numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

審判は石ころと同じ、ではない!【サッカー編】

「審判は石ころと同じ」

よく聞きますよね、このフレーズ。

実は、大間違いです。

審判員は人間です!当たったら痛いです。

えっ?そういうことを言ってるんじゃない?「審判員にボールが当たっても、石ころに当たったのと同じルール」って意味だと?

やはり、間違いです!

確かにかつてサッカーでは、審判員にボールが当たってもインプレー、まさに石ころに当たったのと同じ扱いでした。しかし、ルール改正により、現在はプレーが停止され、ドロップボールで再開となる場合が規定されています。

この記事にたどり着いたあなた。ぜひ、正しいサッカー競技規則の理解のために、「審判は石ころではない」というフレーズと共に、拡散希望します(笑)

審判員にボールが当たったとき、プレイが止まる場合

サッカー競技規則第9条に次のような記載があります。

サッカー競技規則第9条 1. ボールアウトオブプレー

ボールは、次のときにアウトオブプレーになる:

  • グラウンド上または空中で、ボールがゴールラインまたはタッチラインを完全に越えた。
  • 主審がプレーを停止した。
  • ボールが審判員に触れ、競技のフィールド内にあり、次のような場合。
    チームが大きなチャンスとなる攻撃を始めるか
    ボールが直接ゴールに入るか
    ボールを保持するチームが替わる

こうしたすべてのケースでは、プレーはドロップボールによって再開される。

上記で太字の箇所が、今回のテーマで関係してくるところです。

ボールが審判員、特に主審に当たってチームが利益を得たり得点したりするのは、多くの場合、公平・公正さに欠けることになるため、主審が笛を吹いて試合を止め、ドロップボールで再開することになっています。

もちろん、審判員に触れてもインプレーの場合もある

審判員にボールが触れたあと、 ・チームが大きなチャンスとなる攻撃を始めるか
・ボールが直接ゴールに入るか
・ボールを保持するチームが替わる

に該当しなければインプレーです。例えば、自陣でビルドアップしているときに主審にボールが当たってワンツーリターンのようになってしまったときなどは、(スタンドから笑いが起こる程度で)そのまま流されます。

また、審判員にボールが触れたあと、結果的にタッチラインを割る場合もあるでしょうが、そのときも、審判員にボールが触れる直前で最後にボールに触れた競技者の相手競技者にスローインを与えます。

そんなルール、いつできたの?

「昔サッカーをやっていた時にそんなルールはなかった」と思われた方、その記憶は正しいです!

実はこの内容は、2019年の競技規則改正(Laws of the Game 2019/20)で盛り込まれた内容です。ここに、競技規則第9条について、2018/19と2019/20の両方を用意しましたので確認してみましょう。

サッカー競技規則2018/19 第9条

サッカー競技規則2019/20 第9条

黄色い線が入っているところが、改正内容になります。この通り、このときに完全に新規で追加された文言になります。

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この事象ではゴールが認められていますが、これは2019年5月25日の試合のようなので(おそらく)規則改正前のため。2019年6月以降に改正された競技規則2019/20を適用すると、ノーゴールで、ドロップボール再開です。

主審が試合を止めたときはドロップボールで再開

主審が試合を止めたときはドロップボールで再開

競技規則がこのように改正されたことで、審判員にボールが当たってアウトオブプレーになってドロップボールで再開という事象が増えました。

通常、ドロップボールは主審が試合を止めた位置で行うのですが、ドロップボールのときも、両チームの選手が入り乱れ、いろいろトラブルが起こっていました。

実は、ドロップボールでの再開方法についても、2019年の競技規則(Laws of the Game 2019/20)で改正されました。競技規則第8条についても、2018/19と2019/20の両方を確認してみましょう。

サッカー競技規則2018/19 第8条

サッカー競技規則2019/20 第8条

ボールを受ける選手は、審判員にボールが触れる直前にボールを持っていたチームの選手とし、選手1人に主審がドロップすることになりました。このとき、敵・味方を問わず、それ以外の選手は4m以上離れることになっています。

ただし、ペナルティーエリア内でのドロップボールは、最後にどちらの選手がボールに触れていたかを問わず、守備側チームのゴールキーパーにドロップされることになります。

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こういう不幸な事象があったときも、ドロップする相手は守備側のゴールキーパーになります。

何とがら空きのゴールにシュートを撃とうとしたら、よけきれなかった主審の足に当たって枠外へと弾き飛ばされてしまいました。当然ながら得点は認められません。また、ペナルティーエリア内でのドロップボールなので、ドロップする相手は守備側のゴールキーパーになります。

というわけで、サッカーの審判員はぜんぜん石ころではない

これだけ「アウトオブプレーとして、ドロップボールで再開する」というルールが整備されたので、審判員に当たっても石と同じという認識は、サッカーにおいては改めるべき状況です。

最後まで読んでいただいたあなた。ありがとうございます。冒頭にも書きましたが、ぜひ、多くの方に正しくサッカー競技規則を理解してもらうためにも、

「審判は石ころではない。人間です。」

というフレーズと共に、この記事の拡散を希望します(笑)