numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

非常に難しいオフサイドの判定!VARはどうして介入したのか?

ジェバリの放ったループシュートのスーパーゴールは、残念ながらオフサイドで取り消しに。

「どこがオフサイドなの?」

「納得できません!」

「ルール上オフサイドなのは分かるが、ルールが理不尽じゃないか?」

など、いろいろな意見が飛び交うこの判定について、なぜオフサイドと判定されたのかの解説とともに、私なりの考えを書いていきます。

まずはプレーを見てみましょう

2025明治安田J1リーグ 第12節 FC東京vsガンバ大阪 21:07のシーンです。

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半田陸がFC東京のDFラインの裏に抜け出し、ペナルティーエリア内で左後方にパス。イッサム・ジェバリが右足でループシュートを放ち、FC東京のゴールに入りました。

しかし、VARが介入し、飯田主審がオンフィールドレビューを行った結果、判定はオフサイドに変更。ゴールは取り消しとなりました。

どうしてオフサイド

ジェバリがシュートした瞬間、半田がオフサイドポジションにいて、カバーに入ろうとしたFC東京の安斎颯馬の進路を妨げたからと考えられます。

サッカー競技規則第11条 オフサイドを確認してみましょう。

第11条 オフサイド

2. オフサイドの反則

ボールが味方競技者によってプレーされたか触れられた*瞬間にオフサイドポジションにいる競技者は、次のいずれかによってそのときのプレーにかかわっている場合にのみ罰せられる。

*ボールを「プレーした」か「触れた」最初のコンタクトポイントを用いるべきである

  • 味方競技者がパスした、もしくは触れたボールをプレーする、または触れることによってプレーを妨害する。または、
  • 次のいずれかによって相手競技者を妨害する。
    • 明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする、もしくは、プレーする可能性を妨げる。または、
    • ボールに向かうことで相手競技者にチャレンジする。または、
    • 自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。または、
    • 相手競技者がボールをプレーする可能性に明らかに影響を与えるような明白な行動をとる。
または、
  • その位置にいることによって、次の場合に、ボールをプレーして利益を得る、または相手競技者を妨害する。
    • ボールが、ゴールポストクロスバー、審判員もしくは相手競技者からはね返った、またはそれらに当たって方向が変わってきた。
    • 相手競技者によって意図的にセーブされた。

(中略)

その他の状況として、

  • オフサイドポジションから移動した、またはオフサイドポジションに立っていた競技者が相手競技者の進路上にいて相手競技者がボールに向かう動きを妨げた場合、それにより相手競技者がボールをプレーできるかまたはチャレンジできるかどうかに影響を与えていれば、オフサイドの反則となる。

ポイントは守備側競技者に影響を与えたかどうか

今回の場合は、「相手競技者がボールをプレーする可能性に明らかに影響を与えるような明白な行動」をとったことで「相手競技者がボールをプレーできるかまたはチャレンジできるかどうかに影響を与えて」いたかどうか。

即ちジェバリのループシュートをクリアしに行こうとした安斎の守備の可能性に半田の行動が明らかに影響を与えたかかどうかが論点になると考えられます。

シュートがゴールに向かって飛んでいる最中に、確かに半田は安斎の進路をふさいでいて、安斎がシュートをクリアしようとする守備の妨げになったと見ることができます。

よって、オンフィールドレビューを行った飯田主審が判定をオフサイドでノーゴールに変更したことは妥当で、正しい判定です。

でも私は気になることが……

以下は私見になります。

今回の判定について、飯田主審はもともとゴールを認めていました。OFRをするようにVARが介入したということは、ゴールの判定にはっきりとした明白な間違いがあったという認識だったのか、それともオフサイドの可能性のあるプレーをピッチ上の審判団が見逃したと捉えたのかということになります。

半田は確かにオフサイドポジションにいたので、相手競技者がボールをプレーできるかまたはチャレンジできるかどうかに影響を与えていたかどうかが論点です。

半田の行動が、安斎のシュートクリアの「可能性」に影響があったかどうかと言われれば、確かに妨げになったので影響がなかったわけではないでしょう。

しかし、そもそも安斎はシュートに届くかどうかも分からないような状況です。守備側競技者のブロックになったことが「影響があった」というほどなのか、疑問に感じました。

VARが介入するときの原則

VARは、主審に言われることなく映像をチェックし、必要に応じて主審と交信を行いますが、判定に介入しオンフィールドレビュー(OFR)を勧めるのは、

  • 「はっきりとした、明白な間違い」または
  • 「見逃された重大な事象」

があった場合のみです。

「誤審をそのままにしておくより、どんどんビデオ判定を使っていくほうがいい」とか、「際どくてはっきりしないなら、主審が映像を見て決断すればみんなが納得できていい」という意見もよく聞きますが、「ビデオアシスタントレフェリー(VAR)の実施手順 ― 原則と実践および進め方」(VARプロトコルでは、そのような手続きを認めていません。

主審はどんな事象であってもまず判定を下さなければならず、その判定についてVARがチェックを行って、「はっきりとした、明白な間違い」であると判明したときだけ介入する、というのが原則になっています。そうでなければ主審がいる意味がなく、また、テクノロジーが使えなければサッカーの試合ができなくなってしまう。VARはあくまでも判定のオプションでなければならないのです。

「ビデオアシスタントレフェリー(VAR)の実施手順 ― 原則と実践および進め方」

1.原則

2. 判定を下すのは、常に主審でなければならない。つまり、主審が「判定を下さない」で、VARに判定を下させることは、認められない。反則かどうか疑わしいが、プレーを続けさせた場合であっても、その反則については、レビューすることができる。

3. 主審が下した判定は、ビデオによるレビューでその判定が「はっきりとした、明白な間違い」であると判明した場合を除いて、変更しない。

このような原則になっているからこそ、どの程度のことなら「はっきりとした、明白な間違い」としてVARが介入するのか、基準が必要です。

Jリーグのサイトでは、介入する目安は「10人のうち10人全員または9人か、8人まで含むかという人が『はっきりとした、明白な間違い』だと思うような判定が下された場合、または『見逃された重大な事象』が発生した場合においてのみ、VARはサポートを行」うと示されています。

また、こうも書かれています。

【大事なポイント】
VARは、対象となる事象における主審の「はっきりとした、明白な間違い」を正す援助をするものであり、最良の判定を見つけるものではない!!

VAR(ビデオアシスタントレフェリー』)とは?サッカーのルールを分かりやすく解説【公式】Jリーグ公式サイト(J.LEAGUE.jp)

今回の介入は果たしてどうだったのか

主審がオフサイドを取らず得点を認める判定が「はっきりとした、明白な間違い」といえるほどのことだったのか。私は、今回の事象に照らして考えるなら、守備側競技者が完全に進路を妨げられてシュートクリアできなかった、という状況がVARの介入基準ではないかと考えています。

つまり、飯田主審の最終的な「オフサイド、ノーゴール」という判定に間違いはないし尊重もするけれど、プレーへの影響が明らかというにはこの状況は微妙で、VARが介入するべき事象だったかどうかには疑問が残る。結果としてそのままゴールという判定になったとしても間違いではないと思います(結果が3-0だったからこう言っているわけではありません)。

「今回の介入が果たしてどうだったのか、この事例を通じて勉強したい!」というのが率直な気持ちで、JFA審判委員会のレフェリーブリーフィングで言及があるといいなと思っています。