高校野球選手権神奈川大会決勝 横浜vs慶應の試合は、大熱戦でした。
この試合で非常に大きな話題となったプレイについて、今回は様々な批判もあるでしょうが、敢えて自分の意見を書くことにしました。
慶応が2点を追う9回無死一塁。セカンドゴロで4―6―3と渡って一塁セーフ、一死一塁と思われたが、二塁塁審は二塁セーフの判定。送球を受けた遊撃手が二塁ベースに触れていなかったという判定でした。
このときセーフになった走者が残っていたために、この後決勝点となる逆転3ランホームランが生まれ、慶応が優勝、甲子園に進むこととなりした。
このプレイの判定について、様々な意見が挙げられています。
今回のプレイは、ベースに触れたか触れなかったかだけの話なので、難しいルールはありません。
私の意見を端的に書いておくと、私は当該二塁塁審の判定を尊重します。すなわち、このプレイは「二塁塁審の判定に従って」、セーフというのが私の見解です。
この意見と異なる見解をお持ちで、しかもご自身が信じる見解以外の意見には聞く耳を持たない方は、どうぞ他のページにご移動ください。
以下、私の考えを書いていきます。こういう意見もあるんだなと思ってお読みいただけたら幸いです。
- なぜこの判定になったのか
- 見えていない?それなら審判失格?
- 審判の体制に疑問があると意見する人たちへ
- 仮にリクエスト出来たとして、それで解決か?
- ベースに足を当てた音が聞きとれなかった可能性
- 結局、誤審なのか?
- まとめに代えて
なぜこの判定になったのか
ネット上に様々なリプレイ映像が流れていますが、どれを見ても、足がベースに触れたかどうかははっきり分かりませんでした。触れているかもしれないし、触れていないかもしれない。
ちゃんとベース蹴ってます。ショートやっていたからわかる。
— ありえーる (@61uRnmoSzpt6WsP) 2023年7月26日
審判に見えないとか関係ない、見えないとこまで確認して判断するのが審判だから
確信がないのに多くの人が納得できないジャッジをしてはいけないと思う#緒方くん#高校野球#横浜#慶應 https://t.co/ByqKdCLohw pic.twitter.com/pFbkleOecy
しかし審判員は、リアルタイムのノーマルスピードで、このプレイを1回だけ見て判定します。そのとき、「わからない!」「微妙!」という判定はできない。分からなくても、覚悟ももってどちらかに決断するしかありません。そして、二塁塁審はこのプレイにおける判定の権限を持っていて、他に判定できる人はいません。
二塁塁審は「ベースタッグしたように見えない」と決断し、「セーフ、オフ・ザ・バッグ」と宣告したと考えます。
見えていない?それなら審判失格?
おそらく、審判講習会を受けたことがなく、塁審自体やったことのない方の意見と推察します。
まず、位置取りに問題はありません。走者一塁のときは、盗塁も想定し、二塁ベースから内野側に入って位置取るのがセオリーで、適切な位置取りであったと思います。また、棒立ちで立っていたのではなく、判定の瞬間に身体を動かすと目線がぶれ、かえって正しい判定ができなくなるから、プレイが起こる瞬間は、審判員は極力身体を動かさないのです。
審判の体制に疑問があると意見する人たちへ
などの意見が散見されます。
はっきりいいます。
アマチュアの、しかもたかが高校の部活の大会に、プロの興行と同じシステムを整えるなんてナンセンスです。
高額の費用をかけて、プロの審判員を雇い、リクエスト制度を維持するためのカメラを設置する必要が、果たしてあるのでしょうか。
人生をかけて高校野球をやっているという主張も見かけますが、そうはいっても所詮、高校の部活。興行でもなければプロ選手の育成機関でもない。アマチュア野球の、しかも全国大会に進むための地方予選です。
ほかの高校の部活の大会で、そんなことをしている例がありますか?高校サッカーにVARが入っているんですか?高校ラグビーにTMOが入るんですか?
また、その費用は誰が負担するのですか?全ての地方大会の1回戦から全ての試合に準備するのですか?決勝だけ?でも、こういう難しい判定は準決勝で起こるかもしれないし、準々決勝で起こるかもしれないし、もっと前の試合でも起こるかもしれません。結局すべての試合で必要になるのではないでしょうか。全国の全ての大会で、1回戦からプロの審判とビデオ判定のシステムを準備したら、いったいいくらかかるのか、想像もつきません。
そんなこと、費用対効果を考えても無理な話。未来ある高校生のためにそのシステムとプロの審判を雇う費用を出してくれるスポンサーがあってできる話です。
じゃあ注目カードだけ?優勝候補チームだけ?それこそ贔屓ですよね。全ての試合で同じような環境を整えるべきでしょう。
文句を言うだけ言っている方々は、「あなたが審判をやってみろ」とは言いませんが、せめて未来ある高校生のためにスポンサーになって、その費用を負担していただけるのでしょうか。はっきり言って高校野球の入場料収入程度で賄えるものではないですよ。
仮にリクエスト出来たとして、それで解決か?
この映像を、検証用のリプレイ映像と見立てて、仮にリクエスト検証を行ったとします。
#高校野球 #神奈川大会 #横浜高校 #慶應
— Well (@umabaka2000) 2023年7月26日
疑惑のシーン、スロー再生。 pic.twitter.com/tD8ftnFgXo
ビデオ判定の理念として、判定を覆すためには、映像に、「はっきりとした明白な間違い」あるいは「見過ごされた重大な事象」が映っていることが求められます。
触れていないという判断が「はっきりとした明白な間違い」といえるような映像が今回のリプレイ映像では確認できない。
つまり、この映像では当該二塁塁審の判定は覆すに足りません。何度も見ると、つま先が触れているように見えるかもしれないが、「何度も見て」それでも「かもしれない」としか言えない程度では覆せないのです。
一定の時間をかけてもなお明確に判定ができない場合は、元の判定を支持することとなっています。このプレイをビデオ判定のプロセスにかけても、結論は変わらなかっただろう、というのが私の考えです。
ベースに足を当てた音が聞きとれなかった可能性
これは考えられます。球場には22000人もの観客が入り、このプレイのときの歓声はものすごかったといいます。通常なら聞こえるはずのプレイの音(ベースに足が当たったときの音)が聞きとれなかった可能性は考えられます。
つまり、球場が静かだったら、あるいは判定は変わっていたかもしれません。
結局、誤審なのか?
真実がどちらなのか、確たる証拠となる映像が出てこないので、このプレイは「二塁塁審の判定に従って」、セーフというのが私の見解であり、誤審とは言えません。
誤審だと主張している人は、自分が思う結論と判定が異なることを「誤審」といって騒いでるにすぎません。
まとめに代えて
「○○選手だから、踏み外すはずがない」
「プロでもこういう時は、タイミングがアウトならアウトとみなすことになっている」
など、思い込みや噂(しかも周囲からの聞きかじり)で、自分の主張に都合がいいものだけを集めて人を中傷する人が非常に目につきます。
審判をしているとき、思い込みで判定するのが一番危険です。1つ1つのプレイについて見たままをジャッジし、余計なことは考えない。仮にミスがあったとしてもそれを引きずって、次のジャッジで埋め合わせをしようなどと考えると、それこそ判定ミスがさらなる判定ミスを呼ぶ展開になることを、審判員はよく知っています。
今回のプレイを判定できる権限は当該二塁塁審のみにあります。踏んだか踏んでないかでどうこう言ってももはや結果は変わらないのだし、ましてや、誹謗中傷など絶対に許されません。それよりも、このプレイの後に決勝ホームランを打った慶應義塾の選手を讃えてほしいと思います。
選手も審判員も精一杯やった結果で、グラウンド上の全ての人が全力を尽くした、ナイスゲームでした。慶應義塾高校、優勝おめでとうございます。