numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

ボーク→牽制悪送球!一塁走者は三塁まで進んでいいの?

2024年6月23日の巨人対ヤクルトの試合で、ボークの判定にも関わらず、一塁走者が三塁まで進むというプレイがありました。

ボークなのに一塁走者が三塁へ?そんなことってあるんでしょうか。

ルールに基づいてこのプレイを説明します。

ボークって何?何をしたらボーク?

塁上に走者がいるときの、投手の反則行為です。ルールには13項目の規定があり、そのどれかに該当すると審判員が判断すると、投手を指差して「ボーク」と宣告します。

ボークが宣告されると、塁上の全ての走者がアウトにされる恐れなく1つ進塁します。

▼何をしたらボークが宣告されるのか、詳しくはこちらで。

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ボークはボールデッドでは?

野球をある程度知っている人ならきっとこう思いますよね。

確かに、ボークが宣告されるとボールデッドになるのですが、宣告した時点で直ちにボールデッドになるわけではありません。

ボークを宣告するとき、審判員のジェスチャーは一般的にはこうなります。

まず「ボーク」を宣告し、次に「タイム」をかけます。タイムが宣告されて初めてボールデッドになります。

しかし、ボークを宣告した後、すぐにタイムがかからないことがあります。

それは、今回のケースのように、ボークの宣告があったときに投手が投球や送球をしたため、投手の手からボールが離れ、ボールが動いているときです。

この場合、捕手や野手がボールを捕るまで(打者がボークにも関わらず投球を打った場合はそのプレイが一段落するまで)、タイムがかかりません。

公認野球規則 6.02(a) ペナルティ

(a)項各規定によってボークが宣告されたときは、ボールデッドとなり、各走者は、アウトにされるおそれなく、1個の塁が与えられる。

ただし、ボークにも関わらず、打者が安打、失策、四死球、四球、死球、その他で一塁に達し、かつ、他のすべての走者が少なくとも1個の塁を進んだときには、このペナルティの前段を適用しないで、プレイはボークと関係なく続けられる。

【規則説明1】
投手がボークをして、しかも塁または本塁に悪送球(投球を含む)した場合、塁上の走者はボークによって与えられる塁よりもさらに余分の塁へアウトを賭して進塁してもよい。

今回のプレイを振り返ってみると……

① 投手が一塁に送球する前に、投球動作の中断があり、ボークが宣告されました。

審判員だけでなく、一塁走者もベースコーチもボークを指摘しています

② このとき、一塁に投げた牽制球が逸れました。

ボールは外野のほうまで転がってしまいました。

③ これを見た一塁走者は二塁を回りました。

ボークと関係なくプレイが続けられることになります

④ ライトから三塁に送球が来て……

佐々木選手の身体に当たりました

⑤ 三塁セーフでした。

三塁セーフ!

⑥ そのあとにタイムがかかりました。

タイム!

③の一塁走者が二塁を蹴った時点で、プレイはボークと関係なく続けられることになります。このルール【規則説明1】は、言い換えると、

ボークが宣告されたら、全ての走者は1つ分進塁でき、
プレイの状況によってはそれ以上の塁を狙ってもいいけれど、
そこから先は走者の自己責任。アウトになっても知らないよ。

ということです。

実際、一塁走者の佐々木選手は、送球が自分の身体にあたってさらに逸れたと思い、一瞬三塁を回って本塁方向に行きかけました。このときに野手に触球されていたら、当然アウト。さかのぼってボークの適用で二塁に戻されることはありません。

まとめ

一般には、ボークはボールデッドになるプレイなのですが、「審判員がタイムをかけるまではプレイが続く」と認識しておいたほうが間違いありません。

悪送球や暴投(ワイルドピッチ)・捕逸(パスボール)などの場合はプレイが継続になり、走者はアウトを覚悟で進塁することもできますから。今回のプレイを機に、ぜひ覚えておきましょう!