
もし、ホームラン性の打球を捕球した野手がそのままスタンドに飛び込んでしまったら?
判定はホームランになるのでしょうか。それともアウトなのでしょうか。
もしかしたら野球を長くプレイしている方でも間違えてルールを理解しているかもしれません。公認野球規則の記述に基づいて、ルールを確認してみましょう。
まずはこのプレーを見てみましょう!
2017年8月1日、レッドソックスvsインディアンス戦で、インディアンスのオースティン・ジャクソンは、ホームラン性の打球をフェンス際まで追って、フェンスの向こう側に手を伸ばして捕球し、その勢いでフェンスの向こう側に落下!
しかし、立ち上がったジャクソンは捕球したグラブを掲げました。
判定はどうなる?
実は、公認野球規則5.09(a)(1)と同【原注1】に明確な記載があります。
公認野球規則5.09(a)(1)
フェア飛球またはファウル飛球(ファウルチップを除く)が、野手に正規に捕らえられた場合。(打者は、アウトになる。)
【原注1】 野手は捕球するためにダッグアウトの中に手を差し伸べることはできるが、足を踏み込むことはできない。野手がボールを確捕すれば、それは正規の捕球となる。ダッグアウトまたはボールデッドの個所(たとえばスタンド)に近づいてファウル飛球を捕らえるためには、野手はグラウンド(ダッグアウトの縁を含む)上または上方に片足または両足を置いておかなければならず、またいずれの足もダッグアウトの中またはボールデッドの個所の中に置いてはならない。正規の捕球の後、野手がダッグアウトまたはボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなる。走者については5.06(b)(3)(C)〔原注〕参照。
ここではダッグアウトと書かれていますが、フェンスの向こう側も同じルールが適用されます。
野手は、捕球するためにフェンスの向こう側に手を差し伸べたり、フェンスをよじ登ったりすることは認められていますが、グラウンド上または、その上方空間に少なくとも片足が残っていなければなりません。さらに、ダッグアウト内部やフェンスの向こう側など、ボールデッドとなる個所に片足でも置いていると、たとえ落とさずに捕っても正規の捕球とはみなされず、スタンドに入ったとみなされます。
先ほどの動画では、グラブにボールが入った瞬間、ジャクソンの両足はグラウンド側にありましたから、手を差し伸べて捕ったあとフェンスの向こう側に落下しても、しっかりつかんだままであれば正規の捕球とみなされます。
よって、判定はアウト。ホームランを阻止したスーパープレイとして称賛されました。
でも、このプレイで気を付けなければならないことが…!
先ほど引用した規則規則5.09(a)(1)の【原注1】の最後には、参照するように示されているルールがありました。
公認野球規則5.09(a)(1)【原注1】
正規の捕球の後、野手がダッグアウトまたはボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなる。走者については5.06(b)(3)(C)〔原注〕参照。
ここで参照するよう示されている規則5.06(b)(3)(C)【原注】には、どのようなことが書かれているのでしょうか。
確認してみると、このプレイで気をつけなければならない、非常に重要なことが書かれています。
公認野球規則5.06(b)(3)
次の場合、打者を除く各走者は、アウトにされるおそれなく1個の塁が与えられる。
(C) 野手が飛球を捕らえた後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合。
【原注】野手が正規の捕球をした後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなり、各走者は野手がボールデッドの個所に入ったときの占有塁から1個の進塁が許される。
先ほど紹介したジャクソンのホームランキャッチの場面では塁上に走者がいませんでしたが、もし走者がいた場合、各走者には、野手がボールデッドの個所に入ったときの占有塁を基準に、1個の安全進塁権が与えられるルールになっています。
そう、つまり「ボールデッドでテイクワンベース」です。
よって、0アウトや1アウトで、三塁走者がいるときにフェンス際に打球が飛んだ際、捕球した勢いでフェンスの向こう側に落ちると、アウトにはなりますが1ベースが与えられて得点されてしまうのです。
下の動画はホームランキャッチではありませんが、ファウルフライでまさにそのような状況になったプレイです。
2019年8月29日、アスレチックスvsロイヤルズ戦で、三塁手・カスバートが三塁ファウルフライを捕った後ベンチに飛び込みました。三塁塁審は捕球を認めてアウトを宣告しましたが、同時にボールデッドを宣告し、三塁走者と二塁走者に1つ先の塁に進むように指示を出しました。
せっかくファウルフライを捕ったのに、このような場合、三塁走者には本塁が与えられます。
ただし、走者にはフライを捕られたときのリタッチの義務が残りますので、塁を離れていたときは、ちゃんと投球当時の占有塁まで戻ってから進塁しないといけません。これを怠ると、次にプレイがかかったとき、当該走者はアピールプレイの対象となります。