numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

【打撃妨害】バットがミットに接触した!?こんなときのルールは…

打者が打とうとしたら、捕手のミットが出てきて、ミットを打っちゃった?!

野球では、このような場合、打者が打とうとするのを捕手が妨害したと考え、「打撃妨害」というルールが適用されます。

接触の程度によっては、捕手が大けがすることにもつながりかねない危険な事象ですが、打者が打席でバットを振るのは当然のことなので、悪いのはそこにミットを出した捕手の方になります。

頻繁に起こるような出来事ではないのですが、2023年4月15日、レッドソックスvsエンジェルス戦では、1試合に両チーム合わせて打撃妨害3回、しかも1イニングで打撃妨害2回ということが起こりました。「打撃妨害」というワードがTwitterでトレンド入りするのも納得です。

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さて、打撃妨害が発生した時はどうなるのでしょうか。この記事では、簡単そうで実は厄介な、打撃妨害の時のルールについて解説します。

打撃妨害発生時のルール基本編

打撃妨害のルールは、公認野球規則5.05(b)(3)に規定されています。いきなり全文を示すと内容が難しいので、解説に合わせて少しずつ区切って紹介します。

公認野球規則5.05(b)

打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(ただし、打者が一塁に進んで、これに触れることを条件とする)
(3) 捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合。

公認野球規則では、極端な前進守備を敷いた場合など、捕手以外の野手が妨害することも想定しているため、「その他の野手」という文言が入っていますが、ほとんどの打撃妨害は、捕手のミットが打者のバットに触れることで起こります。

打撃妨害が起こったときの基本的な処置

2023年4月15日のレッドソックスvsエンジェルス戦 3回表 二死 一・二塁の場面での大谷選手の打席で起こった打撃妨害を例に、基本的な処置について確認してみましょう。

二死 一・二塁で、大谷選手は打撃妨害を受けながら投球にバットを当て、打球はファウルボールになりました。

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打撃妨害が起こったとき、球審は、捕手を右手で指さして 『インターフェアランス』〝That’s interference!〟と宣告します。

捕手を右手で指さす
次に、(プレイが一段落していることを確認して)タイムを宣告し、再度捕手を右手で指さして 『インターフェアランス』〝That’s interference!〟と宣告したあと、頭上で左手甲を右手で二三度たたきます。
左手甲を右手でたたく
そして、打撃妨害を受けた打者を一塁に進め、試合再開です。

走者がいたらどうするの?

大谷選手が打撃妨害を受けたときは、走者一・二塁でした。打者の大谷選手は、打撃妨害により、アウトにされるおそれなく、一塁に進むことが許されました。この場合は、四死球のときと同様、他の走者は押し出され、走者満塁になります。

公認野球規則5.06(b) 進塁

(3) 次の場合、打者を除く各走者は、アウトにされるおそれなく1個の塁が与えられる。
(B) 打者が次の理由で走者となって一塁に進むために、その走者が塁を明け渡さなければならなくなった場合。
打者がアウトにされるおそれなく、一塁に進むことが許された場合。

もし、走者が二塁だけの場合は?

二塁走者は打者が一塁に進むことでは押し出されないので、走者一・二塁で再開です。

走者が盗塁を試みていたら?

走者二塁で、二塁走者が盗塁を試みているときに打撃妨害が起こったら?死球(デッドボール)の場合は盗塁が認められないのですが、打撃妨害の場合は、試みていた盗塁は認められ、次の塁に進むことができます。

公認野球規則5.06(b) 進塁

(3) 次の場合、打者を除く各走者は、アウトにされるおそれなく1個の塁が与えられる。
(D) 走者が盗塁を企てたとき、打者が捕手またはその他の野手に妨害(インターフェア)された場合。

このルールは、単に塁を離れていた程度では適用されません。明確に盗塁しようとする意志があったと審判員が判断したときに進塁が認められます。

また、盗塁で進もうとした先の塁にも走者がいる場合に、その走者が盗塁を企てていない場合には、たとえ盗塁行為があってもその走者の進塁は許されないことになっています。 もっとも、それは具体的には、「走者二・三塁の場面で、二塁走者だけが盗塁を試みたとき」に打撃妨害が起こった場合ということになりますが…

打撃妨害のルール基本編 まとめ

  • 審判員がタイムを宣告し、ボールデッドになる。
  • 打者は、アウトにされるおそれなく、一塁への進塁が認められる。
  • 塁上に走者がいる場合は、押し出しになる。
  • ただし、走者が盗塁しようとしていた場合、盗塁先の塁が空いていれば、その盗塁は認められる。

以上を頭に入れておけば、打撃妨害発生のときの一般的な対応は大丈夫です。

しかし、今回大谷選手は、ファウルボールだったものの、投球を「打って」います。これがフェアの打球だった場合はどうなるのか、次回は応用編としてこのことを書いてみようと思います。