
2025年3月1日、国際サッカー評議会(IFAB)は、サッカー競技規則2025/26の改正を承認しました。これにより、これまでゴールキーパーが6秒以上手でボールを保持した場合に相手に間接フリーキックが与えられる「6秒ルール」について、制限時間が8秒となる一方、ルールがより厳格に適用されることとなりました。
このルールが、FIFAクラブワールドカップ2025や東アジア E-1サッカー選手権に適用となります。浦和レッズや日本代表は早くこれに慣れておく必要がありますね。
今回は、ゴールキーパーの「8秒ルール」について、どのように変わったかを解説します。
ルール改正で適用される「8秒ルール」とは
GKが自分のペナルティーエリア内で、ボールを放すまでに、手や腕で8秒を超えてコントロールした場合、攻撃側にコーナーキックが与えられるようになります。
また、IFABの公式の説明文で確認できていませんが、トライアルでは「GKは最初の反則に対しては注意が与えられ、それ以降の反則には警告(イエローカード)が与えられる」となっていますので、恐らく懲戒罰はこの通りの運用になると予想しています。
これまでは「6秒ルール」だったが…
もともと競技規則では、GKの安全を守るため、GKが、手や腕でボールをコントロールしているときにGKにチャレンジすることができないとしていました。しかし、それによってGKが長時間ボールを保持し、相手チームがボールを取り戻せる可能性がなく、プレー時間を浪費する行為がしばしば見られました。
2000年のサッカー競技規則改正の際にGKが自分のペナルティーエリア内で手や腕で6秒を超えてコントロールした場合、反則が起きた地点からの間接フリーキックとすることとなりました。しかし、ペナルティーエリア内からの間接フリーキックは、相手チームの得点になる可能性が非常に高いという意味では「時間の浪費」に対する罰則としてはあまりにも重く、審判員にとって運用が非常に難しいルールとなっていました。そんなわけで、20年以上にわたって「文章としては存在するけれど、運用されていないルール」というのが実態でした。
厳格に「8秒ルール」を適用するためのポイント
「8秒ルール」を厳格に適用するため、今回新たに設けられたのが主審による「5秒間の明示的なカウントダウン」です。
主審はGKがボールを手や腕でコントロールしたと判断したときから「カウントダウン」を始め、5秒前になると頭上に5本の指を開いて手を挙げて「残り5秒」を示し、指を折りながらカウントダウンを行い、0になるとコーナーキックを指示するようになります。
もともとサッカー競技規則には、このような文章で、GKが手でボールをコントロールしているときが規定されていました。
GKがボールを手でコントロールしていると判断されるのは、次のときである。
- ボールがGKの両手で持たれているとき、またはボールがGKの手と他のもの(例えば、グラウンド、自分の体)との間にあるとき、ボールに手や腕のいずれかの部分で触れているとき。ただし、ボールがGKからはね返った、またはゴールキーパーがセーブした場合を除く。
- GKが広げた手のひらでボールを持っているとき。
- ボールをグラウンドにバウンドさせる、または空中に投げ上げた。
この条件が満たされているときはGKが手でボールをコントロールしているとみなし、GKが倒れていても立っていても、相手競技者はGKにチャレンジすることができないこととされていました。

なぜ「8秒」にしたのか
このルール改正についての公式なトライアルは、2023年11月にロンドンで開催されたIFABの「年次事務会議」で実施が決議され、2024年3月にスコットランドで行われたIFAB年次総会で正式認可されました。そしてイングランド、イタリア、マルタのサッカー協会がトライアル参加を申し出たとのことです。ただし、各国の2部までのトップリーグやA代表の試合でのトライアルは認められず、ユースや下部リーグの試合で実施されました。
その結果、
Law 12 defines when the six-second limit starts:
‘A goalkeeper is considered to be in control of the ball with the hand(s) when:
- the goalkeeper quickly releases the ball into play to start an attack – in these instances, the goalkeeper usually holds the ball for well below six seconds
- the goalkeeper attempts to release the ball into play to start an attack but is unable to do so for a variety of legitimate reasons, e.g. attacking players are not available/in position or other players (of either team) interfere with the goalkeeper’s movement – in these instances, the goalkeeper usually holds the ball for around six to eight seconds
- the goalkeeper decides to waste time, often unnecessarily falling to the ground and staying there before slowly standing up – in these instances, the goalkeeper holds the ball for considerably more than six seconds, sometimes reaching 20 seconds or more
Consequently, to accommodate the second situation, a limit of eight seconds will be trialled, the idea being that this will not penalise those goalkeepers who genuinely want to release the ball into play in a timely manner but, through no fault of their own, are unable to do so.
《拙訳》
GKがボールを手でコントロールしているとみなされるのは次のような場合である:
- GKが攻撃を開始するために素早くボールをリリースした場合
- このような場合、GKがボールを保持する時間は通常6秒をはるかに下回る。- GKが攻撃を開始するためにボールを早くボールをリリースしたいが、攻撃側の選手がいない、または、他の選手がGKの動きを妨害するなど、さまざまな正当な理由により、ボールをリリースできない場合
- このような場合、GKは通常6~8秒間ボールを保持する。- GKが時間を浪費するために、不必要に地面に倒れ込み、その場にとどまってからゆっくりと立ち上がる
- このような場合、GKは6秒よりかなり長く、時には20秒以上ボールを保持する。その結果、2番目の状況に対応するため、8秒という制限時間が試行されることになった。この制限時間は、純粋にボールをタイミングよくリリースしたくても、自らの過失でそれができないGKにペナルティを与えないというものである。
IFABの説明によると、
「8秒のカウントダウンは、GKが手や腕ではっきりとボールをコントロールしたことを主審が確信したときにスタートする。GKが時間を浪費する際にはボールをキャッチした後に不必要に倒れ込み、誰も邪魔していないのにも関わらずそのままでいることが多いため、GKが立っている必要はない。相手選手がGKが8秒以内にボールを放すことを妨げた場合、アドバンテージを適用できる場合を除いてGKのチームにFKが与えられる」
となっています。
この他の改正
ドロップボール
現在は最後にボールに触れたチームへのドロップボールで再開となっていますが、もしプレーを止めなかった場合にどちらのチームがボールを保持していたかが主審から明白な場合は、そちらチームへのドロップボールで再開することとなりました(ただし、ペナルティーエリア内ではGKへのドロップボールとする)。また、どちらのチームが保持かが明白でない場合は、最後に触れたチームへのドロップボールで再開となります。
監督等がボールが外に出たと勘違いして触れてしまった場合
監督やチームスタッフ、控え選手などがピッチから出ようとしているボールに触れた場合、それが不当に影響を与えようとする意図がないならば、カードの対象とはせず、間接FKで再開することとなりました。
VAR実施試合のPKにおける副審の位置
通常、PKの際には副審はゴールライン上に位置しますが、ゴールに入ったかやGKの飛び出しはVARが確認できるため、オフサイドラインとなるペナルティーマークの延長線上に位置することとなりました。
また、FIFAが審判員が目線カメラを着用することを進めていく方針を示していて、IFABがこれを支持することが明らかとなり、クラブワールドカップでは審判員の目線カメラが中継映像に使用されることになるようです。
まとめ
ルール改正後、主審は、GKがボールを手や腕ではっきりとボールをコントロールしたと判断したら、GKが立ち上がるのを待つことなく8秒のカウントダウンを始めます。残り5秒からは頭上で指を折りながら数え、0になったら「相手チームのコーナーキック」での再開を指示します。
このルールが、FIFAクラブワールドカップ2025や東アジア E-1サッカー選手権に適用となります。