numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

浦和vs横浜FM 2つの判定を検証——谷村の肘はイエローカードで妥当か、松尾へのチャレンジはPKだったか

今回は、2026年4月25日、明治安田J1百年構想リーグの第12節、浦和レッズvs横浜F・マリノス戦の2つのシーンを取り上げます。

事象① 試合開始早々の横浜FM 谷村選手の肘が浦和 根本選手の顔付近に当たったシーン。

事象② 86分、PA内で横浜FM 喜田選手が浦和 松尾選手にチャレンジしたシーン。

それぞれの判定を競技規則に照らしながら、私自身の見解を示していきます。

事象① 谷村の肘——イエローカードか、それともレッドカードか?

何が起きたか

2分51秒ごろ、谷村が根本と空中で競り合い、根本の顔付近に谷村の肘が当たりました。谷村にはイエローカードが提示されました。VARの介入はありませんでした。

SNS上では「肘を顔に当てているならレッドカードでは?」という声が一部の浦和サポーターの間で見られました。

レッドカードが出るべき事象なのか

肘の接触に関する判定でレッドカードが出るべき事象だとした場合、その理由については、大きく性質が異なる2つのカテゴリ「著しく不正なプレー」「乱暴な行為」に該当するかどうかで判断します。

サッカー競技規則では、第12条で、それぞれを次のように定義しています。

サッカー競技規則 第12条 ファウルと不正行為
著しく不正なプレー
(ボールに挑戦しているときに)相手競技者の安全を脅かすタックルをする、もしくはチャレンジする、または過剰な力を用いる、もしくは粗暴な行為を行った場合。
ボールに向かうことでチャレンジするときに、過剰な力や相手競技者の安全を脅かす方法で、相手競技者に対し片足もしくは両足を使って前、横または後ろから突進した競技者は、著しく不正なプレーを行ったことになる。

乱暴な行為
身体的接触のあるなしにかかわらず、競技者がボールに向かうことでチャレンジしていないときに相手競技者に対して、または味方競技者、チーム役員、審判員、観客もしくはその他の者に対して過剰な力を用いる、粗暴な行為を行う、または行おうとすること

乱暴な行為は典型的にはボールに向かっていない場面で適用されますが、空中での競り合い中であっても、ボールとは無関係に相手を攻撃するような動作があれば成立し得ます。今回は体全体で相手にぶつかりに行く動作の中での接触であり、主として著しく不正なプレーの枠組みで検討します。

著しく不正なプレーについてもう少し詳しく整理すると

身体的接触を伴う反則が起きたときは、そのファウルの質について、

  • スピード
  • 勢い
  • 強度
  • コントロールの程度
  • 接触した部位や範囲
  • チャレンジの方向

といったことを総合的に考えます。

そして、最終的に次の3段階で懲戒罰を判断していきます。

用語 意味の説明 懲戒罰
不用意 競技者が相手にチャレンジするときに注意もしくは配慮が欠けていると判断される、または慎重さを欠いて行動すること。 なし
無謀 競技者が相手競技者にとって危険になる、または結果的にそうなることを無視して行動すること。 警告(イエローカード)
過剰な力 競技者が必要以上の力を用いる、または相手競技者の安全を脅かすこと。 退場(レッドカード)

とはいえ、スパッと3段階に分けられるものでもなく、審判員によってその判断に差異が出ることも当然あります。「過剰な力」と判断された時が「著しく不正なプレー」に該当します。

私の見解——イエローカードで妥当

私はこの判定、イエローカードで妥当だと考えています。いえぽんボード風に表現すると次のようになります。

警告 0% 20%

40%

60% 80% 100% 退場

谷村は後方を確認し、根本を視野に入れた上で後方に肘を出していたように見えました。意識的な動作があった点は見逃せませんが、意図的な動作があること自体が直ちに悪質さの根拠になるわけではありません。

問題は、その動作に過剰な力が伴っていたかどうかです。「肘を振り上げてぶつけた」とまでは言い難く、後方へジャンプしながら体全体で相手にぶつかりに行く動作の中で、曲げた肘が当たったように見えます。全体的な動作に大きな勢いや肘を振り抜く動きがなく、過剰な力を使ったとまでは言い切れないと思います。

VARは主審がイエローカード(警告)と判定したことについて、「はっきりと明確に退場とすべき」と映像から判断できる要素がある場合に介入しますが、介入はありませんでした。「オレンジであって、真っ赤とまでは言えない」という認識だったのではないかと想像しています。

事象② PA内での喜田から松尾へのチャレンジ——PKだったか?

何が起きたか


85分18秒ごろ、PA内で浦和・松尾が横浜・喜田と接触。松尾が倒れたが、主審はファウルなしと判断しました。VARが介入し、主審はOFRを行いましたが、その結果もノーファウル。浦和にPKは与えられませんでした。

主審はなぜノーファウルと判定したのか

論点は「ボールと相手の脚へのコンタクト、どちらが先か」「ボールをプレーできたと言えるか」であると考えます。主審がノーファウルとした理由は、次のように推測します。

  • 喜田がボールを蹴ろうと足を振ったところに、松尾の脚が割り込んだ
  • 「蹴られるところに脚を出した松尾が接触の原因を作った」という解釈

また、リプレイをよく見ると喜田のつま先がボールに触れていた可能性も排除できず、「喜田がボールをプレーできた」と判断した可能性もあります。これらを踏まえ、主審はファウルと確信をもてなかったのではないかと推測します。

主審はOFRを行って映像を確認しても「明らかな誤り」とは言い切れなかったということなのでしょう。

私の見解——PKだったと思う

私はPKだと思いました。ただし、浦和贔屓目が入っている可能性は自分でも否定できません。それを前置きした上で、見解を述べます。

ポイントは次の2つです。

  • ボールの確保状況
    松尾が先に自分の両足の間にボールを確保したように見えました。そこに喜田が足を振ってきており、ボールにつま先が触れているかもしれませんが、喜田の足が松尾の足首付近に当たっていて「ボールへのチャレンジ」というよりは「相手へのチャレンジ」に近い性質に見えます。私が主審であればファウルと判定し、PA内での出来事ですのでPKを与えます。
  • 無謀なチャレンジの判断基準
    喜田は相手競技者の至近距離で強く足を振っており、足が当たった位置が松尾の足首であることから、「無謀」には該当し得る。イエローカードが相当ではないかと思います。

いえぽんボード風に表現すると次のようになると考えます。

ファウル 0% 20%

40%

60% 80%
100% 警告

なお、仮に喜田のつま先がボールに触れていたとしても、それだけでファウルが否定されるわけではありません。危険なチャレンジであれば、ボールへの接触があってもファウルと判断されることがあります。

まとめ

事象 判定 私の評価
谷村の肘(3分) イエローカード 妥当。退場の根拠は不十分
喜田→松尾(86分) ノーファウル(OFR後も維持) 疑問が残る。PKの可能性あり

事象①については、谷村が後方を確認した上での動作である点は気になるものの、肘を振り抜く勢いがなく、過剰な力を使ったとまでは言い切れません。VARが介入しなかったことも踏まえ、イエローカードは妥当な判定だったと考えます。

事象②については、松尾がボールを先に確保していたように見えたこと、喜田が至近距離で強く足を振ったことから、私にはPKに見えました。主審がOFRを経てもノーファウルを維持したことは、「先にボールに触れた可能性を否定できなかった」という論理として理解はできます。それでも試合後も疑問が残ったのが正直なところです。