0アウト二塁。打球は三塁線ぎりぎりフェアのサードゴロ、二塁走者は「進塁は危険」と判断して二塁に留まっています。
三塁手は一塁に送球しますが、これが大きくそれてスタンドへ!審判員が両手を挙げてボールデッドを宣告しました。
すると、こういうときよく「テイクワンベースだ!」という声を聞くのですが…
テイクワンベースは間違いなんです!
どういうことかというと……
- 実例を見てみましょう
- 野手の悪送球がボールデッドになったときのルール
- でも、一塁に進んだ打者走者は1つ先の二塁までしか進めないよね?
- 打球処理直後の内野手の最初のプレイが悪送球になった場合
- 打球処理直後の内野手の最初のプレイ以外の悪送球の場合
- まとめ
実例を見てみましょう
2023年9月3日の広島vs中日、3回表の中日の攻撃、0アウト二塁の場面です。
二塁走者の大島選手は、二塁から動けておらず、審判員がボールデッドを宣告した後に三塁に進みましたが、審判員に促されて本塁まで進みました。新井監督が審判員に説明を求めましたが、これはルール通りの措置です。
そう。実は、このよくある「内野ゴロ一塁悪送球」は、テイクワンベースではありません。
野手の悪送球がボールデッドになったときのルール
この場合のルールは、公認野球規則5.06(b)(4)に記載されていて、(G)項のルールが適用されます。
公認野球規則5.06(b)(4)
次の場合、各走者(打者走者を含む)は、アウトにされるおそれなく進塁することができる。
(G) 2個の塁が与えられる場合 ── 送球が、
① 競技場内に観衆があふれ出ていないときに、スタンドまたはベンチに入った場合。(ベンチの場合は、リバウンドして競技場に戻ったかどうかを問わない。)
② 競技場のフェンスを超えるか、くぐるか、抜けた場合。
③ バックストップの上部のつぎ目から、上方に斜めに張ってある金網に上がった場合。
④ 観衆を保護している金網の目に挟まって止まった場合。
この際は、ボールデッドとなる。
審判員は2個の進塁を許すにあたって、次の定めに従う。すなわち、打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づく悪送球であった場合には、投手の投球当時の各走者の位置、その他の場合は、悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置を基準として定める。
【規則説明】 悪送球が打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づくものであっても、打者を含む各走者が少なくとも1個の塁を進んでいた場合には、その悪送球が内野手の手を離れたときの各走者の位置を基準として定める。
この通り、送球がそれてボールデッドとなった場合は、「テイクツーベース」が正しいルールです。
でも、一塁に進んだ打者走者は1つ先の二塁までしか進めないよね?
一塁に到達した打者走者が、悪送球によって1つ先の二塁まで進めるから「テイクワンベース」。そのように理解している方は多いことでしょう。
先ほど示したルールをもう一度見てみましょう。
審判員は2個の進塁を許すにあたって、次の定めに従う。すなわち、打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づく悪送球であった場合には、投手の投球当時の各走者の位置、その他の場合は、悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置を基準として定める。 |
2つの「場合」が示されています。ここに、2個の進塁が与えられるときの基準となる塁が示されているのです。
打球処理直後の内野手の最初のプレイが悪送球になった場合
今まさに議論している、「内野ゴロ一塁悪送球」はこれに該当します。
このときは、投手の投球当時の各走者の位置を基準にしてテイクツーベースを宣告します。
打者走者の場合は、投球当時はバッターボックスにいますから、
「バッターボックスからツーベース」
が与えられて、二塁まで進みます。
先ほどの広島vs中日の事例では、大島選手は投球当時は二塁にいますから、
「二塁からツーベース」
が与えられるので、本塁まで進めるのです。
打球処理直後の内野手の最初のプレイ以外の悪送球の場合
このときは、悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置を基準にしてテイクツーベースを宣告します。
事例① バックホームの送球がベンチに入った場合
2023年8月22日の巨人vsヤクルト戦では、山崎選手の送球が走者に当たって一塁側ダッグアウトに入りました。
/
— DAZN Japan (@DAZN_JPN) 2023年8月22日
左対左も苦にせず
\
大城卓三がタイムリーヒット
※送球が走者に当たった後ベンチに入りもう1点
※審判の説明まで有り
⚾プロ野球(2023/8/22)
🆚巨人×ヤクルト
📱Live on DAZN#DAZNプロ野球#giants pic.twitter.com/ccei5rvlA4
送球が山崎選手の手を離れた瞬間、一塁走者のブリンソン選手は二塁を回っていたため、二塁を起点に2個の安全進塁権で本塁が与えられました。
事例② 内野ゴロダブルプレイが失敗になって悪送球の場合
走者一塁で三塁ゴロ。守備側がダブルプレイを狙った場合を想定します。
二塁に送球しますが、二塁はセーフの判定。
二塁カバーに入った二塁手は、続けて一塁に転送しましたが、これが悪送球になってスタンドに入り、ボールデッドが宣告されました。
これまでの解説から、「テイクツーベース」になるということはご理解いただけたかと思いますが、この場合、一塁走者、打者走者はそれぞれどこまで進むでしょうか。
……
……
……
正解は、
一塁走者は本塁まで、打者走者は二塁まで進む
です。
なぜ一塁走者が本塁なのか。
それは、二塁ベースカバーに入った二塁手の悪送球は、「打球処理直後の内野手の最初のプレイ」ではないためです。
二塁がセーフだったのですから、悪送球が二塁手の手を離れた瞬間、一塁走者は二塁に到達できています。よって、二塁を基準にテイクツーベースとなるので、本塁まで進めるのです。
一方、打者走者は一塁に到達できていませんから、バッターボックスを基準にテイクツーベースで、二塁まで進むことになります。
まとめ
何度も繰り返しますが、野手の悪送球がボールデッドとなる個所に入った場合は、
テイクツーベース
です。テイクワンベースではありません。
このとき、
- 打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づく悪送球の場合は、
投球当時の走者の位置が基準 - それ以外の場合は、送球が野手の手を離れたときの走者の位置が基準
となります。
言い換えると、「打球処理直後の内野手の最初のプレイ」が例外で、ボールデッドになったときは送球が野手の手を離れた瞬間を基準にテイクツーベース、と理解するほうがすっきりとするかもしれません。
これを機に、皆さんに正しいルールが広まれば幸いです。