
全国高校サッカー2回戦 興國vs東福岡戦の同点ゴールとなったシーンを振り返ります。
オフサイド見逃しに対して厳しい批評がありますが、なぜオフサイドに気づけなかったのかについて考察します。
まずはプレーを見てみましょう
ハイライト映像3分38秒から、ゴールシーンを確認してみます。
このプレーは本当にオフサイドだったか?
ラストパスとなった青(興國)29番がヘディングをした瞬間、シュートを打った青30番は、明らかにゴールラインの外に出ていました。
SNS上では真横から撮った映像も投稿されているため、かなりはっきりします。
競技者がゴールラインの外に出ていた場合、オフサイドポジションの判断では、競技者は、ゴールライン上にいたものとして扱われます。この映像を見る限り、青29番からのパスが出た時点で青30番はオフサイドポジションであったことは明らかです。
さて、青30番がオフサイドかどうかを判断するにあたって、赤(東福岡)の選手がボールにチャレンジしていることが気になります。
これが触れていたかどうかの見極めが難しいのですが、触れていたとして、これを意図的なプレーと捉えるのか、意図的ではないディフレクションと捉えるのかという問題が出てきます。
プレーが意図的かどうかを考える上での指標として、IFAB(国際サッカー評議会)からは、オフサイドに関する通達*1として、次のような基準が示されています。
競技者がボールをコントロール下に置いていたことで、結果的に「意図的にプレーした」ことを示す指標として次の基準が適切に使われるべきである。
- ボールが長く移動したので、競技者はボールをはっきりと見えた
- ボールが速く動いていなかった
- ボールが動いた方向が予想外ではなかった
- 競技者が体の動きを整える時間があった、つまり、反射的に体を伸ばしたりジャンプせざるを得なかったということでもなく、または、かろうじてボールに触れたりコントロールできたということではなかった
- グランド上を動いているボールは、空中にあるボールに比べてプレーすることが容易である
赤の選手はボールコントロール下にはなく、飛んできたボールに対して反射的にジャンプし、頭でクリアをしようと体を伸ばしています。よって私は意図的なプレーとは捉えず、もし赤の選手が触れていたとしても、ディフレクションとみなします。
したがって、青30番は依然としてオフサイドポジションとなり、いわゆる戻りオフサイド状態でシュートを打ったのでオフサイドの反則が成立していると考えられます。
審判員はなぜオフサイドに気づかなかったか?
横からの映像を見てみると、最終ラインの選手が入れ代わり立ち代わり動き、オフサイドラインの見極めが非常に難しいことに加え、ちょうど副審から見てゴールネットの向こう側に青30番が隠れてしまっています。主審も、パスが出た瞬間は青29番の方向を見ていますから、青30番がゴールラインの外にいたことには気づかなかったでしょう。
そのため、主審も副審も青30番がオフサイドポジションにいることを見落としてしまった可能性が考えられます。
実際、この後ゴールが決まった時、副審はゴールを認めるジェスチャー(ハーフウェーラインに向かって走る)をしています。
一方、場内ではゴールシーンのリプレイが流れ、明らかにオフサイドと分かる映像が映し出されたことで、場内が騒然となってしまったのだと思います。
ゴールかどうかについて疑義がある場合、主審・副審・第4の審判員が集まり、審判員だけで協議を行うことは認められています。しかし、今回はそれでもなお、ゴールの判定が変更されることはありませんでした。
こうした状況を見ると、「なぜ気づけなかったのか」「VARがあれば違ったのではないか」と感じるのも自然でしょう。
確かに誤審ではあったが…
競技規則の観点から見れば、この場面はオフサイドと判断されるべきだったと考えます。ただし、そのことと「なぜ見逃されたのか」「誰を責めるべきか」は、切り分けて考える必要があります。
リプレイ映像で判定を変更したら……??
場内に流れたリプレイ映像を見て、判定を変更すべきだったのでは、という声も理解できます。
しかし、競技規則上、映像を根拠に判定を覆すことは認められていません。
高校サッカーでもVARが必要??
VARがあれば違う結果になった可能性はあるでしょう。一方で、高校サッカーという大会の性質を考えると、制度論としては慎重に考えるべき問題でもあります。
審判団は謝罪し、試合をやり直しにしろ??
誤審ではあっても、競技規則の適用ミスではないので、試合結果が覆ることはありません。人が判定する競技である以上、真実と異なる判定が生じる可能性は常に内包されています。
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なお、この判定については、「誤審かどうか」という一点だけでなく、
- 副審が何を見て、何を見落とした可能性があるのか
- 競技規則上、どこが本来の論点で、どこが論点ではないのか
- 感情論・結果論・制度論をどう切り分けて考えるべきか
といった観点からも整理した記事を、別途まとめています。
SNS上では「VARがあれば」「見えていなかったのでは」といった声が多く見られますが、それらがどこまで妥当な指摘で、どこからが論点のズレなのかを、競技規則と審判の認知の観点から整理しています。
▼ 本件についての私なりの考えをまとめました
(おまけ)意図的にピッチを離れたという解釈は?
青30番は、ペナルティーエリア内にドリブルで侵入し、ゴール前にボールを入れたところで、確かにゴールラインの外に出ました。
あのタイミングでゴールラインの外に出る必要があるとは思えないと考え、意図的にピッチを離れたという主張も理解はできますが、意図的にピッチを離れた場合は、主審がそのように見なした時点でゴールを決めたかどうかにかかわらず警告されるものです。したがって、主審がそのように判断していない限りは、後出しで警告しノーゴールとすることはできません。