
サッカーの試合で決着がつかないとき、最後に行われるのがPK戦(ペナルティーシュートアウト)です。
試合中のPKとは異なり、PK戦には立ち位置や人数調整、やり直しの条件など、競技規則に基づいた独自の手続きが定められています。
「何人で蹴るのか」「ゴールキーパーが退場したらどうなるのか」「なぜ今やり直しになるのか」──
テレビ観戦や現地観戦で、こうした疑問を感じたことがある人も多いのではないでしょうか。
この記事では、PK戦の基本的な流れとルールを、試合中のPKとの違いも踏まえて整理します。競技規則に基づいた解説と図解を通して、PK戦という特別な場面で何が起きているのかを分かりやすく解説します。
- PK戦とは?試合中のPKとの違い
- PK戦を開始するまでの流れ
- PK戦の基本ルールと進め方
- PK戦の選手・審判の立ち位置【図解】
- PK戦で反則が起きたときの扱い
- 観戦が分かりやすくなるポイント(PK戦のTips)
- 終わりに
PK戦とは?試合中のPKとの違い
PK(ペナルティーキック)とは、守備側チームがペナルティーエリア内で直接フリーキックとなる反則を犯したとき、攻撃側チームに与えられるものです。

PK戦(「PK合戦」「PK方式」とも)とは、後半終了時点で、あるいは延長戦を行っても決着がつかなかった場合に、両チーム5人ずつのキッカーが交互にPKを蹴って、ゴールが決まった数で決着をつける方法です。
サッカー競技規則において、英語では「Penalties (penalty shoot-out)」と記載されていて、国際映像だとPSOと略語表記されます。
実はサッカー競技規則でこの用語になったのは2023/24からで、それまで競技規則には「Kicks from the penalty mark - KFPM」と記載されていました。また、日本語訳では「ペナルティーマークからのキック」とされていました。
IFABでは2023/24改正の時にこの表記を「時代遅れであり、現在あまり使われていない」として変更し、日本語訳も2023/24から「PK戦(ペナルティーシュートアウト)」に変更されました。
PK戦に至るまで
後半終了時点で、あるいは延長戦を行っても決着がつかなかった場合に行われます。
前半 ➡ 後半 ➡ 延長前半 ➡ 延長後半 ➡ PK戦
PK戦を開始するまでの流れ
コイントスと使用するゴールの決定
PK戦開始前のコイントスは、2回行います。
1回目は、どちらのゴールを使うか。

2回目で、PK戦の先攻後攻を決めます。

使うゴールについては、安全上の理由や、ゴールあるいはフィールドの表面が使用できなくなった場合には、コイントスを行わずに主審が自ら決定したり、PK戦の途中でも主審の判断で変更したりすることがあります。
実際にPK戦の途中でゴールが変更された珍しい事例が、次の試合です。
AFCアジアカップ2004 準々決勝 日本対ヨルダン戦では、PK戦に入って先攻の日本が2人蹴ったところで、日本のキャプテン宮本選手が、主審にペナルティーマーク付近が荒れていてきちんと蹴られないと伝え、主審が使用するゴールを変更したということがありました。
PK戦開始前の人数調整(退場者がいる場合)
PK戦開始前に負傷者や退場者によって両チームの人数が異なる場合、
多い方のチームの人数を減らし、両チームが等しい人数に合わせます。
例えば下の表のように、延長後半終了時点でBチームに退場者が1人いる場合、PK戦を始める前に、Aチームで1名、ベンチに残す選手を決め、10人対10人でPK戦を行います。

この例では、Aチームの背番号5番の選手がベンチに残ることになりました。
PK戦開始後の人数変動の扱い(負傷・退場が起きた場合の調整)
※ここからは、PK戦が始まった後に人数が変動した場合の扱いです。
PK戦開始後に負傷・退場などがあって人数が変化した場合も、公平を期すために、多い方のチームの人数を減らし、その都度同じ人数にします。一方のチームが7人未満になった場合でも、主審はPK戦を中止しません。
ゴールキーパーがプレーできなくなった場合の扱い
PK戦が始まる前やPK戦の最中にゴールキーパーが負傷などでプレーを続けられなくなった場合、
選手数を等しくするために除外されていたフィールドプレーヤーをゴールキーパーとして復帰させ、負傷したゴールキーパーと入れ替えることができます。
また、そのチームが大会規定で定められている交代枠を使い切っていなければ、
控え選手(ゴールキーパーを含む)と交代することも認められます。

ただし、交代や入れ替えによって退いたゴールキーパーは、それ以降PK戦に参加できず、キッカーを務めることもできません。
PK戦の基本ルールと進め方
5人ずつのキックと決着のつき方
両チームは、PK戦出場メンバーの中から5人ずつ選手を選んで、交互にPKを蹴ります。
ただし、5人が蹴る前に決着がつくこともあります(例1、例2)し、5人蹴っても差がつかない場合は6人目以降にもつれ込むこともあります(例3)。

サドンデス方式
6人目以降にもつれ込む場合は、「サドンデス」と呼ばれ、それまでにPKを蹴った5人以外の選手が蹴ります。どちらか一方のチームがPKを成功し、もう一方のチームが失敗するまでPK戦を続けることになります。
2巡目に入る場合
「サドンデス」になって11人目でも勝負が決しない場合は、2巡目に入ります。2巡目の順番は1巡目と変えても構いません。
PK戦の選手・審判の立ち位置【図解】
PK戦では、キッカー以外の選手や審判にも細かな立ち位置の規定があります。まずは試合中のPKと共通する配置から確認します。
試合中のPKと共通する立ち位置
- PKを蹴るチーム(青)のキッカーはペナルティーマークの前に立ちます。
- 守るチーム(赤)のゴールキーパーはゴールライン上に立ちます。
- 主審は、ゴールキーパーの飛び出しやキッカーのフェイントなど、反則を確認できる位置に立ちます。
- 副審の一人はゴールエリアとゴールラインの交点に立ち、ゴールキーパーの飛び出しやボールがゴールラインを越えたかどうかを確認します。
PK戦特有の立ち位置

この図から分かる主なポイントは次のとおりです。
- キッカー側のゴールキーパーは、ペナルティーエリアのラインとゴールラインの交点のところで待機します。
- それ以外の出場選手は、センターサークル内で待機します。
- もう一人の副審はセンターサークル内に立ちます。
- 第4の審判員は、ピッチの外で選手やコーチを監視します。
PK戦で反則が起きたときの扱い
PK戦でのPKを蹴るときのルールは基本的に試合中のPKと同じです。ただし、PK戦では、キッカーは一度ボールを蹴ったら、再びボールをプレーすることができません。
やり直しになるケース(ゴールキーパーの反則)
ゴールキーパーは、ゴールポストやクロスバー、ゴールネットに触れず、キッカーに面して、ゴールポストの間のゴールライン上にいなければなりません。そして、蹴られる瞬間まで、少なくとも片足の一部がゴールラインに触れているか、ゴールラインの上(空中でも可)、または後方に位置させておかなければならないと定められています。
ゴールキーパーが反則を行ってキッカーがその影響を受けてPKを失敗した場合、1回目は注意、2回目からは警告(イエローカード)となり、PKは蹴り直しになります。
やり直しにならないケース(キッカーの反則、両者の反則)
キッカーは、助走中はフェイントをしてもかまいませんが、ボールを蹴るためにフェイントをすることは認められません。不正なフェイントをした場合、キッカーは警告(イエローカード)となり、PK失敗と扱われます。
なお、ゴールキーパーとキッカーの両方が反則をした場合も、結果はPK失敗と記録されます。
PK戦中の警告・退場の扱い
試合中の警告はPK戦には引き継がれません。
試合中に警告を1回受けている選手が、PK戦の最中に再び警告を受けても退場にはなりません。
ただし、当該試合において「警告2回」として記録されます。
PK戦の最中に、同一選手が警告を2回受けた場合は退場となります。
特にゴールキーパーが退場となったときは、PK戦に出場している選手の中からゴールキーパーの代役を立てなければなりません。
PK戦の最中に選手交代を行うことはできないため、たとえ交代枠が残っていても、選手交代で控えゴールキーパーを出場させることはできません(※ゴールキーパーの負傷による交代は除く)。
例)PK戦中にゴールキーパーが2度の警告で退場となった場合
→ フィールドプレーヤーがゴールキーパーを代行し、両チームのキッカー人数をそろえる
観戦が分かりやすくなるポイント(PK戦のTips)
副審はPK戦で何を見ているのか
PK戦では、副審がゴール付近に立って細かく動きを確認しています。
これは単にゴールかどうかを見るためだけではなく、主審を補助する役割を担っています。
- ゴールキーパーがラインを越えて前に出ていないか
- ボールが完全にゴールラインを越えたか
- 雨で水たまりがあるときは、ボールが流れてもゴールラインを越えれば得点なので、最後まで見る必要がある
といった点を、副審が至近距離でチェックしています。
副審の立ち位置を知っていると、「なぜ今、主審ではなく副審が合図したのか」が分かるようになります。
なぜ選手はセンターサークルに集まるのか
PK戦では、キッカー以外の出場選手はセンターサークル内で待機します。立っていても座っていても構いませんが、横一列になって肩を組んで応援していることが多いです。
なぜセンターサークル内で待機すると決まっているのか。
これは単なる“待機場所の指定”ではなく、
- キッカーへの不当な干渉や妨害の防止
- ゴール前への乱入・抗議の防止
- 審判が全選手を一括で管理できる
という目的があります。
PK戦でも変わらない共通ルール
ゴールキーパーは、蹴られる瞬間まで片足の一部がゴールライン上(空中でも可)または後方にある必要があります。
また、キッカーは助走中のフェイントは認められますが、ボールを蹴る瞬間のフェイントは反則となります。
終わりに
PK戦は、競技規則上も細かな手続きが定められている特別な場面です。PK戦を行うときは、両チームが死力を尽くして延長戦まで戦っても決着がつかず、しかし次のステージに進むチームや優勝チームを決めるために行う最後の戦いとなるため、勝負以外のことで選手の集中が乱されるようなことがあってはいけません。
一方、PK戦自体はそうそう行わるものではないため、競技規則にどのように規定されているか、うっかり忘れてしまうことも起こりえます。
だからこそ、きちんと競技規則を確認し、規則に基づいてPK戦を進めてほしいと思います。
なお、今回の記事はPK戦についての解説でしたが、試合中のPKのルールについては以下からどうぞ。