2024年3月30日、J1リーグ 名古屋対横浜FM戦で、横浜FMが選手交代の準備をしていたタイミングで渡辺選手が足を痛め、交代せざるを得なくなりました。この間、名古屋側は2人の選手交代が認められたのに対し、横浜側は選手交代が認められず、負傷で渡辺選手がピッチを離れたため、一時的に11人対10人で試合が再開されました。
この状態で名古屋にゴールが生まれたため、交代が認められなかった横浜のキューウェル監督は、主審に対して執拗に異議を示し、イエローカードが提示される事態となりました。
選手交代の場面で何が起こったのか、なぜ交代ができなかったのかについて、DAZNの中継映像を頼りに、私なりに考察してみたいと思います。
何が起こったのか
当該シーンは74:20ごろからになります。時系列でまとめます。
74:20 横浜 選手交代 第4の審判員が 交代ボードで16→4 を表示する。
74:40 横浜 チームスタッフが第4の審判員に、この交代を止めることを申し出る。ピッチ内で6番 渡辺皓太選手が足を痛めている。
75:32 名古屋 第4の審判員が 6→8 と表示した交代ボードを準備する。横浜の2人の交代選手が前に出てきている。
75:50 名古屋 選手交代 6→8、18→17 の2枚替えが行われる。
76:17 主審がホイッスルを吹く準備をしながら、第4の審判員の様子を確認している。耳に手を当て、コミュニケーションシステムで会話しているようにも見える。
76:21 横浜 キューウェル監督が主審に向かって「2」のハンドサインを送り、交代することを主張、ハーフウェーライン付近に2人の交代選手が立っている。副審1は手を横に振って、キューウェル監督に「だめ、だめ」と伝えている。
76:26 横浜 チームスタッフが第4の審判員に向かって「早くしてください!」、キューウェル監督が「Change! Hey!」などと主張する。
76:32 11人対10人で試合再開。この後、名古屋に同点ゴールが生まれた。
77:57 キューウェル監督が主審に対して執拗に異議を示したため、主審はキューウェル監督に警告、イエローカードを提示した。
なぜ交代ができなかったのか?
X(旧Twitter)の反応を見ていると、ポイントは、名古屋の交代が認められたのに、どうして横浜の交代が認められなかったのかというところにあるようです。
グランパスvsマリノスにおいて燃えそうな案件。
— 竹中玲央奈 / Reona Takenaka (@reona32) 2024年3月30日
①グランパスが2枚、マリノスが1枚準備
②試合が止まったタイミングで渡辺皓太が負傷
③ここでマリノスは山根陸を用意し2枚交代をしようとする
④主審はこのタイミングで名古屋の交代は受理…
その理由について、中継映像を頼りに、私なりに考察してみたいと思います。
横浜FMは一度交代を取りやめた
横浜サポーターからは、交代自体は取りやめていないという主張もあるように思われますが、渡辺選手が傷んでいるのを確認した横浜のチームスタッフは、交代を待つように第4の審判員を制止しています。
渡辺選手の負傷により、選手交代の計画に変更が生じたと推察されます。
選手交代には手続きが必要
75:50ごろに名古屋の選手交代が行われたとき、横浜の2人の交代選手はハーフウェーライン付近にいて、すでに準備ができているように見えました。しかし、
横浜の選手交代→(待ったがかかる)→名古屋の選手交代
と対応していた第4の審判員は、ここから改めて横浜の交代のための手続きを行わなければなりません。
- チームから出された(新たな)交代用紙の内容を確認し、メンバー表と照合する。
- 交代の内容を主審に伝える。
- 交代ボードを準備する。
- 交代選手の用具(シンガードやスパイクなど)を確認する。
といったことです。
手続きが済んでいた交代はできたのでは?
横浜はこの時までにすでに2回の交代を行っています。したがって(もともと横浜が2枚替えを予定していたかは不明ですが)、手続きが済んでいた「16→4」加藤選手から畠中選手への交代だけでも認めたとすると、これが3回目、最後の交代を行ったことになります。
すると、その時点では手続き未完了だった「6→28」渡辺選手から山根選手への交代はできなくなってしまい、試合終了まで横浜が10人で試合をすることになってしまいかねません。
そのため、第4の審判員は、3回目の選手交代で2枚替えができるように急いで「6→28」の交代手続きも完了させようとしていたはずです。
しかし、横浜の新たな交代の対応までにかなりごたごたしていたので、実際のところ、新たな交代手続きには手が回らない状況だったと推察します。
横浜側は「早くしてください!」とせかしていましたが、メンバー表との照合や、用具の確認は審判員でないとできないことだとしても、せめて交代ボードの準備は誰かが手伝っていたら、状況は違ったかもしれません(推測です)。
横浜側が交代を望んでいたのに、主審は試合再開を待てなかったのか?
このごたごたした交代手続きで、主審が試合再開する時点ですでに2分経過していました。選手交代で2分費やすのはかなり長いほうだと私は思います。Jリーグの試合は興業の要素もあるわけですから、観客(サポーターや視聴者)を長く待たせるわけにもいきません。
また負傷者が出たことで一時的に11人対10人で戦うこと自体は、サッカーではよくある話です。
結果として同点ゴールが生まれてしまったのでいろいろ言いたくなる気持ちは分かりますが、「交代手続きが完了できていないなら、試合を再開させる」と主審が判断したことは、私は否定されるものではないと思います。
交代できなかった理由、私はこう考える
- 第4の審判員が横浜の選手交代を行おうとしたところ、そのときになって選手が負傷したのがわかったことで、チームスタッフから交代を待つように言われた。
- そのため、第4の審判員は、交代手続きを完了できている名古屋の選手交代を先に実施した。
- 名古屋の選手交代後、第4の審判員は改めて横浜の交代手続きを行おうとしたが、これに時間がかかった。2人の交代選手はハーフウェーラインにスタンバイできていても、手続きが終わっていなければ交代させることはできない。
- 交代手続きがまだ終わっていないと聞いた主審は、中断時間がだいぶ長くなっていることもあって、次にプレーが切れたときに横浜の選手交代を行うことにして、11人対10人の状態で試合を再開した。
不幸にも、この直後に得点が生まれてしまい、横浜側にとっては納得がいかない結果となってしまったと思いますし、その気持ちは理解できます。しかし、審判団の対応自体はルール的に間違ったものではなく、責められるものではないと私は思います。