2023年9月4日、日本野球機構(NPB)とプロ野球12球団による実行委員会が開かれ、塁のブロッキングに関するルールの運用変更「ブロッキングベース」について確認されました。
X[旧Twitter]上では早速、このルール運用を検討するきっかけとなった当事者の名を取って「京田ルール」なんて表現もあるようです。
「ブロッキングベース」とはどんなルールなのか、適用場面と、運用方法について、各スポーツ新聞社の報道記事をもとに私なりに考察してまとめてみました。
「ブロッキングベース」とはどんなルール?
ルール運用の概要
例えば、走者が盗塁を試みて、タイミングがセーフであったにもかかわらず、野手が塁を完全にふさいだため、走者が塁に到達できなかった場合に適用するルールとなります。
野手が塁をふさいだ行為が、送球がそれたなどの理由で不可抗力によるものと判断されれば、「走塁妨害」は適用しないが、走者の不利益を取り除くためセーフとすることとなりました。
「ブロッキングベース」の適用場面
- 盗塁でクロスプレイとなった場合
- けん制球などの帰塁の場合
(飛球が捉えられた時のリタッチも対象と考えられる)
numの独自見解:「ブロッキングベース」の運用方法
以下は、2023年9月4日の各スポーツ新聞社の報道記事を読んだ上での、私の理解になります。実際の運用と乖離があった場合、私の理解の誤りと捉えてください。
①二塁盗塁があったため、捕手から送球が来ました。
②この送球が一塁側に逸れたため、遊撃手が一塁側に踏み込んで捕球しようとしました。
③しかし、捕球しようとした結果、遊撃手は体勢を崩してベースの前に膝をついてしまいました。
④その結果、一塁走者は、滑り込んで二塁ベースに触れることができなくなってしまいました。
このとき、②のように、送球を捕ろうとして一塁走者の走路に入るのは〝ボールを処理する行為〟であり、「守備優先」として認められます。
また、③のようにバランスを崩して膝をついてしまうのは、仕方がないことと考えます。
その結果、④のように不可抗力ながら走路をふさいでしまった場合、公認野球規則に照らして考えると、野手にも走者にも「非がない」ため、成り行き通りにこのプレイを判定します。つまり、野手が走者に触球できているなら「アウト」を宣告することとなります。
しかし、今回NPBで運用を始める「ブロッキングベース」のもとでは、③のようにバランスを崩してしまうのは仕方がない(走塁妨害には当たらない)とする判断は変わりませんが、④のように結果的に走路をふさいでしまっていたならば、「走者に不利益があった」と考えます。
そこで、走路をふさがれたことによる「走者の不利益を取り除く」という考え方を行います。走者のスライディングのタイミングがセーフだったのなら、判定はセーフとしましょう、また記録も盗塁成功としましょう、という運用になるようです。
「ブロッキングベース」のルール運用は2023年9月5日から。ちょうど、この記事を書いている翌日からになります。
野球ファンの皆さんに確認してもらいたいこと
あくまでもNPBにおける独自のルール運用です
今回は、日本野球機構(NPB)とプロ野球12球団による実行委員会で確認されたことになります。ご存じの通り、2023年8月18日のDeNAvs阪神戦で、9回表の京田選手のプレイに関して阪神ご意見書をセ・リーグに提出したことを受けてのルール運用の変更です。
別の表現を用いるならば、今回の決定は日本プロ野球における「申し合わせ」。公認野球規則が改正されるとか、アグリーメントに追記が行われるというわけではありません。
つまり、MLBでも、社会人野球でも、大学野球や高校野球でも、このルールの運用は行われない。あくまでも日本プロ野球のみでの運用であることを確認しておく必要があります。
公認野球規則で定められている原則は変わりません
くり返しになってしまいますが、野球のルールの原則は「守備優先」です。
当然ながらボールを持っていないときに走路に位置することは認められません。
しかし、ボールを持っているときや、〝ボールを処理する行為〟をしているときは「守備優先」であり、ボールを持って走路に位置することは正当な守備行為であり、当然認められます。(このことを理解せずに当該プレイを批判しているように感じられる言説がX[旧Twitter]上で散見されました)
「ブロッキングベース」は、「野手がボールを持たずに走路に入ったのか」と「ボールを処理するために走路に入ったのか」のちょうど狭間のところで「結果的に走者に不利益が生じた場合」について、新たなルール運用変更の確認がなされたものと私は理解しています。「ブロッキングベース」のルール運用がなされても、「守備優先」の原則が変わるものではないし、捕球のために走路に入るタイミングに制限がかけられるわけでもないと、私は捉えています。
このルール運用変更が今後の公認野球規則の改正につながる可能性は、もちろん考えられます。多くのファンの方が言うように、選手の安全に配慮した形でより良い方向に野球が変化するのか。期待しながら見ていきたいと思います。