
「野球にはどんなルールがあるのか知りたい」
「自分にはどのくらい野球のルールの知識があるのか確認したい」
「今度野球の審判をやることになったんだけど、ややこしいルールをちゃんと確認しておきたい」
この記事は、そんな人向けに、これまで当ブログで書いた解説記事をまとめました。
全部で5問、クイズ形式で用意したので、是非答えてみてくださいね。
問題編
第1問 フェア?ファウル?
三塁線で本塁と三塁の間に、やや浅いフライが上がりました。三塁手が前進して捕球しようとしたところ、グラブには当たったものの、捕れませんでした。
三塁手が打球に触れたとき、身体の大部分はフェアグラウンドにあり、打球とグラブが当たった位置はファウルライン上でした。また、ボールが最初に地面に落ちた場所はファウルグラウンドで、三塁ベンチの方向に転がっていきました。
この打球の判定について、正しく説明しているのは次のうちどれですか。
- 野手の身体の大部分がフェアグラウンドにあるから、フェア
- 打球に触れた位置がファウルライン上だから、フェア
- 打球に触れた位置がファウルライン上だから、ファウル
- ボールが最初に落ちた場所がファウルグラウンドだから、ファウル
- まだボールが転がっているから、この時点ではフェアかファウルかは確定せず、ボールインプレイ
ライン際のきわどい打球は、本当に審判泣かせなんです。
第2問 ファウルチップ
「ファウルチップ」とは何ですか。
次の1~5の中から、該当するものを全て選んでください。
- バットから鋭く後方に飛んで、捕手のミットに収まったもの
- バットから鋭く後方に飛んで、捕手のミットに当たった後、地面に落ちる前に捕手が捕球したもの
- バットから鋭く後方に飛んで、捕手のマスクに当たった後、 地面に落ちる前に捕手が捕球したもの
- バットから鋭く後方に飛んで、球審のマスクに当たった後、 跳ね返ってきたボールを地面に落ちる前に捕手が捕球したもの
- バットから鋭く後方に飛んで、バックネットに当たった後、跳ね返ってきたボールを 地面に落ちる前に捕手が捕球したもの
ファウルチップの定義は、2021年の公認野球規則改正の際に変更されました。かつての規則のまま覚えている人もいるかもしれませんので、要確認です。
第3問 インフィールドフライ
1アウト 一・三塁で打者が高々とセカンドフライを打ち上げました。二塁手は容易に捕球できる状態です。このときインフィールドフライは宣告されますか?
- インフィールドフライは宣告される
- インフィールドフライは宣告されない
- インフィールドフライは、走者の動きによって審判員が宣告するかどうか判断する
インフィールドフライのルールは、守備側が、「飛球が捕られたときの帰塁義務」と「フォースの状態にあるときの進塁義務」という走者の2つのルールを悪用し、わざと落としてアウトを2つとろうとする企てを阻止するために設けられたものです。
インフィールドフライの宣告条件、正しく覚えていますか?
第4問 審判は石ころ?
走者一・三塁で、打球は鋭く低いライナー性の当たりで、内野内にいた二塁塁審の足に当たってセンターに抜けました。
この打球の判定について正しく説明しているのは、次のうちどれですか。
- 審判員に打球が当たっても石ころと当たったのと同じなので、ボールインプレイ。
- 審判員に打球が当たった時点でボールデッド。打者と塁上の走者は、1つずつ進塁する。
- 審判員に打球が当たった時点でボールデッド。打者は一塁に進み、一塁走者は押し出しで次の塁に進むが、三塁走者は押し出しにならないので進塁できない。
- 審判員に打球が当たった時点でボールデッド。審判員が、もし審判員に打球が当たっていなかったらプレイはどうなったかを考えて、打者と走者に必要な分だけの進塁を指示する。
意外と根強いんですよね……「審判は石ころ」っていう考えが。審判員は人間ですよ、当たったら痛いです。
第5問 ホームランキャッチしてフェンスの向こうに落ちたら?
走者二塁で、ホームラン性の打球が外野に飛びました。外野手はフェンスによじ登ってジャンプすると、打球を捕ることができましたが、そのままフェンスの向こう側に落ちました。しかし、打球はグラブに入ったまま、落としていませんでした。
このとき、正しい判定は次のうちどれですか。
- フェンスの向こう側に落ちたので、2ランホームラン。
- 外野手が打球を捕っているので打者アウトで、プレイはそのまま続けられる。
外野手が早く内野にボールを返せば塁上の走者をアウトにできるし、二塁走者もタッグアップすれば進塁できる。 - 外野手が打球を捕っているので打者アウトだが、ボールを捕った野手がフェンスの向こう側に出たのでボールデッド。二塁走者は進塁できない。
- 外野手が打球を捕っているので打者アウトだが、ボールを捕った野手がフェンスの向こう側に出たのでボールデッド。二塁走者は1つ進塁できる。
いかがでしたか。ちょっと難しいルールを集めてみましたが、全部答えられましたか?
これ以降は解答編になります。
解答編
第1問の答え
答えは
「2. 打球に触れた位置がファウルライン上だから、フェア」
です。このような時、フェアかファウルかは、野手が打球に触れたときの打球の位置で判断します。
打球に触れた位置はファウルライン上ですが、ファウルライン上はフェア地域と扱います。よって、フェアです。
三本間(三塁ベースより手前)の打球なので、判定するのは原則として球審になります。フェアと判定するときは、何も発声せずにフェアグラウンド側を指しましょう。絶対に「フェア!」と叫んではいけません。プレイが止まってしまいます。
第2問の答え
答えは
1. バットから鋭く後方に飛んで、捕手のミットに収まったもの
2. バットから鋭く後方に飛んで、捕手のミットに当たった後、地面に落ちる前に捕手が捕球したもの
3. バットから鋭く後方に飛んで、捕手のマスクに当たった後、 地面に落ちる前に捕手が捕球したもの
の3つです。
2021年の公認野球規則改正の際に「鋭くバットから直接捕手の手に飛んで」と書かれていた規則から「手」が削除され、プロテクターやマスクからはね返ったものも、地面に落ちる前に捕ればファウルチップとなりました。
第3問の答え
答えは
「2. インフィールドフライは宣告されない」
です。
インフィールドフライの宣告条件は、
- アウトカウントが0アウトまたは1アウト
- 走者が1・2塁または満塁の場面
- 打者が飛球を打ち上げ(ライナーとバント飛球は該当しない)、
- 審判員が「内野手が普通の守備行為を行えば、捕球できる」と判断した
ときです。今回は、走者1・3塁なので、適用条件に当てはまりません。
第4問の答え
答えは
「3. 審判員に打球が当たった時点でボールデッド。打者は一塁に進み、一塁走者は押し出しで次の塁に進むが、三塁走者は押し出しにならないので進塁できない。」
です。
適用規則は5.05(b)(4)と、5.06(c)(6)です。
5.05(b) 打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(ただし、打者が一塁に進んで、これに触れることを条件とする)
(4) 野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で審判員または走者に触れた場合。5.06(c) 次の場合にはボールデッドとなり、走者は1個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない。
(6) 内野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者または審判員に触れた場合、あるいは内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールが、審判員に触れた場合──打者が走者となったために、塁を明け渡す義務が生じた各走者は進む。
このことから、打球はボールデッドとなって、打者は一塁に進み、塁を明け渡す義務が生じた走者は進塁できます。今回は一・三塁。一塁走者は押し出されますが、三塁走者はそうではありませんので、三塁に留まることになります。
通常は三塁走者は得点できていた状況だったでしょうが、ルールでこのように定められているので、仕方ありません。
第5問の答え
答えは
「4. 外野手が打球を捕っているので打者アウトだが、ボールを捕った野手がフェンスの向こう側に出たのでボールデッド。二塁走者は1つ進塁できる。」
です。
この場合の適用規則は5.06(b)(3)(C)と5.09(a)(1)です。
5.06(b)(3) 次の場合、打者を除く各走者は、アウトにされるおそれなく1個の塁が与えられる。
(C) 野手が飛球を捕らえた後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合。
5.09(a) 打者は、次の場合、アウトとなる。
(1) フェア飛球またはファウル飛球(ファウルチップを除く)が、野手に正規に捕らえられた場合。
【原注1】 野手は捕球するためにダッグアウトの中に手を差し伸べることはできるが、足を踏み込むことはできない。野手がボールを確捕すれば、それは正規の捕球となる。ダッグアウトまたはボールデッドの個所(たとえばスタンド)に近づいてファウル飛球を捕らえるためには、野手はグラウンド(ダッグアウトの縁を含む)上または上方に片足または両足を置いておかなければならず、またいずれの足もダッグアウトの中またはボールデッドの個所の中に置いてはならない。正規の捕球の後、野手がダッグアウトまたはボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなる。
このとおり、野手の捕球は認められて打者アウトとなり、ボールデッドとなって、走者が1つ進塁します。
漫画『ドカベン』で、土佐丸高校の犬神が殿馬のホームランをキャッチしながらも、フェンスの向こう側に落ち、判定が「ホームラン」となったシーンを覚えている人も多いことと思います。

残念ながらこのシーンについては、作者・水島新司さんのルール解釈が間違っていて、実際にこの通りのことが起これば、判定はアウトです。この間に規則改正があったという主張をする方もいますが、これがアウトとなることについては、当時も現在も適用規則に大きな変わりはありません。