numの野球・サッカーのルール解説

野球やサッカーの観戦をしていて、ルールが分からず「今のはなんでこういう判定なの?」と疑問に思うようなプレーに、競技規則から判定の理由についてアプローチします。

野球規則の改正:2025年度の変更点は全部で19項目!

2024年11月18日、日本野球規則委員会から野球規則の改正について発表されました。

npb.jp

2025年度の改正は、項目数にするとなんと19項目。多いですね。

内容によっては、一括して説明できるものもありますが、当ブログは、ルール本文を理解することを何よりも大切にしているので、改正内容をコンパクトにまとめた説明は他サイトでお願いすることとして、改正内容が発表された項目どおりに、かつ改正後のルール本文がどのようになるかを紹介する形で解説していきます。

そんなわけで、過去に類を見ないくらいの長文となりますが、お付き合いいただけたら幸いです。

野球規則の改正とは

日本の野球規則は、アメリカの"Official Baseball Rules"の改正を受けて、1年遅れで改正されます。「原文に忠実に」をモットーにしつつ、日本国内のどのカテゴリーでも適用されるルールとしてあるために、日本独自の【注】を設けるなどしたものが、『公認野球規則』として発表されます。

公認野球規則』は日本国内の全ての野球の試合で適用されるものであり、日本プロ野球にだけ適用されるものではないことに注意が必要です。

2025年度 野球規則改正の内容

今回の改正は以下の19項目です。

  1. 規則2.01 競技場の設定について
  2. 規則3.01【軟式注】 H号球の反発について
  3. 規則3.08 打撃時に使用するヘルメットについて
  4. 規則5.04(b) バッターボックスルール
  5. 規則5.09(a)(11) スリーフットレーン
  6. 規則5.10(g) 投手の義務について
  7. 規則5.10(m) マウンドに行く回数の制限について
  8. 規則6.02(d) 投手の禁止事項に関するペナルティ
  9. 規則7.01(a)(2) コールドゲームの宣告について
  10. 規則7.01(c) 試合の延期または中止について
  11. 規則7.01(d) コールドゲームの取り扱いについて
  12. 〔改正前の規則7.01(e)および(f)の削除〕
  13. 規則7.01(e) 試合終了時の得点と勝敗について
  14. 規則7.02 ポストポンドゲームやサスペンデッドゲームについて
  15. 規則7.02(f) サスペンデッドゲームの進め方について
  16. 規則9.01内の用語の変更
  17. 【9.22注】の追記
  18. 定義14 CALLED GAME「コールドゲーム
  19. 定義63 POSTPONED GAME「ポストポンドゲーム」の追加

では、それぞれの詳細を見ていきます。お目当ての項目がある方は、下の目次から直接該当項目に飛んでください。

(1) 規則2.01 競技場の設定について

2.01の最終段落の後段と【注】を次のように改める。

巻頭1図のグラスライン(芝生の線)および芝生の広さは、多くの競技場が用いている規格を示したものであるが、その規格は必ずしも強制されるものではなく、各クラブは任意に芝生および芝生のない地面の広さや形を定めることができる。

ただし、以下の場合を除く。
(a) 内野の境目となるグラスラインは、投手板の中心から半径95フィート(28.955メートル)の距離とし、前後各1フィートについては許容される。しかし、投手板の中心から94フィート(28.651メートル)未満や96フィート(29.26メートル)を超える箇所があってはならない。

(b) 本塁一塁間のベースラインに沿ったフェアテリトリの内野のグラスライン(芝生の線)はベースラインから18インチ(45.7センチ)以上、24インチ(61.0センチ)以下でなければならない。

【注】我が国では、本項(a)および(b)については、適用しない。

規則2.01は2024年改正で内野の境目について規定され、その部分が今回の改正の(a)にあたります。

今回の改正では(b)が追記されたことになります。追記の内容は、Official Baseball Rules (OBR)2024で打者走者が本塁一塁間の後半部分を走るときのレーン(スリーフットレーン)が内野の芝生の間の土の部分を含むように広げられることになったことを受けて改正された内容です。

しかし、内野の境目のグラスラインと同様、スリーフットレーンの基準となるグラスラインも、日本独自に設けた【注】によって、日本では適用しないルールとなりました。

(2) 規則3.01【軟式注】 H号球の反発について

3.01【軟式注】のH号の反発「50センチ~70センチ」を「70センチ~90センチ」に改める。

軟式H号ボールは「一般用の充填物の入ったボール」と書かれており、準硬式野球で用います。今回の改正で、ボールの反発を高める改定となりました。

準硬式野球に詳しくないので、なぜ反発を高めることになったのかは分かりません。情報が入ったら追記します。

(3) 規則3.08 打撃時に使用するヘルメットについて

3.08(b)を削除し、従来の(c)以下を繰り上げる。また同(c)【注】を削除し、末尾に【3.08注】を追加する。

3.08(b)  マイナーリーグのプレーヤーは、打撃に際して両耳フラップヘルメットを着用しなければならない。

 

3.08(cb) メジャーリーグのプレーヤーは、片耳フラップヘルメット(プレーヤーが両耳フラップヘルメットを選んでもよい)を着用しなければならない。

【注】 アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。

【3.08注】アマチュア野球では、所属する団体の規定に従う。

打撃時に使用するヘルメットに関する規則です。

マイナーリーグでは、両耳ヘルメットを使用しなければならないとする規定がありましたが、これがなくなりました。

なお、日本においては所属する団体の規定に従うこととなっています。

(4) 規則5.04(b) バッターボックスルール

5.04(b)を次のように改める。

①(2)【原注】の最終段落を削除する。

【原注】(前段略)

 以下はマイナーリーグだけに適用される〔原注〕の追加事項である。走者が塁にいるとき、投手がワインドアップを始めたり、セットポジションをとった後、打者が打者席から出たり、打撃姿勢をやめたのにつられて投球を果たさなかった場合、審判員はボークを宣告してはならない。打者のこのような行為は、バッターボックスルールの違反として扱い、5.04(b)(4)(A)に定められたペナルティを適用する。

②(4)(A)最終段落の「マイナーリーグでは、」以下を削除する。

5.04(b)(4)(A) (前段略)

 打者が意図的にバッタースボックスを離れてプレイを遅らせ、かつ前記(ⅰ)~(ⅸ)の例外規定に該当しない場合、当該試合におけるその打者の最初の違反に対しては球審が警告を与え、その後違反が繰り返されたときにはリーグ会長が然るべき制裁を科す。マイナーリーグでは、当該試合におけるその打者の2度目以降の違反に対して、投手が投球をしなくても球審はストライクを宣告する。この際、ボールデッドで、走者は進塁できない。

いずれもマイナーリーグで適用していたバッターボックスルールに関する規則ですが、削除されることとなりました。

(5) 規則5.09(a)(11) スリーフットレーン

5.09(a)(11)【原注】の後段に次を加え、【注】を追加する。

5.09(a)(11) 一塁に対する守備が行なわれているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判員が認めた場合。この際は、ボールデッドとなる。

 ただし、打球を処理する野手を避けるために、スリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走ることはさしつかえない。

【原注】 スリーフットレーンを示すラインはそのレーンの一部であり、打者走者は両足をスリーフットレーンの中もしくはスリーフットレーンのライン上に置かなければならない。
 審判員は、
(A)打者走者が本塁一塁間の後半に達した際、
もしくは
(B)野手が一塁への送球にあたりボールをリリースした際
のいずれか遅いときに、打者走者の両足がスリーフットレーン内もしくはスリーフットライン上にあった場合、打者走者は5.09(a)(11)に従ったと判断する。

【注】我が国では、本項〔原注〕後段については、適用しない。

【注】に記載された通り、改正部分は日本では適用しないルールとなりました。


※ 改正部分がどういうことを言っているのかを補足すると、打者走者が本塁一塁間の後半部分を走るときは、両足をスリーフットレーン内(ライン上を含む)において走塁しなければならないというのが本来のルールです。しかし、この改正では【原注】に、審判員の判断のタイミングが追加されました。MLBでは、

(A)打者走者がスリーフットレーンの入口に入った瞬間
もしくは
(B)野手が一塁に送球しようとして、ボールから手が離れた瞬間

の遅い方で、打者走者が両足をスリーフットレーン内に置いていたなら、打者走者は正しく走塁している(守備妨害にはならない)と判断する、ということになります。日本ではこの解釈をとらないという判断のようです。


(6) 規則5.10(g) 投手の義務について

5.10(g)を次のように改める。

最小限必要とする打者への投球

(1) 先発投手または救援投手は、打者がアウトになるか、一塁に達するかして、登板したときの打者(またはその代打者)から連続して最低3人の打者に投球するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。
ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

【注】本項前段については、我が国では適用せずに以下のとおりとする。
救援投手は、そのときの打者(またはその代打者)がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。先発投手については5.10(f)参照。

(2) イニングの初めに準備投球を行なった投手は、少なくともそのときの第1打者(またはその代打者)がアウトになるか一塁に達するまで投球する義務がある。
ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

(1)は、MLBスリーバッターミニマムと呼ばれているルールで、救援投手は、攻守交替または最低3人の打者と対戦しなければならないというものです。

日本では【注】によりこのルールは適用せず、「攻守交替または最低1人の打者と対戦する」というこれまでのルールが引き続き有効となります。

一方、(2)は試合展開に大きく影響のある改正項目です。

「イニング前のウォーミングアップに送り出された投手は、最低1人の打者と対戦しなければならない」というもので、MLBの2024年改正内容がそのまま採用されることとなりました。

MLBでは2023年シーズンで、イニング間にウォームアップした投手が投球前に交代したケースが24回あり、そのうちの2回は2023年のワールドシリーズでの事象でした。MLB競技委員会はルール改正にあたって、「ウォームアップ後の交代によって無駄な時間が約3分発生していた」と指摘しています。試合における無駄な時間の短縮のためにMLBで改正されたルールが、日本でも適用されることとなりました。

(7) 規則5.10(m) マウンドに行く回数の制限について

5.10(m)の最初の段落を削除し、(1)を次のように改める。(下線部を改正)

5.10(m) マウンドに行く回数の制限

 以下の規則は、メジャーリーグで適用される。マイナーリーグでは、1試合のマウンドに行ける回数について、本項規定と異なる制限を設けてもよいし、制限を設けないこともできる。

(1) 投手交代を伴わないでマウンドに行くことは、9イニングにつき1チームあたり回に限られる。延長回については、1イニングにつき1回、マウンドに行くことができる。

(中略)

【注】 我が国では、(m)項については、所属する団体の規定に従う。

MLBでは、(1)で規定されている「マウンドに行ける回数」が、2024シーズンから、4回(ただし、8回終了時点でマウンドに行ける回数がゼロの場合、9回のときに追加で1回)となっています。今回の改正はこれを規則本文に反映したものです。

なお、この項目自体に、日本では独自に【注】を設け「所属する団体の規定に従う」としています。例えば、高校野球特別規則では次のような規則があります。

高校野球特別規則15. タイムの制限

(1) 内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行ける回数を、1イニングにつき1回1人だけとする。
なお、投手が交代したときは、この限りではなく、投手のもとへ行った回数には数えない。

① 伝令が投手のもとに行ったときは内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行った回数に数えない。

タイブレークに入った場合も同様とする。

(2) 守備側の伝令によるタイムの制限

① 監督の指示を伝える伝令は、マウンドにいける回数を1試合に3回までとする。 

② 延長回(タイブレーク)に入った場合は、それ以前の回数に関係なく、1イニングにつき1回だけマウンドに行くことが許される。

③ この場合の伝令がマウンドに行くとは、ファウルラインを越えたかどうかを基準とする。

(以下略)

とはいえ、公認野球規則の規定をそのまま適用する場合ももちろん考えられますから、日本国内に影響のない改正ということにはなりません。

(8) 規則6.02(d) 投手の禁止事項に関するペナルティ

(1)の「マイナーリーグでは、自動的に10試合の出場停止となる。」を削除する。

6.02(d) ペナルティ

 投手が(c)項(2)~(7)に違反した場合、球審は次のような処置をしなければならない。
(1) 投手はただちに試合から除かれ、自動的に出場停止となる。マイナーリーグでは、自動的に10試合の出場停止となる。

マイナーリーグの独自の規定の削除です。

ちなみに6.02(c)項 (2)~(7) とはこのようなものです。

(2) ボール、投球する手またはグラブに唾液をつけること。
(3) ボールをグラブ、身体、着衣で摩擦すること。
(4) ボールに異物をつけること。
(5) どんな方法であっても、ボールに傷をつけること。
(6) (2)~(5)項で規定されている方法で傷つけたボール、いわゆるシャインボール、スピットボール、マッドボール、あるいはエメリーボールを投球すること。 ただし、投手は素手でボールを摩擦することは許される。

(9) 規則7.01(a)(2) コールドゲームの宣告について

7.01(a)(2)を次のように改め(下線部を追加)、【例外】を削除する。

7.01(a) 正式試合は、通常9イニングから成るが、次の例外がある。
 すなわち同点のために試合が延長された場合、あるいは試合が次の理由によって短縮された場合──
(1) ホームチームが9回裏の攻撃の全部、または一部を必要としない場合。
(2) 球審もしくはリーグ事務局コールドゲームの宣告をした場合。

【例外】 マイナーリーグは、ダブルヘッダーのうちの1試合またはその2試合を7回に短縮する規定を採用することが許される。

 この際、本規則で9回とあるのを7回と置きかえるほかは、すべて本規則に従うべきである。

この後の項目でも同様の改正が出てきますが、コールドゲームを宣告する権限がリーグ事務局にもあると規則に明記されました。

(10) 規則7.01(c) 試合の延期または中止について

7.01(c)を次のように改め、【注】を追加する。

7.01(c)

球審もしくはリーグ事務局は、天候、フィールドまたは球場のコンディション、設備(開閉式屋根、防水シートなど)の故障または意図しない操作ミス、大気の質、外出禁止令、電気または照明の喪失、地域や国家の緊急事態、災害や政府の規制、暗闇、ファンおよび選手を含むチーム関係者と球場職員の健康と安全、または試合の安全な実施と継続を妨げる異常事態のために、試合を延期または中止することができる。

【注】我が国では、所属する団体の規定に従う。

試合の延期や中止は球審もしくはリーグ事務局が判断するということを明記した規則です。

日本では「所属する団体の規定に従う」という【注】が追加されているので、それぞれのリーグの規定によるということになります。

ちなみに、坂井遼太郎さんによると、NPBにおける試合の中止や開始時刻の変更などについては、このようになっているそうです。

(11) 規則7.01(d) コールドゲームの取り扱いについて

従来の7.01(c)と(d)を統合し、同(d)として次のように改める。

①冒頭部分を次のように改める。

②末尾に次を加え、【注1】、【注2】を追加する。

7.01(d)

コールドゲームが次に該当する場合、正式試合となる。

(1) 5回の表裏を完了した後に、打ち切りを命じられた試合。(両チームの得点の数には関係がない)
(2) 5回表を終わった際、または5回裏の途中で打ち切りを命じられた試合で、ホームチームの得点がビジティングチームの得点より多いとき。
(3) 5回裏の攻撃中にホームチームが得点して、ビジティングチームの得点と等しくなっているときに打ち切りを命じられた試合。

正式試合が両チームの得点が等しいまま終了した場合、その試合はサスペンデッドゲームとなる。7.02参照。

 コールドゲームとなった正式試合の得点はゲームが宣告された時点での得点となる。

 上記にかかわらず、両チームの得点が等しいままコールドゲームが宣告された場合、またはイニングの途中で、そのイニングが終了する前にコールドゲームが宣告された場合であって、ビジティングチームが同点またはリードするために1点またはそれ以上の得点をして、ホームチームがリードを奪い返していない場合、通常であれば正式試合となるコールドゲームは、以下の7.02に適用されるサスペンデッドゲームとして扱われる。

 リーグ事務局はまた、試合を打ち切らなければならない状況が非常に特殊または異常であれば、公正を期すためにその試合をサスペンデッドゲームとして扱うか、別の方法で扱う必要があるかを判断することができる。

【注1】我が国では、正式試合となる前に、球審もしくはリーグ事務局が試合の打ち切りを命じた場合には、〝ノーゲーム〟を宣告することができる。

【注2】我が国では、所属する団体の規定に従う。

分かりづらいと思うので、スコアボードを使って説明します。

(1) 5回の表裏を完了した後に、打ち切りを命じられた試合。(両チームの得点の数には関係がない)

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 1 3 0         4
Bチーム 0 2 1 0 0         3

この状況で5回裏終了後に、球審が試合を打ち切ることを命じた場合は、コールドゲームになって正式試合として成立し、Aチームの勝ちです。

 

(2) 5回表を終わった際、または5回裏の途中で打ち切りを命じられた試合で、ホームチームの得点がビジティングチームの得点より多いとき。

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 1 0 1         2
Bチーム 0 2 1 0 X         3

この状況の場合、5回裏Bチーム攻撃中であっても、球審が試合を打ち切ることを命じた場合は、コールドゲームになって正式試合として成立し、Bチームの勝ちです。

 

(3) 5回裏の攻撃中にホームチームが得点して、ビジティングチームの得点と等しくなっているときに打ち切りを命じられた試合。

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 1 2 0         3
Bチーム 0 1 1 0 1x         3

この状況で球審が試合を打ち切ることを命じた場合は、正式試合として成立しますが、サスペンデッドゲーム(継続試合)になる、というのがここでの説明です。

(12) 〔改正前の規則7.01(e)および(f)の削除〕

7.01(e) 正式試合となる前に、球審が試合の打ち切りを命じた場合には、〝ノーゲーム〟を宣告しなければならない(7.02(a)(3)~(5)に従い、サスペンデッドゲームが宣告される場合を除く)。異常事態によって試合を打ち切らなければならない場合には、リーグ会長の判断でサスペンデッドゲームとする。

7.01(f) 正式試合または本条(c)に規定された時点まで進行したサスペンデッドゲームには、雨天引換券を発行しない。

この後の7.02で改めて説明しますが、MLBではノーゲームを認めずサスペンデッドゲームとすることとなったので、ノーゲームに関する規則や、雨天中断後の継続試合に対する入場券の扱いについて整合性をとるために、上記規則が削除となりました。

(13) 規則7.01(e) 試合終了時の得点と勝敗について

従来の7.01(g)を(e)とし、同(4)を次のように改めるとともに、【注】についても次のように改め(下線部を追加)、「サスペンデッドゲームとしないで、」を削除する。

7.01(ge)

正式試合においては、試合終了時の両チームの総得点をもって、その試合の勝敗を決する。

(1) ビジティングチームが9回表の攻撃を終わったとき、ホームチームの得点が相手より多いときには、ホームチームの勝ちとなる。
(2) 両チームが9回の攻守が終わったとき、ビジティングチームの得点が相手より多いときにはビジティングチームの勝ちとなる。
(3) ホームチームの9回裏または延長回の裏の攻撃中に、勝ち越し点にあたる走者が得点すれば、そのときに試合は終了して、ホームチームの勝ちとなる。

(4) コールドゲームが宣告された正式試合の得点は、試合終了時の両チームの総得点をもって、その試合の勝敗を決する。

【注】我が国では、正式試合となった後のある回の途中で球審もしくはリーグ事務局コールドゲームを宣告したとき、次に該当する場合は、サスペンデッドゲームとしないで、両チームが完了した最終均等回の総得点でその試合の勝敗を決することとする。

① ビジティングチームがその回の表で得点してホームチームの得点と等しくなったが、表の攻撃が終わらないうち、または裏の攻撃が始まらないうち、あるいは裏の攻撃が始まってもホームチームが得点しないうちにコールドゲームが宣告された場合。
② ビジティングチームがその回の表でリードを奪う得点を記録したが、表の攻撃が終わらないうち、または裏の攻撃が始まらないうち、あるいは裏の攻撃が始まってもホームチームが同点またはリードを奪い返す得点を記録しないうちにコールドゲームが宣告された場合。

※ 解説は(13)~(15)をまとめて行います。

(14) 規則7.02 ポストポンドゲームやサスペンデッドゲームについて

7.02を次のように改める。

7.02

(a) ポストポンドゲーム(開始前に中止、延期された試合)やサスペンデッドゲーム(以下の状況で打ち切られた試合)は、開始または再開して完了できるよう、直ちに予定されなければならない。
(1) 正式試合となる前。
(2) 両チームの得点が等しい。
(3) イニングの途中で、そのイニングが終了する前に、ビジティングチームが1点またはそれ以上の得点をして、同点またはリードを奪ったが、ホームチームがリードを奪い返していない。

(b) ポストポンドゲームおよびサスペンデッドゲームは、両クラブ間で予定されているシーズン中(すなわち、両クラブ間で次に予定されている試合の前)に、できれば同じ球場で、両クラブの試合のない日に開始または再開して完了できるよう、直ちに予定されなければならない。

(c) ポストポンドゲームおよびサスペンデッドゲームが、シーズン中に完了する予定が立たない場合、またはシーズン中に実施可能な選択肢が片方もしくは両方のチームに過度の負担を及ぼす場合、リーグ事務局は、関連するすべての要素を考慮して、シーズンの完了後を含めて、試合を行なうか決定する。

(d) サスペンデッドゲームが、シーズン中に再開されなかった場合、その試合がコールドゲームを宣告された時点ですでに正式試合となる回数が行なわれていたときは、次のようになる。
 (1) コールドゲームが宣告された時点でリードしているチームの勝ちとなる。
 (2) コールドゲームが宣告された時点で得点が同点であった場合、その試合はタイゲームとなる。

ただし、(1)および(2)にかかわらず、イニングの途中で、そのイニングが終了する前にコールドゲームが宣告され、ビジティングチームが1点もしくはそれ以上の得点でリードを奪うかまたは同点に追いつき、ホームチームがリードを奪い返すか再び同点に追いつくことができなかった場合、両チームが完了した最終均等回の総得点で勝敗を決する。

(e) ポストポンドゲームがシーズン中に再び予定されなかった場合、またはサスペンデッドゲームがシーズン中に再開されなかった場合であって、その試合がコールドゲームを宣告された時点で正式試合となる回数が行なわれていなかったとき、その試合は〝ノーゲーム〟となり、いかなる目的においても試合としてカウントされない。

※ 解説は(13)~(15)をまとめて行います。

(15) 規則7.02(f) サスペンデッドゲームの進め方について

従来の7.02(c)を(f)とし、本文および【原注】の「続行試合」を「継続試合」に改める。また、【注】を【7.02注】として「サスペンデッドゲームについては、」を削除する。

(cf) 継続試合は、元の試合の停止された個所から再開しなければならない。すなわち、停止試合を完了させるということは、一時停止された試合を継続して行なうことを意味するものであるから、両チームの出場者と打撃順は、停止されたときと同一にしなければならないが、規則によって認められる交代は、もちろん可能である。したがって、停止試合に出場しなかったプレーヤーならば、継続試合に代わって出場することができるが、停止試合にいったん出場して他のプレーヤーと代わって退いたプレーヤーは、継続試合には出場することはできない。停止された試合のメンバーとして登録されていなかったプレーヤーでも、継続試合のメンバーとして登録されれば、その試合には出場できる。さらに、継続試合の出場資格を失ったプレーヤー(停止状態に出場し、他のプレーヤーと代わって退いたため)の登録が抹消されて、その代わりとして登録された者でも、継続試合には出場できる。

【原注】 交代して出場すると発表された投手が、そのときの打者(代打者を除く)がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代となるまで投球しないうちに、サスペンデッドゲームとなった場合、その投手は継続試合の先発投手として出場してもよいし、出場しなくてもよい。しかし、継続試合に出場しなかった場合には、他のプレーヤーと交代したものとみなされて、以後その試合に出場することはできない。

【注】 我が国では、サスペンデッドゲームについては、所属する団体の規定に従う。

(13)~(15)の規則説明

7.02は、次の状況で試合を打ち切ることとなった場合、MLBではサスペンデッドゲームとなるという規則です。

(1) 正式試合となる前。

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 1 1           2
Bチーム 0 0 1             1

4回表で雨が強くなって試合続行不可能の場合、MLBではサスペンデッドゲームNPBではノーゲームです。

(2) 両チームの得点が等しい。

① 同点のままイニングが始まり、得点が入る前に雨天コールドゲームとなった

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 0 2 0 0       2
Bチーム 0 0 1 0 1         2

5回の表裏が終わったところで同点。6回の途中で雨が強くなって試合続行不可能の場合、MLBではサスペンデッドゲームNPBでは引き分けです。

② 後攻チームが同点に追いついたところで雨天コールドゲームとなった

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 1 1 0 0       2
Bチーム 0 0 1 0 0 1x       2

6回裏に後攻のBチームが同点に追いついた場合、MLBではサスペンデッドゲームNPBでは引き分けです。

(3) イニングの途中で、そのイニングが終了する前に、ビジティングチームが1点またはそれ以上の得点をして、同点またはリードを奪ったが、ホームチームがリードを奪い返していない。

TEAM 1 2 3 4 5 6 7 8 9 R
Aチーム 0 0 1 2 0 0 2     5
Bチーム 0 1 1 0 2 0       4

7回表でAチームが逆転に成功したものの、その後に雨で試合続行不可能となった場合、MLBではサスペンデッドゲームNPBでは最終均等回である6回裏までの総得点で勝敗を決めるので、6回の4-3でBチームの勝ちです。

※ただし、MLBでも、日程の都合上サスペンデッドゲームが再開できなかった場合は、規則7.02(d)を適用し、NPBと同様の判断になります。

(16) 規則9.01内の用語の変更

9.01の「メジャーリーグではコミッショナー事務局、マイナーリーグでは各リーグ事務局」を「リーグ事務局」に改め、第6段落の「メジャーリーグの」、第7段落の「マイナーリーグのプレーヤーまたはクラブは、リーグの規則に基づいて、各リーグ事務局に記録員の決定を見直すように要求することができる。」を削除する。

9.01 公式記録員

(a) リーグ事務局が、各リーグの選手権試合、ポストシーズンゲームあるいはオールスターゲームのために公式記録員(以下「記録員」)を任命する。

 記録員は、新聞記者席内の所定の位置で試合の記録をとり、記録に関する規則の適用に関して、たとえば打者が一塁に生きた場合、それが安打によるものか、失策によるものかなどを、独自の判断で決定する権限を持つ。

 記録員は、その決定を手で合図するか、記者席用拡声器によって記者席および放送室に伝達し、また要求があれば、そのような決定事項について場内放送員に助言を与える。

 クラブ職員およびプレーヤーを含むすべての人は、その決定について記録員と意見を交換することはできない。

 記録員は、あらゆる記録を決定しなければならない。記録員の判断を要することが起きたとき、記録員は、プレイの進行に沿って次の打者が打席に入るまでに記録を決定するように最善の努力をする。記録員は、その裁量で、試合終了後あるいはサスペンデッドゲーム宣告後24時間以内に、当初の決定を最終の決定とするか、変更するかを決定する。

 メジャーリーグプレーヤーまたはクラブは、試合終了後あるいは決定の変更後72時間以内に、書面または認められた電子的手段によってコミッショナー事務局へ通知して、運営部門責任者に記録員の決定を見直すように要求することができる。運営部門責任者は、すべての関連する利用可能な映像を入手しなければならず、検討が必要と認めたあらゆる証拠をよく考慮して、記録員の決定が明らかに誤っていると判断した場合には、記録員にその決定を変更するように命じることができる。以後、この決定を変更することはできない。運営部門責任者は、プレーヤーまたはクラブが繰り返し見直しに値しない申し立てをしたり、不誠実な行為をして、申し立て手続きを悪用したとみなした場合には、警告の後にプレーヤーまたはクラブに適宜な制裁を科すことができる。
 マイナーリーグのプレーヤーまたはクラブは、リーグの規則に基づいて、リーグ会長に記録員の決定を見直すように要求することができる。
 記録員は、試合終了後(フォーフィテッドゲームおよびコールドゲームを含む)、リーグ事務局
が規定した様式に従って、次の各項を記載した報告書を作成する。すなわち、試合の日時、球場名、試合したチーム名および審判員名、試合のフルスコア、記録に関する規則に特に規定した方式に従って作成した各プレーヤーの個人記録である。記録員は、この報告書を試合終了後できる限り速やかにリーグ事務局に提出する。
 記録員は、サスペンデッドゲームが完了するか、または7.02(b)(4)によってコールドゲームとなった試合は、いずれもできる限り速やかにその報告書を提出する。(9.03参照)

(b)以降略

メジャーリーグマイナーリーグともに、報告する先が「リーグ事務局」になった他、規定が整理されました。

(17) 【9.22注】の追記

9.22 各最優秀プレーヤー決定の基準

(中略)

【9.22注】 我が国のプロ野球では、〝組まれている試合総数〟を〝行なった試合数〟に、マイナーリーグ〟を〝イースタン・リーグおよびウエスタン・リーグ〟に置きかえて適用する。数の算出にあたり、端数は本条(a) (b) 各[原注]に準ずる。

NPBにおいて、マイナーリーグイースタン・リーグおよびウエスタン・リーグに置き換えてこの規則を適用することが示されました。

(18) 定義14 CALLED GAME「コールドゲーム

定義14「コールドゲーム」を次のように改める。(下線部を追加)

どのような理由にせよ、球審もしくはリーグ事務局が、その試合の完了する前に打ち切りを命じた試合である。

試合の延期や中止は球審もしくはリーグ事務局が判断するということを明記したものです。

(19) 定義63 POSTPONED GAME「ポストポンドゲーム」の追加

定義63 POSTPONED GAME「ポストポンドゲーム」を追加し、以下を繰り下げる。

どのような理由にせよ、予定された日に開始できず、延期された試合である。

規則7.02で新たに用いられる用語のため、定義が一つ追加されました。

まとめ

というわけで、19項目の改正内容を解説してきました。

今回の改正を日本国内の野球の試合への具体的な影響で分類すると、次のようになるでしょうか。

大いに影響があり(その可能性があり)、ぜひ知っておくべき

  • 5.10(g)(2) 準備投球を行った投手の義務
  • 5.10(m) マウンドに行く回数の制限

一部のカテゴリで影響があるが、試合運営自体には影響がない

  • 3.01【軟式注】 H号球の反発
  • 【9.22注】の追記

MLBでの改正内容を反映させただけで、日本国内では影響がない

  • 2.01 競技場の設定
  • 3.08 打撃時に使用するヘルメット
  • 5.04(b) バッターボックスルール
  • 5.09(a)(11) スリーフットレーン
  • 6.02(d) 投手の禁止事項に関するペナルティ
  • 9.01内の用語の変更

正式試合やサスペンデッドゲームなどに関する規則改正
(この機会に、試合打ち切りに関するルールの概要を知っておくとよいです)

改正の項目が多いので、文字量がかなり多くなってしまいましたが、この記事をきっかけに野球規則に関心を持ってもらえれば幸いです。

最後に、本としての『公認野球規則』は、例年3月末ごろに発売されます。野球を愛する人は、是非手元で正しいルールを確認できるようにしておきましょう。