日本サッカー協会は、2024年5月23日、サッカー競技規則2024/25の改正について通達しました。
サッカー競技規則2024/25でのPKルールの変更点は次の2点です。
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PK時のボールの置く位置
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キッカーがボールを蹴る前に他の選手がペナルティーエリアに侵入した場合のルールの変更
当ブログでは2023年にPKのルールをまとめた記事を紹介したのですが、今回の改正を踏まえ、当時の記事を整理し、PKのルールをもう少しすっきり解説しようと思います。
PKはいつ、どんな時に行われるのか?
守備側チームがペナルティーエリア内でファウルを犯したとき、攻撃側チームにPKが与えられます。
PKと判定したとき、主審はペナルティーマークを指して笛を吹きます。
ここで、ペナルティーエリアを示すラインは、ペナルティーエリア内と見なします。下の写真で、GKはペナルティーエリアのライン上でファウルをしていますが、ライン上は「中」なので、PKが与えられます。
PKかどうかはVARの介入対象
VARが介入する事象は、次の4つに関する場合と決められています。
(1) 得点かどうか
(2) PKかどうか
(3) 一発退場かどうか(2枚目の警告は該当しない)
(4) 警告・退場の人間違い
PKを与える/与えないに関して「はっきりとした、明白な間違い」または「見逃された重大な事象」があった場合には、VARが介入します。
PKを行うときのルール
PKのキッカーは特定されなければならない
PKでは「誰が蹴るか」を明らかにしなければなりません。「誰が蹴るのか分からないまま、突然ある選手が蹴る」ことは認められていません。
槙野選手がボールをセットした後、後ろを向いている間に佐藤選手が蹴ったというこのPKシーン、ご存知の方は多いと思います。
この得点は認められてしまいましたが、後日、Jリーグは競技規則の適用ミスを認めました。本来ならこのプレーは、後から入ってPKを蹴った佐藤選手を警告し、ゴールに入ったかどうかに関係なく、清水ボールの間接フリーキックで再開となります。
PK時のボールの置く位置(サッカー競技規則2024/25の改正点)
ボールは、ペナルティーマークの中心にボールの一部が触れるか、かかっている状態で静止していなければなければなりません。条件を満たしていれば、ボールはゴール方向に対して前後左右どの方向にも置くことができます。
ゴールキーパーはゴールライン上にいなければならない
ゴールキーパーは、ゴールポストやクロスバー、ゴールネットに触れず、キッカーに面して、ゴールポストの間のゴールライン上にいなければなりません。そして、蹴られる瞬間まで、少なくとも片足の一部がゴールラインに触れているか、ゴールラインの上(空中でも可)、または後方に位置させておかなければならないと定められています。
キッカーとゴールキーパー以外の選手がいる位置は限定
攻撃側・守備側に関わらず、PKのキッカーとゴールキーパー以外の選手は、次の場所にいなければなりません。
下の図の赤で示した場所が、キッカーとゴールキーパー以外の選手が立ってはいけない場所になります。PKが蹴られるまでにこの場所に侵入すると、PKやり直しになる場合があります(詳しくは後述します)。
助走完了後にフェイントをしてはいけない
キッカーは、助走中はフェイントをしてもかまいませんが、ボールを蹴るためにフェイントをすることは認められません。不正なフェイントをした場合、キッカーに警告が示され、守備側チームの間接フリーキックで再開となります。
キッカーはボールを前に蹴らなければならない
キッカーが蹴る方向は「前」でなければなりません。斜め方向でも前方なら問題ありません。ボールが前方に動くのであれば、バックヒールでも認められます。
キッカーがボールに触れた瞬間からインプレー
競技規則には「ボールは、けられて明らかに動いたときインプレーとなる。」と書かれていますが、通常はボールに触れた瞬間が明らかに動いたときですから、PKが蹴られるまで、ゴールキーパーと、キッカー以外の選手は、定められた位置にいなければなりません。蹴られた後は、コーナーアークやペナルティーエリアの中に入って構いません。
キッカーは、他の競技者がボールに触れるまでボールにプレーできない
キッカーは、一度ボールに触れたあとは、他の選手がボールに触れるまでボールに触れることができません。例えば「PKをドリブルする」というようなことはできません。
余談ですが、以上のことから、このトリックはルール上可能です。
PKで反則が起こったら?
サッカー競技規則には、「PKのときに反則があってこうだったらこうする」という対応の一覧をまとめた「要約表」というものがあります。反則が起こったときの対応は、これを見るのが一番分かりやすいです。
近いうちにJFAホームページにサッカー競技規則2024/25のPDF版が公開されるので、そうなれば本物が確認できると思うのですが、取り急ぎ、JFAから公開された情報をもとに私が独自に作ってみました(読みやすさを意識して、あえて競技規則公式では用いていない表現を使っています)。
PK時に競技者が侵入したときの対応(サッカー競技規則2024/25の改正点)
キッカーやゴールキーパー以外の競技者が、PKが蹴られる前にペナルティーエリア内に侵入した場合の対応について、サッカー競技規則2024/25の改正では大きく変更が行われました。
PKが蹴られる前にペナルティーエリア内に「侵入」することは、もちろん認められていません。しかし、「侵入」があったからといってそのすべてを反則としてPKをやり直しにする対応は、合理的でない場合もあります。
今回の改正では、
- PKがそのまま決まったのなら、「侵入」自体は得点には直結していないのだから得点として認めていいだろう
- しかし、「侵入」したことでその選手が何らかの「利益」を得たときには、間接FKやPKやり直しとして対応しよう
という考え方で競技規則に整理されました。
攻撃側競技者の侵入
PKが蹴られる前に攻撃側の選手が侵入し、GKやその後の得点機会に影響があった場合は、
- ボールがゴールに入った場合:PKやり直し
- ボールがゴールに入らなかった場合:主審がプレーを停止し、守備側チームの間接フリーキックで再開
となります。そうでない場合は結果がそのまま生かされ、プレー続行となります。
守備側競技者の侵入
PKが蹴られる前に守備側の選手が侵入し、キッカーやその後の得点機会に影響があった場合は、
- ボールがゴールに入った場合:得点
- ボールがゴールに入らなかった場合:PKやり直し
となります。そうでない場合は結果がそのまま生かされ、プレー続行となります。
ゴールキーパーの反則
例えば、PKが蹴られる前にゴールラインより前に両足を出した場合などです。
- ボールがゴールに入った場合:得点
- ボールがゴールに入らなかった、またはクロスバーやゴールポストに当たって跳ね返った場合:ゴールキーパーの反則が明らかにキッカーに影響を与えたときのみ、PKやり直し
- ボールがゴールキーパーにセーブされた場合:PKやり直し
かつてはPKやり直しになる場合は、併せてゴールキーパーが警告されましたが、現在は、一度目のやり直しの時は主審から注意を与え、それ以降のやり直しから警告となります。
キッカーの反則など
次のような場合は、ゴールに入ったかどうかに関わらず、守備側チームの間接フリーキックで再開となります。
- PKを後方に蹴る
- キッカーの助走完了後に、ボールを蹴るためにフェイント(キッカーに警告)
- 特定されたPKのキッカー以外の選手がPKを蹴る(蹴った選手に警告)
まとめ
2024/25の競技規則改正で、PK時に競技者が侵入したときの対応については、VARによるチェックの影響もあってか、合理的な内容に改められましたが、そもそもゴールキーパーがPKが蹴られる前に両足を前に出したり、攻撃側も守備側も、フィールドプレーヤーが「侵入」していいことは何もありません。
PKは得点に直結する重大な場面です。選手も観客も、正しくルールを知っておくことが大切です。