウトになっているので、3塁走者に進塁義務はありません。
捕手が捕球して本塁を踏んでも、球審は3塁走者にアウトを宣告しません。
捕手が3塁に投げても同じこと。2塁走者はアウトになりませんし、3塁についている限り、3塁走者もアウトになりません。
こうして、ずるいことは起こらず、2アウト満塁で再開となるのです。
インフィールドフライのルールを適用しないとき
守備側がルールを悪用して併殺をとるのを防ぐためのルールだということが理解できれば、適用しない条件もすっきりと理解できると思います。
- 2アウトのとき
2アウトでは併殺は起こりません。飛球が上がったら捕ればいいだけのことなので、適用しません。 - 1塁に走者がいないとき
2塁走者や3塁走者がいても進塁義務はありませんから、「落として併殺」はできないので、適用しません。 - 走者1塁または1・3塁のとき
打者走者が1塁への全力疾走を怠らない限り、併殺は起こりませんから適用しません。なお、打者走者の全力疾走のサボりまではルールで面倒をみません。 - ライナー、またはバント飛球
インフィールドフライの規則本文で、適用から除外することが明記されています。(ライナーは、審判員がインフィールドフライのルールを適用するかどうか考え、判断し、宣告するまでの時間的余裕がないから。バントは、攻撃側の作戦であり、その失敗の面倒までは見ないということだろうと考えます)
インフィールドフライはボールインプレイ
これまで見てきたように、インフィールドフライは、宣告と共に打者がアウトになるルールで、言い換えれば、たとえ落球したとしても「捕球したとみなす」ものです。
ここで、確認しておきたいのは、インフィールドフライはボールインプレイです。プレイは続行中なので、捕球された後、走者がタッグアップすることができます。
逆に、捕球されれば当然帰塁義務が発生するので、帰塁していなければ、塁に送球されるとアウト、併殺になります。(併殺阻止のためのルールですが、走者が帰塁していないことまでは面倒見れません)
インフィールドフライを野手が落球したら
先ほどもちょっと書きましたが、野手が落球した場合であっても、打者はアウトです。打者走者がいませんから、走者の進塁義務はなくなります。 また、落球しているので、走者に帰塁義務が発生しません。よって、走者は、元の塁にとどまることも可能ですし、アウトになる危険を冒して進塁することもできます。
いずれにしても、ボールインプレイ。プレイ続行中なので、このような状況の時こそ、集中力を切ってはいけません。下の動画の事例は、結局1塁走者がランダウンプレイになってしまいました。
【応用編】インフィールドフライルールの例外的な規定
ここまで、インフィールドフライが宣告されると、その時点で自動的に打者アウトと説明してきましたが、例外があります。ちょっと難しいので、ルールをだいたい理解できれば良い方は、ここは読み飛ばしていただいて構いません。
インフィールドフライがファウルゾーンに入ったら
例外その1。インフィールドフライは、もともとがルールを悪用した併殺の阻止を目的としたルールです。打球がファウルボールの場合、併殺は起きないのですから、インフィールドフライを適用する必要がありません。
そこで、インフィールドフライの宣告があっても、ファウルボールになった場合は、インフィールドフライを取り消します。打者はアウトにならず、ストライクカウントが増えて打ち直しです。そのため、ファウルライン際に打球が打ちあがった場合、審判員は「インフィールドフライ イフ フェア(もしもフェアならインフィールドフライ)」と宣告し、混乱の元となるので、「バッター イズ アウト」は言いません。
なお、「イフ フェア」の宣告がない、普通のインフィールドフライの宣告であっても適用規則は同じ。ファウルボールなら、インフィールドフライ取り消しです。
インフィールドフライと守備妨害が両方起こったら
例外その2。インフィールドフライが宣告されたとき、あわせて守備妨害も起こった場合です。
帰塁して、元いた塁についている走者が守備の妨げになった場合は、守備妨害は宣告されません。
しかし、塁についていない走者が守備の妨げになった場合は、下の写真のように、インフィールドフライに加えて、守備妨害も宣告されます。 ただし、本来、守備妨害が宣告されるとボールデッドになるのですが、インフィールドフライは打球がフェアと確定しないと規則が適用できません。そのため、「打球がフェアかファウルか確定するまでボールインプレイの状態は続く」という例外措置がとられます。
走者が守備妨害した場合は、インフィールドフライで打者アウト、守備妨害で妨害した走者がアウトになります。
打者走者が守備妨害した場合は、インフィールドフライで打者アウト、すでにアウトになったプレーヤーによる守備妨害で、本塁にもっとも近い走者(例えば満塁なら3塁走者)がアウトになります。
また、打球がファウルボールになった場合、インフィールドフライは取り消され、打者は打ち直しになりますが、守備妨害は残り、妨害した攻撃側プレーヤーがアウトになります。 これは、打球がファウルフライとして捕球されても同様です。フライアウトにはならず、守備妨害によるアウトのみが宣告されます。
この事例は、インフィールドフライが宣告され、守備をしようとした一塁手を1塁走者が妨げたので、審判員はインフィールドフライと守備妨害の両方を宣告しています。結果として打球がフェアになったので、打者と1塁走者の両方がアウトになりました。ちなみに、この例ではプレイが混乱して、続けて2塁走者が3塁に向かって飛び出してしまい、一度はタッグアウトも宣告されました(まさかのトリプルプレイ??)が、ボールデッド後のプレイだったとして、2塁走者のアウトは無効になりました。
まとめ
- アウトカウントが0アウトまたは1アウト
- 走者が1・2塁または満塁の場面
- 打者が飛球を打ち上げ(ライナーとバント飛球は該当しない)、
- 審判員が「内野手が普通の守備行為を行えば、捕球できる」と判断した時に適用するルール。
ただし、ライナー、またはバント飛球は適用除外。
インフィールドフライのルールは、守備側がルールを悪用して併殺をとるのを防ぐために設けられている。
インフィールドフライが宣告されてもボールインプレイ。
いかがでしたか。以上のことが分かれば、インフィールドフライに関しては大丈夫。インフィールドフライってそういうためのルールだったのか。「だから打者をアウトに『する』のか!」と納得してもらえたら幸いです。
*1:※山村審判員の画像はこちらの動画から引用。
NPB審判員によるジェスチャー解説動画「PLAY BALL TEAM13」を公開! https://npb.jp/news/detail/20200508_03.html