numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【野球】守備妨害のルールをまるごと解説。どんなときが守備妨害?

公認野球規則を読んでみると、守備妨害に関する規則は攻撃側プレーヤーはもちろん、それ以外のことも想定されていて、内容は多岐にわたります。誰が妨害したのかによって処置の仕方が変わってくるので、整理して理解しておかないと結構大変。

そこで、今回は守備妨害のルールをまるごとまとめます。

なお、このブログには各項目の詳細を扱った記事もありますので、該当の項目で併せてリンクにてご紹介していきます。この記事が「守備妨害」に関する事典みたいになって、野球規則を学ぼうとする人のお役に立てば、と思っています。

守備妨害のルールの概要

守備妨害とは、野手の守備を妨害する行為を指します。英語ではinterference (インターフェアランス)といい、審判員が「インターフェア」と宣告することもあります。

守備妨害は、妨害した人で分類すると次のようになります。

  • 打者による守備妨害
  • 打者走者による守備妨害
  • 走者による守備妨害
  • ベースコーチや攻撃側メンバーによる守備妨害
  • 審判員による守備妨害
  • 観客による守備妨害
  • その他、競技場内にいる人による守備妨害

攻撃側のメンバー(打者や走者、ベースコーチなど)が守備側の野手を妨げたり、さえぎったり、はばんだり、混乱させる行為をした場合は、基本的に次のようなペナルティーが課されることになっています。

公認野球規則6.01(a) インターフェアに対するペナルティ

走者はアウトとなり、ボールデッドとなる。

審判員が打者、打者走者または走者に妨害によるアウトを宣告した場合には、他のすべての走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻らなければならない。ただし、本規則で別に規定した場合を除く。

打者走者が一塁に到達しないうちに妨害が発生したときは、すべての走者は投手の投球当時占有していた塁に戻らなければならない。

ただし、0アウトまたは1アウトのとき、本塁でのプレイで走者が得点した後、打者走者がスリーフットレーンの外を走って守備妨害でアウトが宣告されても、その走者はそのままセーフが認められて、得点は記録される。

【注】前記の〝打者走者が一塁に到達しないうち〟以下の段は、プレイが介在した後に妨害が発生した場合には適用しない。

また、攻撃側メンバー以外の人による妨害の場合は、原則としてボールデッドになり、その後の処置は審判員の判断で、妨害によって守備側チームに生じた不利益を取り除く処置がとられます。

打者による守備妨害

打者による守備妨害は、次の4つが挙げられます。

  • 捕手のプレイを妨害した場合(規則6.03(a)(3))

  • 打者がバットを投げて捕手に当たった場合(規則6.03(a)(4))

  • アウトになったばかりの打者が野手を妨害した場合(規則6.01(a)(5))

  • 本塁における野手のプレイを妨げた場合(規則6.01(a)(3))

また、空振り後の勢いで捕手または投球にバットが当たった場合や、捕球されずに本塁周辺にとどまっている投球が、打者または審判員によって不注意にそらされた場合など、不可抗力的に発生してしまった状況では、守備妨害とはしないものの、一定の措置があります。

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打者走者による守備妨害

特に打者走者による守備妨害としては以下の2つが挙げられますが、「走者による守備妨害」にも打者走者による場合が含まれます。

  • 捕球されていない第3ストライクの投球を処理する捕手を明らかに妨害した場合(規則6.01(a)(1))

  • スリーフットレーンの外側を走って一塁への守備を妨害した場合(規則5.09(a)(11))

 

▼詳細はこちらから

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走者による守備妨害

走者(打者走者を含む)による守備妨害としては以下の7つが挙げられます。特に打者走者の場合について規定されているものもあるので、その項目に置いて詳しく触れます。

  • ファウル地域を動いている打球を故意に狂わせた場合(規則6.01(a)(2))

  • 打球を処理している野手を避けなかった場合(規則6.01(a)(10))

  • フェア地域でフェアボールに当たった場合(規則6.01(a)(11))

  • 送球を故意に妨げた場合(規則5.09(b)(3))

  • アウトになった、または得点した走者が野手を妨害した場合(規則6.01(a)(5))

  • 併殺を阻止するために妨害した場合(規則6.01(a)(6))

  • 併殺を阻止するためのスライディングをした場合(規則6.01(j))

インターフェアに対するペナルティ

当該走者はアウトになりボールデッドとなります。

他のすべての走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻されます。ただし、打者走者が一塁に到達しないうちに妨害が発生したときは、すべての走者は投手の投球当時占有していた塁に戻らなければなりません。

なお、打者走者がアウトにならず残る場合は、打席が完了しているためバッターボックスに戻ることができないので、一塁占有が許され、これによって押し出される走者に限り、進塁します。

ファウル地域を動いている打球を故意に狂わせた場合

まだファウルと決まらないままファウル地域を動いている打球の進路を、どんな方法であろうとも故意に狂わせた場合に適用されます。

ペナルティ

当該走者がアウトとなってボールデッドになり、全ての走者は投球当時の占有塁に戻されます。

打球を処理している野手を避けなかった場合

野球では、野手が打球を処理しているときは守備優先の原則があります。走者が打球を処理している野手の妨げになった場合は、故意か偶然か関係なく、守備妨害が宣告されます。

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ペナルティ

当該走者がアウトとなってボールデッドになります。

フェア地域でフェアボールに当たった場合

野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者に触れた場合は、故意か偶然か関係なく、守備妨害が宣告されます。

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ただし、次の例外があり、これに該当するときは守備妨害となりません。

(A) いったん内野手(投手を含む)に触れたフェアボールに触れた場合
(B) 1人の内野手(投手を除く)に触れないでその股間または側方を通過したフェアボールに、すぐその後方で触れても、この打球に対して、他のいずれの内野手も守備する機会がない場合

しかし、例外規定によらず、「走者が故意に打球を蹴った」と審判員が認めれば、守備妨害が宣告されます。

ペナルティ

当該走者がアウトとなってボールデッドになります。

送球を故意に妨げた場合

走者が故意に送球に触れて守備を妨げたと審判員が判断した場合は、守備妨害が宣告されます。偶然送球に当たった場合は、そのままプレイが続けられます。

ペナルティ

当該走者がアウトとなってボールデッドになります。

アウトになった、または得点した走者が野手を妨害した場合

アウトになった、または得点した走者はその時点でプレイから外れているので、これらの選手が守備妨害をした場合、守備の対象となる走者にアウトが宣告されます。

ペナルティ

守備の対象となる走者がアウトとなってボールデッドになり、他の走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻されます。

併殺を阻止するために妨害した場合

明らかに併殺を行なわせまいとして故意に打球を妨げるか、または打球を処理している野手を妨害したと審判員が判断したときに適用されます。

ペナルティ

  • 打者走者が併殺阻止の守備妨害をした場合は、守備妨害により打者走者にアウトを宣告し、さらにどこで併殺が行われようとしていたか関係なく、最も本塁に近い位置にいる走者もアウトになります。ボールデッドになり、他のすべての走者は投球当時の占有塁に戻されます。
  • 走者が併殺阻止の守備妨害をした場合は、守備妨害により当該走者にアウトを宣告し、さらに打者走者もアウトになります。ボールデッドになり、すべての走者は投球当時の占有塁に戻され、得点することもできません。

併殺を阻止するためのスライディングをした場合

走者が併殺を阻止するために、〝正しいスライディング(ボナファイドスライド)〟をせずに、野手に接触したり、接触しようとしたときに適用されます。

ボナファイドスライドルールについて、詳しくはこちら

ペナルティ

守備妨害により当該走者にアウトを宣告し、さらに打者走者もアウトになります。ボールデッドになり、すべての走者は投球当時の占有塁に戻されます。

ベースコーチや攻撃側メンバーによる守備妨害

攻撃側メンバーによる守備妨害としては、次の5項目が挙げられます。

  • 野手を惑わすなどの行為をした場合(規則6.01(a)(4))
  • ベースコーチが走塁を肉体的に援助した場合(規則6.01(a)(8))
  • ベースコーチが野手の送球を誘発した場合(規則6.01(a)(9))
  • 野手の打球や送球の処理を妨げた場合(規則6.01(b))
  • ベースコーチが故意に送球を妨害した場合(規則6.01(f))

野手を惑わすなどの行為をした場合

1人または2人以上の攻撃側メンバーが、走者が達しようとする塁に接近して立つか、あるいは、その塁の付近に集合して守備側を妨げるか、惑乱させるか、ことさらに守備を困難にした場合、守備妨害が宣告されます。

ペナルティ

守備妨害と認められる塁に到達しようとする走者にアウトを宣告し、ボールデッドになり、他のすべての走者は妨害発生時の占有塁に戻されます。

ベースコーチが走塁を肉体的に援助した場合

ベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合に適用されます。

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ペナルティ

ベースコーチの援助を受けた走者にアウトを宣告し、ボールデッドになり、他のすべての走者は妨害発生時の占有塁に戻されます。

ベースコーチが野手の送球を誘発した場合

走者三塁のときに、ベースコーチがコーチスボックスを離れて、なんらかの動作で野手の送球を誘致した場合、守備妨害が宣告されます。

ペナルティ

三塁走者にアウトを宣告し、ボールデッドになり、他のすべての走者は妨害発生時の占有塁に戻されます。

野手の打球や送球の処理を妨げた場合

攻撃側チームのプレーヤーやベースコーチ、その他のメンバーは、打球あるいは送球を処理しようとしている野手の守備を妨げないように、必要に応じて自己の占めている場所(ダッグアウト内またはブルペンを含む)を譲らなければなりません。

ペナルティ

  • 打球処理に対する守備妨害の場合は、打者にアウトを宣告し、ボールデッドになって、他の全ての走者は投球当時の占有塁に戻されます。
  • 送球処理に対する守備妨害の場合は、守備の対象になっている走者にアウトを宣告し、ボールデッドになって、他の全ての走者は妨害発生時の占有塁に戻されます。

ベースコーチが故意に送球を妨害した場合

送球が偶然ベースコーチに触れたときはボールインプレイですが、ベースコーチが故意に送球を妨害した場合は、守備妨害です。

ペナルティ

守備の対象になっている走者にアウトを宣告し、ボールデッドになって、他の全ての走者は妨害発生時の占有塁に戻されます。

審判員による守備妨害

審判員による守備妨害としては以下の2つが挙げられます。

  • 審判員がフェア地域でフェアボールに触れた場合(規則5.05(b)(4)、5.06(c)(6))
  • 球審が捕手の送球を妨害した場合(規則5.06(c)(2))

審判員がフェア地域でフェアボールに触れた場合

審判に当たっても石ころと同じ、ではありません。

状況によってはボールデッドになり、打者は一塁に進みます。また、これによって押し出される走者に限って進塁します。

▼詳しくはこちら

球審が捕手の送球を妨害した場合

球審が盗塁を阻止しようとする捕手の送球動作を妨害(インターフェア)した場合です。

 

ボールデッドになって、走者は投球当時の占有塁に戻ります。

観客による守備妨害

観客がスタンドから身を乗り出して、打球に触れるような場合です。

妨害と同時にボールデッドになって、審判員は、妨害がなかったら競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとります(規則6.01(e))。

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その他、競技場内にいる人による守備妨害

ボールパーソンやバットパーソン、カメラマンや警備員など、グラウンド内にいることが認められている人たちがボールに触れた場合です。

打球や送球が飛んできたとき、避けきれず触れてしまったときは、ボールインプレイです。しかし、故意に触れたとみなされる場合(拾い上げる、捕る、意図的に触れる、押し戻す、蹴る)場合は、妨害と同時にボールデッドになって、審判員は、妨害がなかったら競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとります(規則6.01(d))。

まとめ

以上、守備妨害のルールを一通り紹介しました。

守備妨害は、妨害した人で7種類に分類できます。

  • 打者による守備妨害
  • 打者走者による守備妨害
  • 走者による守備妨害
  • ベースコーチや攻撃側メンバーによる守備妨害
  • 審判員による守備妨害
  • 観客による守備妨害
  • その他、競技場内にいる人による守備妨害

中には詳細な解説が必要となる規則も出てきましたが、それらは紹介した別記事にありますので是非ご覧ください。

この記事が守備妨害のルールの理解を深めるための助けとなれば幸いです。