サッカーでは、ファウルや不正な行為が行われたとき、主審により警告(イエローカード)や退場(レッドカード)が提示されます。
主審はどういう基準でカードを提示するのでしょう。競技規則の記述をもとにまとめました。
警告(イエローカード)や退場(レッドカード)の基準
どのような行為が反則か、どのような行為が懲戒罰(警告や退場)に相当するかは、サッカー競技規則の「第12条 ファウルと不正行為」に記載されています。
サッカー競技規則は、公式のものが国際サッカー評議会(IFAB)に、その日本語訳が日本サッカー協会(JFA)ホームページに掲載されています。
今回は、JFAホームページにある「サッカー競技規則2023/24」や、審判登録者向けコンテンツに掲載の情報に基づいてまとめました。
警告となる反則
サッカー競技規則においては、下の表の左側にある文言で記載されています。
一方、JFAが公式記録として示す項目は、表の右側に示すC1~C8の8つの分類になっています。
競技規則 | 記号 |
---|---|
プレーの再開を遅らせる。 | C5 : 遅延行為 |
言葉または行動により異議を示す。 | C3 : 異議 |
主審の承認を得ず、競技のフィールドに入る、復帰する、または意図的に競技のフィールドから離れる。 | C7 : 無許可入 C8 : 無許可去 |
ドロップボール、コーナーキック、フリーキックまたはスローインでプレーが再開されるときに規定の距離を守らない。 | C6 : 距離不足 |
繰り返し反則する(「繰り返し」の定義に明確な回数や反則のパターンは、ない)。 | C4 : 繰り返しの違反 |
反スポーツ的行為を行う。 | C1 : 反スポーツ的行為 C2 : ラフプレー |
レフェリーレビューエリア(RRA)に入る。 | C3 : 異議 |
(主審がレビューのために用いる)TVシグナルを過度に示す。 | C3 : 異議 |
反スポーツ的行為とは?
サッカー競技規則では、「反スポーツ的行為」の具体例を以下のように挙げています。
- 負傷を装う、またはファウルをされたふりをする(シミュレーション)などで主審を騙そうとする。
- プレー中、または主審の承認を得ずにゴールキーパーと入れ替わる(第3条参照)。
- 直接フリーキックとなる反則を無謀に行う。 [C2 : ラフプレー]
- 相手の大きなチャンスとなる攻撃を妨害または阻止するためにボールを手や腕で扱う。[手を使った反則でのSPA]
- 相手の大きなチャンスとなる攻撃を妨害または阻止するためにその他の反則を行う。ただし、ボールをプレーしようと試みて、または、ボールに向かうことで(相手競技者に)チャレンジして反則を行い、主審がペナルティーキックを与えた場合を除く。[PA外でのSPA]
- ボールをプレーしようと試みて、または、ボールに向かうことで(相手競技者に)チャレンジして反則を行い相手競技者の決定的な得点の機会を阻止し、主審がペナルティーキックを与える。[PA内で、ボールにチャレンジしたDOGSO]
- (その試みが成功しようとしまいと)ボールを手や腕で扱って得点をしようと試みる、または得点を阻止しようと試みて失敗する。
- 競技のフィールドに認められないマークを描く。
- 競技のフィールドから離れる承認を得たのち、競技のフィールドから出る途中でボールをプレーする。
- 試合にとってリスペクトに欠ける行為を行う。
- (フリーキックやゴールキックのときも含め)ゴールキーパーが手でボールに触れる触れないにかかわらず、競技規則の裏をかいて、頭、胸、膝などを用いボールがゴールキーパーにパスできるよう意図的なトリックを企てる。ゴールキーパーが意図的なトリックを企てていたならば、ゴールキーパーが罰せられる。
- プレー中、または再開のときに言葉で相手競技者を惑わす。
ゴールパフォーマンスで警告されるのは?
サッカーはなかなか得点が決まらないスポーツなので、ゴールが決まったときのパフォーマンス(得点の喜び)はある程度許容されています。
競技規則では、次のように書かれています。
競技者は、得点をしたときに喜ぶことはできるが、その表現は、過度になってはならない。
あらかじめ演出されたパフォーマンスは、勧められず、時間をかけ過ぎてはならない。
得点の喜びのために競技のフィールドを離れることは、警告の反則ではない。しかし、競技者は、できるだけ早く競技のフィールドに戻るべきである。
また、次のような場合には、得点が認められなかったとしても警告されることになっていて、警告理由は C1 : 反スポーツ的行為 になります。
- 安全や警備に問題が生じるような方法で、ピッチ外周フェンスによじ登る、または観客に近づく。
- 挑発する、嘲笑する、または相手の感情を刺激するように行動する。
- マスクや同様のものを顔や頭に被る。
- シャツを脱ぐ、シャツを頭に被る。
SPAとは?
SPA(スパ)とは、Stopping a Promising Attackの略で、「大きなチャンスとなる攻撃の妨害」のこと。大きなチャンスだったかどうかは、DOGSOの4要件を参考に、主審が判断します(判断基準には主審の裁量があります)。
退場となる反則
サッカー競技規則においては、下の表の左側にある文言で記載されています。
一方、JFAが公式記録として示す項目は、表の右側に示すS1~S6とCSの7つの分類になっています。
競技規則 | 記号 |
---|---|
ハンドの反則を行い、相手チームの得点または決定的な得点の機会を阻止する(自分のペナルティーエリア内でゴールキーパーが手や腕でボールに触れた場合を除く)。[ハンドの反則によるDOGSO] | S4 : 得点機会阻止(手) |
フリーキックで罰せられる反則を行い、全体的にその反則を行った競技者のゴールに向かって動いている相手競技者の得点または決定的な得点の機会を阻止する。[その他の反則によるDOGSO] | S5 : 得点機会阻止(他) |
著しく不正なプレーを行う。 | S1 : 著しく不正なプレー |
人をかむ、または人につばを吐く。 | S3 : つば吐き |
乱暴な行為を行う。 | S2 : 乱暴な行為 |
攻撃的な、侮辱的な、もしくは下品な発言をする、または行動をとる | S6 : 暴言 |
同じ試合の中で2つ目の警告を受ける。 | CS : 警告2回 |
ビデオオペレーションルーム(VOR)に入る。 | (分類記号不明) |
なお、「ビデオオペレーションルーム(VOR)に入る」ことは、S1~S6で分類するならS6にあたりそうに思うのですが、根拠となるものが見つからなかったので、今のところは(分類記号不明)としています。
DOGSOとは?
DOGSO(ドグソ)とは、Denying an Obvious Goal-Scoring Opportunity の略で、日本語に訳すと、「決定的な得点機会の阻止」のこと。試合中、守備側競技者が反則を犯したとき、以下の4要件をすべて満たしている場合、その競技者は退場になります。
- 反則とゴールとの距離
- 全体的なプレーの方向
- ボールをキープできる、またはコントロールできる可能性
- 守備側競技者の位置と数
「ラフプレー」と「著しく不正なプレー」「乱暴な行為」の違い
競技規則では、直接フリーキックとなる反則を無謀に行うことが「反スポーツ的行為」に含まれています。無謀とは「競技者が相手競技者にとって危険になる、または結果的にそうなることを無視して行動すること」です。日本ではこのような反則を C2 : ラフプレー として、独立した警告の項目としています。
一方、相手競技者の安全を脅かすタックルをすることや、過剰な力を用いてチャレンジすること、粗暴な行為をすることは、一発退場となる反則であり、 S1 : 著しく不正なプレー に分類されます。
また、身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールに向かうことでチャレンジしていないときに、相手競技者、または味方競技者、チーム役員、審判員、観客もしくはその他の者に対して過剰な力を用いる、粗暴な行為を行う、または行おうとすることは、 S2 : 乱暴な行為 に分類されます。
まとめ
改めて、JFAによる分類順にて、整理してまとめます。
警告となる場合
記号 | 競技規則 |
---|---|
C1 : 反スポーツ的行為 |
シミュレーション、SPA、PA内でのDOGSO、手を使って得点しようとする、シャツを脱ぐ、シャツやマスクなどを被る、リスペクトに欠ける行為など |
C2 : ラフプレー | 直接フリーキックとなる反則を無謀に行う。 |
C3 : 異議 |
言葉または行動により異議を示す。 レフェリーレビューエリア(RRA)に入る。 (主審がレビューのために用いる)TVシグナルを過度に示す。 |
C4 : 繰り返しの違反 | 繰り返し反則する(「繰り返し」の定義に明確な回数や反則のパターンは、ない)。 |
C5 : 遅延行為 |
プレーの再開を遅らせる。 |
C6 : 距離不足 | ドロップボール、コーナーキック、フリーキックまたはスローインでプレーが再開されるときに規定の距離を守らない。 |
C7 : 無許可入 | 主審の承認を得ず、競技のフィールドに入る、復帰する |
C8 : 無許可去 | 主審の承認を得ず、意図的に競技のフィールドから離れる |
退場となる場合
記号 | 競技規則 |
---|---|
S1 : 著しく不正なプレー |
相手競技者の安全を脅かすタックルをすることや、過剰な力を用いてチャレンジすること、粗暴な行為をすること |
S2 : 乱暴な行為 | 身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールに向かうことでチャレンジしていないときに、相手競技者、または味方競技者、チーム役員、審判員、観客もしくはその他の者に対して過剰な力を用いる、粗暴な行為を行う、または行おうとすること |
S3 : つば吐き | 人をかむ、または人につばを吐く。 |
S4 : 得点機会阻止(手) ハンドの反則によるDOGSO |
ハンドの反則を行い、相手チームの得点または決定的な得点の機会を阻止する(自分のペナルティーエリア内でゴールキーパーが手や腕でボールに触れた場合を除く) |
S5 : 得点機会阻止(他) その他の反則によるDOGSO |
フリーキックで罰せられる反則を行い、全体的にその反則を行った競技者のゴールに向かって動いている相手競技者の得点または決定的な得点の機会を阻止する。 |
S6 : 暴言 | 攻撃的な、侮辱的な、もしくは下品な発言をする、または行動をとる |
CS : 警告2回 | 同じ試合の中で2つ目の警告を受ける。 |
(分類記号不明) | ビデオオペレーションルーム(VOR)に入る。 |
これらの基準に基づいてではありますが、もちろん最終的には主審の判断で、警告や退場の懲戒罰が行われます。
サッカー観戦の際にお役に立てば幸いです。