
今回は、2025年11月16日、明治神宮野球大会 高校野球 硬式の部、山梨学院vs九州国際大付で起こったボールデッドにまつわる2つの事例を取り上げます。
いずれも審判団が協議して走者に進塁指示(帰塁指示)をしましたが、悪送球でボールデッドになったとき、走者はどこまで進めることになるのかについて、この事例をもとに確認していきましょう。
事例1 8回表 2死満塁
まずはプレイを見てみましょう
2死満塁から、打球はライト前に落ち、ヒットになりました。ライトからの返球が悪送球になって三塁側ベンチに入りました。
よく、ボールがベンチに入ると何となく「テイクワンベース」もらえると思っている人が多いようですが、実はルールブックである公認野球規則にはそのように書かれていません。
当ブログには、ボールデッドとなった時の状況によって安全進塁権がどのように付与されるのかをまとめた記事もありますので、詳細はこちらで確認していただくとして…
今回の場合、安全進塁権がどのように与えられるかを解説します。
この事例で適用されるのは、公認野球規則5.06(b)(4)(G)です。
公認野球規則5.06(b)(4) 次の場合、各走者(打者走者を含む)は、アウトにされるおそれなく進塁することができる。
(G) 2個の塁が与えられる場合──送球が、
① 競技場内に観衆があふれ出ていないときに、スタンドまたはベンチに入った場合。(ベンチの場合は、リバウンドして競技場に戻ったかどうかを問わない。)
審判員は2個の進塁を許すにあたって、次の定めに従う。すなわち、打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づく悪送球であった場合には、投手の投球当時の各走者の位置、その他の場合は、悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置を基準として定める。
右翼手が打球を処理した後の悪送球ですので、悪送球が野手の手を離れた時の走者の位置を基準に、2個の安全進塁権が与えられます。

三塁走者、二塁走者は当然本塁が与えられますが、審判員に促されて、一塁走者も本塁に進み、一気に5対4になりました。そして、このとき打者走者も一度は三塁までの進塁を指示されたのですが……
審判団が協議を行い、この後打者走者は二塁に戻されました。
一塁走者は本塁まで進んだのに打者走者は二塁まで。この差はどこにあったのでしょうか。
ポイントは悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置
先ほどのルールに記載がある通り、安全進塁権を与えるときの基準は悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置です。審判団は、協議の結果、送球が右翼手の手を離れた瞬間には、一塁走者は二塁到達しているが、打者走者は一塁に到達できていなかったと判断しました。
リプレイ映像でもう一度確認してみましょう。右翼手の手からボールが離れた直後の、内野が中継映像に映った瞬間です。
一塁走者は明らかに二塁を超えていますが、打者走者はちょうど一塁を回ったところ。送球が右翼手の手を離れた瞬間はこの映像より若干前のことだと考えると、一塁走者は二塁到達していますが、打者走者は確かに一塁に到達できていなかったでしょう。
そのため、一塁走者は二塁到達から、打者走者は一塁到達前の状態から「テイクツーベース」となって、一塁走者は本塁まで、打者走者は二塁まで進むこととなりました。
事例2 9回ウラ 2死満塁
これも、プレーを見てみましょう
2死満塁から、投球が捕手の前で跳ねて暴投になりました。ボールは一塁側ベンチに跳んでいき、捕手が追っている間に三塁走者が本塁に滑り込みました。
これで5対5の同点になるのは理解できるかと思いますが……
この後再び審判団が協議します。そして……
三塁に進んだ二塁走者に本塁へ進むように指示!なんとこれでサヨナラになりました。
なぜ二塁走者までもが本塁に進むことになったのか?
《2025.11.22修正》
誰か教えてくれ〜笑
— たつお (@tatsuo741505) 2025年11月16日
投球が暴投でボールデッドになった場合
①テイク1ベース
②起点の基準は投球開始時に占有していた塁
と認識してるんだがなんで最後のやつがテイク2になったのか
こういう疑問が出てくる、本当に分かりづらい事象です。
投球がそのままベンチに入った場合は、投球当時の占有塁を基準にテイクワンベースなので、二塁走者が本塁まで来ることはありません。
公認野球規則5.06(b)(4) 次の場合、各走者(打者走者を含む)は、アウトにされるおそれなく進塁することができる。
(H) 1個の塁が与えられる場合──
打者に対する投手の投球、または投手板上から走者をアウトにしようと試みた送球が、スタンドまたはベンチに入った場合、競技場のフェンスまたはバックストップを超えるか、抜けた場合。
この際はボールデッドとなる。
中継映像で改めて確認すると、捕手は一塁ベンチ方向にスライディングしていますが、どうやらボールを捕球してそのまま一塁ベンチに入り込んでしまったようです。
追いかけた捕手の光永はボールをベンチ前で捕球し、余勢でそのままベンチ内に入り込んでしまった。その時、既に各走者が1つ進塁しており、三塁に達していた二塁走者は本塁への進塁が許され、1つの暴投で2走者が生還する「暴投2ラン」になった。
【記事全文】【神宮大会】異例の“暴投2ラン”でサヨナラに神宮騒然 山梨学院・吉田監督「野球の神様が…」 - スポニチ Sponichi Annex 野球
この場合は、規則5.06(b)(4)(H)の【規則説明】が適用されます*1。
【規則説明】 投手の投球が捕手を通過した後(捕手が触れたかどうかを問わない)、ダッグアウト、スタンドなどボールデッドの個所に入った場合、および投手板に触れている投手が走者をアウトにしようと試みた送球が直接前記の個所に入った場合、1個の塁が与えられる。
しかしながら、投球または送球が、捕手または他の野手を通過した後、プレイングフィールド内にあるボールを捕手または野手が蹴ったり、捕手または野手にさらに触れたりして、前記の個所に入った場合は、投球当時または送球当時の走者の位置を基準として2個の塁が与えられる。
つまり、捕手が深追いしたことで却って走者に余分な安全進塁権を与えてしまったということです。
よって、ワイルドピッチやパスボールがベンチに入りそうな状況で捕手が無理に捕球のため追っていこうとしたときは、周囲の選手から「無理するな、やめろ!」と声かけすることがチームを救うことにつながります。
まとめ
- 野手が悪送球をしてボールデッドになったときは、悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置を基準にして、テイクツーベースになる。この時一塁走者が二塁を回っていたら、一塁走者も本塁まで進める。
- ベンチに入りそうなワイルドピッチを捕手が無理に取りに行き、その勢いでベンチに入り込むと、。捕手が深追いすることで却って走者に余分な安全進塁権を与えてしまう結果になるので、周囲の選手から「無理するな、やめろ!」と声かけすることがチームを救うことにつながる。
安全進塁権について学ぶ上でよい教材になる試合になった……という言い方はなんですが、ボールデッドが絡んだ珍しい事例が2つ続き、学びの多い試合であることは確かですね。