
今回は、2025年10月4日、明治安田J1リーグ第33節 浦和vs神戸戦の、ハンドの判定に関する2つの事象を取り上げます。浦和vs神戸戦って、やっぱり何かが起こる試合なんでしょうか。
シーン1 37分57秒 ハンドでPKの判定
まずはリプレイから見てみましょう。
荻原の手に当たったことで(恐らくは副審2からの助言で)主審はファウルと判定し神戸にPKを与えました。
しかし、このときの手にボールが当たるまでの状況について、浦和からは「いわゆる室屋案件」なのでノーハンドではないかとの主張があります。
室屋案件とは
選手がキックやトラップなどの意図的なプレーをした直後にたまたま手に当たっても、ノーハンドと判定することです。
ジャッジリプレイにおいてFC東京の室屋選手のプレーを例に上川徹さんが解説したことから、この事象の通称として使われるようになりました。
▼こちらの動画の4:58~が室屋案件の解説です
ここで、意図的なプレーとは、競技者がボールをコントロール下において、次のプレーができることを言います。
- ボールを味方競技者にパスする
- ボールを保持する
- ボールをクリアする(例えば、ボールをけって、またはヘディングして)
逆に、意図的でないプレーとは、例えば
- パスやシュートをブロックして跳ね返ったボール(ディフレクション)が不自然な位置にある手に当たった
- スライディングタックルをしようとしたときに、支え手にボールが当たった
といったことが該当します。
ちなみに、プレーが意図的かどうかを考える上での指標として、IFAB(国際サッカー評議会)からは、オフサイドに関する通達*1ではありますが、次のような基準が示されています。
競技者がボールをコントロール下に置いていたことで、結果的に「意図的にプレーした」ことを示す指標として次の基準が適切に使われるべきである。
- ボールが長く移動したので、競技者はボールをはっきりと見えた
- ボールが速く動いていなかった
- ボールが動いた方向が予想外ではなかった
- 競技者が体の動きを整える時間があった、つまり、反射的に体を伸ばしたりジャンプせざるを得なかったということでもなく、または、かろうじてボールに触れたりコントロールできたということではなかった
- グランド上を動いているボールは、空中にあるボールに比べてプレーすることが容易である
荻原の事例は「意図的なプレー」か?

クロスボールをブロックするために足を出したので、手に向かって飛んできたボールはディフレクション。つまり、意図的なプレーをしたボールが直後に腕に向かって飛んできたとは解釈できません。また、肩より高い位置に腕を上げているので、不自然に腕を広げて大きなバリアを作っているという解釈をされるリスクが高くなります。
このようなことから、この事例は室屋案件には当てはまりません。ハンドの反則とした主審の判断は適切であると考えます。
シーン2 44分48秒 ノーハンドの判定
残念ながら、DAZNのハイライト動画には当該シーンが含まれていません。
状況はこのように、金子がペナルティーエリア中央に出そうとしたボールが直接、本多の腕に当たりました。

ハンドの反則のルール
ハンドの反則のルールは、サッカー競技規則2025/26の第12条にこのように書かれています。
この事象では、本多選手の腕にボールは確実に当たっていますが、本多選手は、腕をボールの方向に動かしているようには見えません。また、手や腕で体を不自然に大きくしてもいません。腕がその位置になかったとしても、実際のプレーで直後に起こったように、金子選手から出たボールは本多選手の体に当たっていただろうと想像します。
このようなことから、この事象はハンドの反則には当たらないと考えます。
直前でハンドでPKの判定があり、さらにDAZNの中継内で松木安太郎さんが「これは(OFRで)見てもいいな」という発言があったことで、浦和のサポーターはノーハンドという判定にかなり不満を感じていたようですが、このように振り返ってみると、この判定も適切だったと考えます。
まとめ
結論1 荻原のハンドは、ディフレクションのボールが当たったので「室屋案件」には該当せず、確かにハンド。
結論2 本多のノーハンドは、腕をボールの方向に動かしておらず、手や腕で体を不自然に大きくしてもいないので、確かにノーハンド。
というわけで、主審の判定は、どちらも適切だったというのが私の感想です(ちなみに、公言していますが私は浦和サポーターです)。
浦和のサポーターとしては不満のたまる前半だったわけですが、後半に入ってすぐ得点が入り、最終スコアは1-0で浦和の勝利でした。結果が勝ちだったのであまり荒れずに済んだ…という言い方はなんですが、ハンドに関する判定も、冷静に受け止められる雰囲気になったような気がしています。
競技者の手や腕にボールが触れることのすべてが、反則になるわけではありません。そして、それゆえにハンドかどうかを見極めるのは非常に難しくなっています。楽しくサッカーを観戦するためにも、こういうことをきっかけにルールをきちんと理解していきましょう!
