今回は、野球で監督や指導者はもちろん、選手もきちんと知っておかないと損をする、タイムプレイについて解説します。
得点に関わってくる重要なルールなので、ちゃんと知っていればチームに入るべき得点を失わずにすんだり、逆に相手の得点を阻止できたりします。
タイムプレイって何?
公認野球規則に「タイムプレイ」という単語は載っていません。よって通称の呼び名になりますが、審判業界でも用いることのある用語です。
タイムプレイに関するルールは、公認野球規則5.08(a)に記載されています。
公認野球規則5.08(a)
3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁に進み、かつこれに触れた場合には、その都度、1点が記録される。
【例外】 第3アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者(1、2にあたる場合は全走者、3にあたる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。
(1) 打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき。(5.09a、6.03a参照)
(2) 走者がフォースアウトされたとき。(5.09b6参照)
(3) 前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。(5.09c1・2、同d参照)
この規則の冒頭の部分に記載されている、「3人アウトになってそのイニングが終了する前に」が重要なキーワードになります。
このルール、言い換えると、
「3人アウトになってそのイニングが終了した後は、走者が正規に一塁、二塁、三塁を回って本塁に触れても、得点が記録されない」
ということです。
実際に得点が認められなかった場面を確認してみましょう
2023年5月18日の中日対阪神戦が参考になります。
8回裏中日の攻撃、二死一・二塁からです。(動画は2:12から)
打球はレフト線を破り、長打コースです。
二塁走者は余裕で本塁に到達できそうなので、三塁を回った後、本塁に到達する前に少しスピードを緩めています。
一方、打球を処理した左翼手は、三塁に送球しました。
三塁がクロスプレイになり、判定はアウトです。
すると、球審がバックネット方向(公式記録員の席があります)に向かって、両手を振って「ノーランスコア!(無得点)」を宣告しました。
ポイントは、一塁走者が三塁でアウトになった瞬間!
先ほどルールで説明した通り、
3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁に進み、かつこれに触れた場合には、その都度、1点が記録される
のですから、得点が認められるかどうかのポイントは、
3アウトの成立の瞬間
と
走者が本塁に触れる瞬間
のどちらが早かったか、になります。
ここで、3アウト成立の瞬間は、審判員がアウトを宣告したときではなく、アウトになるプレイが起きた瞬間、今回の場合は、走者への触球(タッグプレイ)が行われた瞬間となります。
タイムプレイが起きる瞬間、球審は走者が本塁に触れる瞬間と3アウトが成立する瞬間の両方が同時に見られる位置でプレイを見ていました。その結果、3アウトのほうが早かったので、球審は「ノーランスコア!」を宣告して得点を認めなかったのです。
もし二塁走者が途中で走塁を緩めていなかったら、得点が認められていた可能性、ありますよね。こういうことが起こることがあるので、2アウトのときは特に、本塁まで走塁の手を抜かないことを強くお勧めします。
タイムプレイではないけれど得点が認められなくなる【例外】の状況
先ほど紹介した公認野球規則5.08(a)の【例外】には、タイムプレイ以外で得点が認められなくなる場合が書かれています。
以下に改めて紹介します。
公認野球規則5.08(a)【例外】
第3アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者(1、2にあたる場合は全走者、3にあたる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。
(1) 打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき。(5.09a、6.03a参照)
(2) 走者がフォースアウトされたとき。(5.09b6参照)
(3) 前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。(5.09c1・2、同d参照)
(1) 打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき
とは、分かりやすい例を考えると、二死三塁から
- 打者走者が内野ゴロで一塁アウトになった
- フライを打ちあげてアウトになった
ような場合のことです。
打者走者が一塁に触球されたり、フライを捕球されたりする前に三塁走者が本塁に触れていても、得点は認められません。
(2) 走者がフォースアウトされたとき
とは、例えば二死満塁で、三塁線に強いサードゴロが打たれ、三塁手がこれを捕ったときを考えてみましょう。
この場合、そのまま三塁を踏んで二塁走者をアウトにすると、二塁走者はフォースアウトになったことになるので、先に三塁走者が本塁に触れていても得点は認められません。
無理な体制から一塁に送球するより、ベースを踏んだほうが良い場合もあるということです。
(3) 前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき
とは、アピールプレイと呼ばれるプレイです。
二死満塁で満塁ホームランがあり、打者走者も含めて4人が本塁に還ってきましたが、二塁走者が本塁を空過していたとします。
プレイが再開してから守備側が二塁走者の本塁空過をアピールすると、二塁走者にアウトが宣告され、これで3アウトになります。すると、その後ろに位置する一塁走者と打者走者は本塁到達が認められないことになり、得点が4点から1点になってしまうのです!
アピールプレイについて詳しくは▼こちらで。