numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

「大谷ルール」こと先発投手兼DHルールをできるだけ分かりやすく解説

今回は、公認野球規則5.11(b)、通称「大谷ルール」こと先発投手兼DHルールについて解説します。

すでにいろいろな解説記事がありますが、できるだけ分かりやすく、ただしルールである公認野球規則に基づいて解説しようと思います。

そもそもDHとは?

DH (Designated Hitter) とは、日本語では指名打者といい、攻撃時に投手の代わりに打席に立つ、攻撃専門の選手のことです。指名打者となった選手は、守備をする必要がなく、攻撃のみに専念することができます。

野球ではルール上、投手以外の野手にDHを適用することはできず、言い方を変えると、DHは投手の代わりにしか打席に立つことができません。

DH制度に関するルールについてはこちらを。
num-11235.hateblo.jp

規則改正により、「大谷ルール」が誕生!

日本の野球のルールブックである「公認野球規則」の原典は、アメリカのMLB機構が定めている「Official Baseball Rules」(以下、OBR)です。基本的にOBRが改正されると、その内容が翌年日本の公認野球規則に反映されるサイクルになっています。

さて、2022年のOBR改正で規則5.11(b)として次のようなルールが定められました。

大谷ルール こと 規則5.11(b) のポイント

ポイント1 1人の選手が、先発投手とDHを兼任できる

ポイント2 兼任した場合、その選手は「投手」と「DH」で別々の2人と考える

ポイント3 この選手が投手を降板しても、DHとしては引き続き出場できる

ポイント4 この選手がDHを交代しても、投手としては引き続き出場できる

注意点 このルールは先発投手にのみ適用。試合中に投手がDHを兼任したり、DHが投手を兼任したりすることはできない

ポイント1 1人の選手が、先発投手とDHを兼任できる

2021年まで、先発投手と指名打者はそれぞれ別の選手が打順表に記載され、先発投手が打席に立つためにはDH制を解除しなければなりませんでした。

しかし、この改正によって、試合開始時に1人の選手が「先発投手」と「DH」を兼任することが認められるようになりました。

ポイント2 兼任した場合は、「投手」と「DH」で別々の2人と考える

同じ選手の名前を「先発投手」と「DH」として試合前に提出する打順表に記載することができます。

つまり、打順表にDHとして氏名を記載した上で、さらに先発投手の欄にも同じ氏名を記載することとなります。

ポイント3 投手を降板しても、DHとしては引き続き出場できる

この選手が先発投手を降板した場合、その試合ではこれ以降、投手として出場することはできなくなりますが、引き続きDHとして打席に立つことができます。

ポイント4 DHを交代しても、投手としては引き続き出場できる

DHに代打や代走が送られた場合、その試合ではこれ以降、DHとして出場することはできなくなりますが、引き続き投手として試合に出場することができです。

あくまでも先発投手に対してのみのルール!

大谷ルールは試合開始時に限って適用できるルールです。打順表に投手とDHを別の選手で記載した場合、その試合で大谷ルールは使用できなくなります。

試合中に投手のDH兼任や、DHの投手兼任はできない

例えば、試合中にDHに代打として投手を送ってDHを兼任させることはできません。実際に行うと、DHが試合を退いてDH制解除となります。

また、試合中にDHで登録している選手を救援投手として送って、投手を兼任させることもできません。これも実際に行うと、DHが守備位置に就いたこととなって、DH制解除となります。

投手とDHを同時交代させて1人の選手を指名することもできない

試合中にDHと投手を同時に交代させ、1人の選手をDHと投手の両方に就かせることもできません。実際に行うと、DH制解除となってその選手が投手として打順に入ることとなります。

所属チームにもメリットが

このルールが適用される選手は、打順表では別々の2人として扱われますが、ベンチ入りする上では試合に出場できる選手枠を1人で済ませることができます。よって、チームはその分ベンチ入りできる選手を1人多くすることができます。

メジャーリーグMLB)では、アクティブ・ロースター26人枠のうち、投手は最大13人まで登録可能となっていますが、大谷選手は投手の13人枠ではなく二刀流選手として登録されているため、ドジャースはその分、投手枠でのベンチ入り選手を増やすことができています。

大谷翔平選手以外でも大谷ルールは適用できるの?

もちろんできます。しかし、大谷ルールを適用して出場する選手には、以下のような能力が求められます。

  • 先発投手として登板できる投手としての能力
  • 他の選手を控えに回してでも起用したい打撃力

要するに、投手としても打者としても圧倒的な能力がなければ、「大谷ルール」を活用して出場させることは難しいでしょう。

 

なお、日本の公認野球規則では【5.11注】に

【5.11注】 我が国では、指名打者ルールについては、所属する団体の規定に従う。

とあるため、DH制を採用しているかどうかや「大谷ルール」が適用されるかどうかについては、所属団体や大会規定などでご確認ください。