「テイク○ベース!」と審判員に言われて、走者が進塁するシーン、野球でときどき見ることがありますよね。
ボールデッドになったときは何となく「ワンベースもらえる」と思っている方が意外と多いようで、正しく理解されていないような気がしています。
このときの進塁って、どのように決まっているんでしょう。
今回は、「テイク○ベース」がどのように与えられるのかについて解説します。正しいルールがより多くの人に届くように、ぜひ、拡散してください!
- 1個の安全進塁権が与えられる場合【テイクワンベース】
- 2個の安全進塁権が与えられる場合【テイクツーベース】
- 3個の安全進塁権が与えられる場合【テイクスリーベース】
- 本塁までの安全進塁権が与えられる場合
- まとめ
解説を始める前に【お断り】 いつもなら公認野球規則を引用して紹介するのですが、今回は引用するとかえって内容がごちゃごちゃするので、ルールをかみ砕いて、整理し直してまとめます。関係する規則は、5.05(a)(5)~(9)、5.06(b)(3)(4)、5.06(c)(3)になります。 |
1個の安全進塁権が与えられる場合【テイクワンベース】
野球のボールの状態は、大別すると、投球、送球、打球に分類できます。
1個の安全進塁権が与えられる「テイクワンベース」とされる状況は、主に投球が原因で生じます。
① 投球が次のようになったとき
➡ ボールデッドになり、走者は投球当時の占有塁を基準に1つ進む
➡ 四球または振り逃げ可能な状況で第3ストライクが宣告されたときにこの状態になった場合は、打者走者も一塁に進塁する。
② 投手が投手板(プレート)を外さずに塁に送球した(牽制球を投げた)ときに、ベンチやスタンドなどに入った場合
➡ ボールデッドになり、走者は送球が投手の手を離れたときの占有塁を基準に1つ進む
③捕手や野手が、帽子やマスクなどを、本来身に付けている位置から外して、故意に投球に触れさせた場合
➡ 走者は、帽子などがボールに触れたときの位置を基準に1つ進み、かつボールインプレイ(タイムはかからない)
④ボークの場合
➡ ボールデッドになり、走者は投球当時の占有塁を基準に1つ進む
⑤野手が飛球を捕った後、スタンドやベンチなどボールデッドになる個所に倒れこんだり、踏み込んだりした場合
➡ ボールデッドになり、走者は野手が倒れこんだときの占有塁を基準に1つ進む
2019年8月29日、アスレチックスvsロイヤルズ戦で、三塁手・カスバートが三塁ファウルフライを捕った後ベンチに飛び込んだプレイが参考になります。
せっかくファウルフライを捕ったのに、このような場合、三塁走者には本塁が与えられます。
なお、走者にはフライを捕られたときのリタッチの義務が残りますので、塁を離れていたときは、ちゃんと投球当時の占有塁まで戻ってから進塁しないといけません。
2個の安全進塁権が与えられる場合【テイクツーベース】
2個の安全進塁権が与えられる「テイクツーベース」とされる状況は、主に打球や送球が原因で生じます。
① フェアの打球が次のようになったとき
- バウンドしてスタンドに入った場合
- 野手に触れて進路が変わってファウルスタンドに入った場合
- フェンスの隙間や金網などに挟まって取れなくなった場合
➡ ボールデッドになり、走者は投球当時の占有塁を基準に2つ進む。「エンタイトルツーベース」と言われるものです。
【スッポリ】日本ハム・石井一成の打球、外野フェンスにはまる https://t.co/3HBZxXcU5J
— ライブドアニュース (@livedoornews) 2019年7月31日
楽天のライト・渡邊佳明が引き抜こうとする間に石井は三塁へ到達したが、エンタイトル二塁打となり、二塁に戻された。 pic.twitter.com/ThO40yBdEP
② 送球が次のようになったとき
- ベンチやスタンドなど、ボールデッドとなる個所に入った場合
- フェンスの隙間や金網などに挟まって取れなくなった場合
➡ ボールデッドになります。
➡ 内野手が打球処理直後の最初のプレイのときは、走者は投球当時の占有塁を基準に2つ進む
よく内野手が内野ゴロを処理した後一塁に悪送球をしてボールデッドになったときは、「打者走者がテイクワンベースで一塁から1つ進む」と理解している方が多いですが、正しくは「投球当時の占有塁を基準にテイクツーベースなので、打者走者は二塁まで進む」です。
➡ それ以外のときは、走者は送球が野手の手を離れたときを基準に2つ進む
2023年8月22日の巨人vsヤクルト戦では、山崎選手の送球が走者に当たって一塁側ダッグアウトに入りました。送球が山崎選手の手を離れた瞬間、一塁走者のブリンソン選手は二塁を回っていたため、二塁を起点に2個の安全進塁権で本塁が与えられました。
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— DAZN Japan (@DAZN_JPN) 2023年8月22日
左対左も苦にせず
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大城卓三がタイムリーヒット
※送球が走者に当たった後ベンチに入りもう1点
※審判の説明まで有り
⚾プロ野球(2023/8/22)
🆚巨人×ヤクルト
📱Live on DAZN#DAZNプロ野球#giants pic.twitter.com/ccei5rvlA4
③ 投手が投手板(プレート)を外して塁に送球した(牽制球を投げた)ときに、ベンチやスタンドなどに入った場合。
➡ ボールデッドになり、走者は送球が投手の手を離れたときの占有塁を基準に2つ進む
※プレートを外したときは、投手は野手扱いになります。
④ 野手が、帽子やマスクなどを本来身に付けている位置から外したり、グラブを投げつけたりして、故意に送球に触れさせた場合
➡ 走者は、帽子やグラブなどがボールに触れたときの位置を基準に2つ進み、かつボールインプレイ(タイムはかからない)
3個の安全進塁権が与えられる場合【テイクスリーベース】
実はあるんです。テイクスリーベースのルールが。
① 野手が、帽子やマスクなどを本来身に付けている位置から外したり、グラブを投げつけたりして、故意にフェアの打球に触れさせた場合
➡ 走者は、帽子やグラブなどがボールに触れたときの位置を基準に3つ進み、かつボールインプレイ(タイムはかからない)
2008年5月4日、ロッテvs西武戦で、オーティズ選手が打球にグラブを投げつけて止めたため、打者に三塁が与えられる事象がありました。
本塁までの安全進塁権が与えられる場合
言うまでもないと思いますが、本塁打【ホームラン】のことです。
① 打球が、ノーバウンドでフェアのスタンドを超えた場合
② 打球が明らかにノーバウンドでフェアのスタンドを超えるだろうと審判員が判断するときに、野手が帽子やマスクなどを本来身に付けている位置から外したりグラブを投げつけたりして故意に触れさせた場合や、観衆や鳥などに触れた場合
まとめ
ルールとしては以上ですが、こう覚えておけば大体間違いはありません。
- プレートについている投手が投げた投球や牽制球は、投球当時から1ベース
- 打球と、打球処理直後の内野手の最初のプレイは、投球当時から2ベース
- 野手の送球(プレートを外したら投手も野手扱い)は、野手の手を離れた瞬間から2ベース
- 打球にグラブを投げつけたら、当てた瞬間から3ベース
- ホームランは言うまでもない
どうでしょう。大体覚えられたでしょうか。
安全進塁権が何個与えられるかと同じくらい大事なのが、その安全進塁権をどこから数えるかです。
実は過去に元NPB審判員の坂井さんも「間違ったルールが拡散される危険性があるので」といってツイートされていたことがありました。
【野球規則5.06b(4)H】
— 坂井遼太郎 (@ryotarosakai12) 2022年10月30日
間違ったルールが拡散される危険性があるので投稿します。
このプレイは『投球当時』から1つの進塁が認められます。
そのため今回2塁にいた走者は、3塁に戻されます。
ベンチに入ったタイミングは関係ないんです。
正しいルールがより多くの人に届けば嬉しいです。。
↓続く pic.twitter.com/b9qkf4Fxgl
私も正しいルールがより多くの人に届くようにと願っています。
この記事を、ぜひ拡散してください!
補足
- 野手が帽子やマスクなどを本来身に付けている位置から外したりグラブを投げつけたりしたときは、実際にボールに触れなければ、ペナルティは適用されません。
- また、打球または送球の勢いにおされて野手の手からグラブが脱げたときや、正しく捕球しようと努力したにもかかわらず野手の手からグラブが脱げた場合などには、適用されません。