numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

どうして守備妨害?中村と中田翔の一塁走路上での接触、判定を解説


2024年3月29日、ヤクルト対中日戦で6回裏、守備妨害が発生しました。

一塁手と一塁走者の接触によるものですが、X(旧Twitter)上では、「これは守備妨害なのか?」「どうして走者が戻されたのか?」「守備妨害がなかったら併殺が取れたのではないか?」といった意見がみられたので、ピックアップすることにしました。

このプレイにどういうルールが適用され、なぜこの措置になったのかを解説します。

どういうプレイだったのか?

6回裏、ヤクルトの攻撃で一死満塁。代打・川端選手がファーストゴロを打ちました。

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打球は一塁手の中田選手の正面に飛び、中田選手が捕球体勢に入ったところで一塁走者・中村選手と接触。中田選手は送球できなくなりました。

中田選手は打球を拾い直して、一塁ベースカバーに入った勝野投手にトス、一塁塁審の福家さんは中村選手にアウトと川端選手にセーフを宣告し、タイムをかけました。

審判団協議後、球審の有隅さんは、「中村選手を守備妨害としてアウトにし、2死満塁としてゲームを再開します」と説明しました。

このプレイは守備妨害なのか?

守備妨害を定めたルールを確認してみましょう。

公認野球規則5.09(b) 次の場合、走者はアウトになる。

(3) 走者が、送球を故意に妨げた場合、または打球を処理しようとしている野手の妨げになった場合。

走者が守備妨害が宣告される条件として、送球に対しては「故意に」という文言がついていますが、打球を処理しようとした野手の妨げになった場合については、「故意に」がありません。つまり、走者が打球処理の妨げになったならば、故意か偶然かは関係なく守備妨害が宣告されます。

走者の中村選手に悪意はない、かわいそうだという意見も見られましたが、野球には守備優先という考え方があります。そのことはルールにも定められています。

公認野球規則6.01(b) 守備側の権利優先
攻撃側チームのプレーヤー、ベースコーチまたはその他のメンバーは、打球あるいは送球を処理しようとしている野手の守備を妨げないように、必要に応じて自己の占めている場所(ダッグアウト内またはブルペンを含む)を譲らなければならない。

このような理由で、一塁塁審の福家さんは接触の瞬間に「守備妨害」を宣告しました。

ちなみに、DAZNの中継映像も確認してみると、二塁塁審の秋村さんも守備妨害を宣告していたことが分かります。

どうして得点が認められなかったのか?

審判団の協議中、場内では東京音頭が演奏されていましたし、デイリースポーツでも、「いったんは勝ち越し点が奪われたかに思われた」との記述なので、守備妨害でプレイが止まったという認識がなかった人は結構いたのでしょう。

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守備妨害が起こったときの攻撃側チームのペナルティは、次のように定められています。

公認野球規則6.01(a) インターフェアに対するペナルティ

走者はアウトとなり、ボールデッドとなる。

審判員が打者、打者走者または走者に妨害によるアウトを宣告した場合には、他のすべての走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻らなければならない。ただし、本規則で別に規定した場合を除く。

打者走者が一塁に到達しないうちに妨害が発生したときは、すべての走者は投手の投球当時占有していた塁に戻らなければならない。

今回は「打者走者が一塁に到達しないうちに妨害が発生したとき」です。そのため、すべての走者は投手の投球当時占有していた塁に戻されました。しかし、打者はすでに打撃を完了しています。このような時は、打者をバッターボックスに戻すことはできないので、打者走者となって一塁に進むことが認められます。

なお、「勝ち越し点が入った」という誤解が生じた理由について、私なりの考察ですが、守備妨害発生直後にタイムをかけなかったからだと考えています。本来、守備妨害が発生したらその時点でボールデッドです。一塁塁審の福家さんは、「守備妨害、一塁走者アウト」を宣告した後、打者走者にセーフではなく、両手を挙げたほうがよかったのではないでしょうか。

併殺は認められないのか?

そう思う気持ちも分からないではないですが、今回のプレイに限らず、守備妨害発生時点でボールデッドになっているというのが、野球規則を適用する上での基本的な考え方となります。

だからといって、併殺を阻止するためにわざと走者が守備妨害を行おうとするならば、妨害を行った走者と打者走者の両方をアウトにするルールも存在します。

公認野球規則6.01(a)

(6) 走者が明らかに併殺を行なわせまいとして故意に打球を妨げるか、または打球を処理している野手を妨害したと審判員が判断したとき、審判員はその妨害をした走者にアウトを宣告するとともに、味方のプレーヤーが相手の守備を妨害したものとして打者走者に対してもアウトを宣告する。この場合、ボールデッドとなって他の走者は進塁することも得点することもできない。

(7) 打者走者が、明らかに併殺を行なわせまいとして故意に打球を妨げるか、または打球を処理している野手を妨害したと審判員が判断したとき、審判員は打者走者に妨害によるアウトを宣告するとともに、どこかで併殺が行なわれようとしていたかには関係なく、本塁に最も近い走者に対してもアウトを宣告する。この場合、ボールデッドとなって他の走者は進塁することはできない。

このルールは、適用条件が「明らかに併殺を行なわせまいとして故意に」となっています。審判団協議の結果、今回のケースはこれを適用するような状況にはないと判断されたのでしょう。

守備妨害について詳しく知りたい方は…

過去に作成した記事で、守備妨害のルールをまるごと扱ったものがあります。

よろしければこちらもご覧ください。

num-11235.hateblo.jp