numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

先にボールに触れたのになぜファウル?―足裏チャレンジが反則になる理由を競技規則で解説

今回は、それぞれ話題になった以下の2つの事象を取り上げます。

  • 水戸vs柏(4月19日・J1百年構想リーグEAST第11節)74:26のシーン
  • 清水vsC大阪(5月6日・J1百年構想リーグWEST第15節)84:16のシーン

どちらも、先にボールに触れた選手がファウルを取られた場面です。「先にボールに触れていたのになぜ?」と感じた方も多かったと思います。競技規則の観点から整理してみます。

競技規則が定めるファウルの種類

まず、競技規則第12条が定める反則の種類を確認しておきます。

身体的接触を伴う反則が起きたとき、そのファウルの重さについて、以下の3段階で懲戒罰が判断されます。

用語 意味の説明 懲戒罰
不用意 競技者が相手にチャレンジするときに注意もしくは配慮が欠けていると判断される、または慎重さを欠いて行動すること。 なし
無謀 競技者が相手競技者にとって危険になる、または結果的にそうなることを無視して行動すること。 警告(イエローカード)
過剰な力 競技者が必要以上の力を用いる、または相手競技者の安全を脅かすこと。 退場(レッドカード)

これとは別に、「危険な方法でのプレー」という概念もあります。相手競技者への接触が未遂に終わった場合でも成立することがあり、再開方法は直接フリーキックではなく間接フリーキックです。カードは別途判断されます。

この2つは別の観点で評価されます。実際には、身体的な接触が起きた場合は「不用意・無謀・過剰な力」として、接触がない(または相手がプレーを回避した)場合に「危険な方法でのプレー」が適用されるという整理が自然です。

「先にボールに触れた=反則にならない」は正しいか

「先にボールに触れていれば反則にならない」という話を耳にすることがあります。

しかし、競技規則はそのようには定めていません。判断の軸になるのは、ボールへの接触の有無ではなく、チャレンジの性質です。足裏を相手競技者に向けた状態でのチャレンジは、相手の安全を無視した行為と判断される可能性が高くなります。ただし、足裏が見えたからといって即座にファウルになるわけではなく、接触の速度や強さ、相手との距離なども含めて総合的に評価されます。

水戸vs柏 74:26のシーン

上空のボールを胸でコントロールしようとした水戸MF山﨑希一選手のトラップが大きくなりました。山﨑選手はボールをコントロールしようと足を伸ばし、そこに柏MF小泉佳穂選手がボールを奪いにいって、両選手が交錯しました。

映像で確認すると、山﨑選手が先にボールに触れています。しかしその直後にスパイクの裏(足裏)が小泉選手の足に入って、両者ともに激しく接触しました。

主審は山﨑選手にイエローカードを提示しました。山﨑選手は「俺?」というジェスチャーを見せ、樹森大介監督がピッチ内に踏み入って抗議したことで、監督にもレッドカードが提示されました。

先にボールに触れていた山﨑選手がファウルを取られたのは、足裏が相手競技者に向いた状態でのチャレンジが、相手の安全を無視した無謀なプレーと判断されたためです。

清水vsC大阪 84:16のシーン

ペナルティエリア内でC大阪DF畠中槙之輔選手が北爪健吾選手からのパスをクリアしようと右足を出しました。このとき、畠中選手はボールに触れることはできていましたが、足裏がアフメドフ選手のほうを向いていました。

一方、アフメドフ選手はシュートを打とうと足を振っていて、ボールに触れるとほぼ同時に畠中選手の足裏を蹴る形になりました。

アフメドフ選手はその場に倒れ込み、悶絶しました。主審は当初ノーファウルと判定しましたが、直後にVARが介入してOFR(オンフィールドレビュー)が実施されました。映像確認の結果、主審はPKを宣告し、畠中選手にイエローカードを提示しました。

畠中選手がボールに先に触れていたとしても、足裏をアフメドフ選手に向けた状態でのチャレンジは、相手の安全を無視した無謀なプレーと評価できます。

2つの事例に共通すること

2つの事例を並べてみます。

  水戸vs柏(74:26) 清水vsC大阪(84:16)
プレーの種類 ルーズボールへの同時チャレンジ クリアとシュートの衝突
主な行為 ボールをコントロールしようとした ボールをクリアしようとした
先にボールに触れた側 山﨑選手(水戸) 畠中選手(C大阪)
ファウルを取られた側 山﨑選手(水戸) 畠中選手(C大阪)
危険性のポイント 足裏が相手の足に入り、強い接触が発生 足裏を相手に向けた状態で接触が発生
判定の経緯 主審が直接ファウルと判断 ノーファウル→OFRで変更
カード イエローカード イエローカード

どちらも、「先にボールに触れたかどうか」ではなく、「足裏を相手競技者に向けた状態でチャレンジしていたかどうか」が判断の軸になっています。

まとめ

「先にボールに触れた=反則ではない」は、競技規則上の正確な理解ではありません。

チャレンジの形、とりわけ足裏が相手競技者に向いているかどうかは、ファウルの判断において重要な要素の一つです。先にボールに触れていても、そのチャレンジが相手の安全を無視したものであれば、無謀なプレーとしてファウルになります。

試合中にこうした判定を見かけたときは、「先に触れていたかどうか」だけでなく、チャレンジそのものの形にも目を向けてみてください。